どんぐりで木を見分ける|帽子(殻斗)の形と葉で知るブナ科の木
どんぐりの木を見分けたい人に向けて、帽子にあたる殻斗のうろこや輪の模様、実の形、葉の鋸歯と常緑・落葉の違いを整理します。コナラ、クヌギ、アラカシ、シラカシ、マテバシイ、スダジイの比較から、実が熟す年数、拾う際のマナー、虫への対応、記録を添えた標本づくりまで紹介します。

公園の道でどんぐりを拾うと、丸い実、細長い実、ふさふさした帽子など、思いのほか形が違うことに気づきます。けれども実だけを写真と見比べると、似たものがいくつも見つかり、木の名前を一つに決められないことがあります。
見分けるときは、帽子にあたる殻斗、実の形、葉の特徴を順に確かめます。この記事では身近な六種類を入口に、現地での観察、持ち帰った後の扱い、標本の記録まで紹介します。食べられるかどうかの判断や調理方法など、食べる話題は扱いません。
どんぐりと殻斗のつくり
茶色い実も帽子も観察する
どんぐりは、ブナ科の木になる果実を指す呼び名です。硬い皮に包まれた果実は堅果と呼ばれ、私たちが拾う茶色い部分も種そのものではなく果実です。内部に種子があり、外側を包む硬い部分と区別すると、図鑑の説明を読みやすくなります。
帽子のような部分の正式な名前は殻斗で、「かくと」と読みます。実の一部を受けるお椀のようなものから、実を大きく包んで熟すと裂けるものまで形はさまざまです。見た目が違うため別々の仕組みに思えますが、いずれも果実を囲む構造として比較できます。
殻斗の表面には、小さなうろこのような鱗片が見えます。コナラではそれらが重なって見え、クヌギでは細長く伸びて反り返ります。アラカシやシラカシでは横に輪が重なったように見えます。「つるつるか、とげとげか」より少し詳しく、模様の並び方まで観察すると違いが残ります。
スダジイでは、熟す前の実を殻斗が包み、熟すと裂けて実が現れます。落ちている細長い実に小さな帽子が見つからなくても、近くに裂けた殻斗がないかを確かめます。すべてのどんぐりが、実と浅いお椀の二つに分かれて落ちるとは限りません。
形の呼び方をそろえる
実には、先端の小さな突起がある側と、殻斗に付いていた跡がある側があります。観察メモで両方を「頭」と書くと混乱するため、この記事では突起の側を先端、付着した跡のある側を底面と呼びます。底面には、実の横幅に対して跡がどれほど広いかという比較点もあります。
殻斗は普段、帽子やパンツ、お皿などいろいろな言葉で呼ばれます。親しみやすい呼び名はそのまま使ってかまいませんが、記録には「殻斗の縁」「実の底面」のように部位を書き添えます。後で別の図鑑を開いたときも、どこを見た話か分かります。

帽子の模様から候補を絞る
うろこ・輪・細長い鱗片を比べる
まず殻斗を、うろこが重なるもの、輪が重なるもの、細長い鱗片が目立つもの、実を包んで裂けるものに分けます。この段階では木の名前を決めず、「輪の模様の仲間」のように置いておきます。候補を少なくしてから葉を比べる方が、図鑑の一枚一枚を探すより進めやすくなります。

うろこ状の代表はコナラとマテバシイですが、両者の実も葉も同じではありません。輪状の代表として挙げるアラカシとシラカシも、この二種類だけが輪を持つわけではありません。ここで使う分類は観察の入口で、国内のすべての種類を分け切る検索表ではないことを覚えておきます。
クヌギの殻斗は、細長い鱗片が外へ伸びた姿が目立ちます。ただし、似た殻斗を持つアベマキなどもあります。「ふさふさしているから必ずクヌギ」とせず、落葉した葉の裏の毛や、現地の木の案内を追加して確認します。とげに見える部分を強く握って調べる必要はありません。
ルーペを使うなら、足場の安定した場所で立ち止まり、殻斗を手元へ持ってきて見ます。植物へ顔を近づけるために植え込みへ入ったり、木の下の斜面へ下りたりしないようにします。小さな模様を観察する道具の扱いは、苔の観察入門|ルーペで見る体のつくりと身近な場所での見分け方でも紹介しています。
実の色や縞だけでは決めない
実の色は熟し方、乾き方、落ちてからの時間でも変わります。ぬれた実はつやが強く見え、乾くと縦の筋やしわが目立つこともあります。茶色の濃淡を比較するなら、同じ光の下で撮り、「雨の翌日」「乾燥後」のように状態も記しておきます。
大きさには個体差があり、小さい実だから別の種類とは限りません。定規を添えて長さと最大幅を測り、「長い」だけでなく「長さに対して細い」と比べると形を説明できます。先端の突起を含めたかどうかも記すと、自分の記録の中で測り方がそろいます。
模様の確認には、自治体や博物館、公園が出しているどんぐりの見分け資料のように、殻斗、実、葉を組み合わせた資料が役立ちます。地域の資料では、その地域で出会いやすい種類から比べられる点も便利です。
身近な六種類の違い
次の表は、散歩中に候補を考えるための目安です。葉の大きさや実の形には幅があるので、表の一項目だけで名前を確定しないでください。特に植栽の多い公園では、この六種類以外の木も候補になります。
| 木の名前 | 殻斗と実の主な特徴 | 葉の主な手がかり | 葉の性質・成熟 |
|---|---|---|---|
| コナラ | 小さなうろこ状の殻斗、実は卵形から細長い形 | 上半分が広めで鋸歯があり、裏が白っぽい | 落葉・その年の秋 |
| クヌギ | 長い鱗片の殻斗、実は大きく丸い傾向 | 細長く、鋸歯の先が針状に伸びる | 落葉・翌年の秋 |
| アラカシ | 輪状の殻斗、実は卵形の傾向 | 厚めで比較的幅広く、上半分に粗い鋸歯 | 常緑・その年の秋 |
| シラカシ | 輪状の殻斗、実の先端周囲がふくらむ傾向 | 比較的細長く、上半分を中心に鋸歯 | 常緑・その年の秋 |
| マテバシイ | うろこ状の殻斗、実は細長い砲弾形の傾向 | 厚くつやがあり、縁はおおむね滑らか | 常緑・翌年の秋 |
| スダジイ | 実を包む殻斗が裂け、実は細長い傾向 | 裏が黄褐色で、鋸歯の出方には幅がある | 常緑・翌年の秋 |
コナラとクヌギは、どちらも秋から冬に葉を落とす木です。それでも実の丸さと殻斗の鱗片はかなり違います。初めて比べるなら、二種類を一度にたくさん集めず、殻斗が付いた実を一つずつ見るだけでも、うろこと長い鱗片の違いをつかめます。
アラカシとシラカシは輪状の殻斗が似ています。一般にはアラカシの葉の方が幅広く、粗い鋸歯が目立ちますが、葉一枚の印象だけでは迷うことがあります。実の先端周辺、葉の幅、鋸歯の位置という複数の特徴が同じ候補を示すかを見ます。
マテバシイとスダジイは、どちらも常緑で、細長い実が手がかりになります。違いを探すなら実の長さだけでなく、殻斗の包み方と葉の裏面を比べます。落ちた実しかない場合は、「マテバシイかスダジイ」から先へ急がず、次の訪問で木に付いた葉を確認します。
公園などの観察案内には、実と殻斗を写真で比べられるものもあります。掲載された落下時期はその場所の目安なので、自分の地域の暦へそのまま当てはめず、現地の案内と実際の様子を合わせて見てください。
表の特徴に合わないときの比べ方
写真と実物の形が違って見える場合は、まず向きをそろえます。細長い実でも、先端から見ると丸く見えます。図鑑が側面写真なら自分の実も横から見て、殻斗の深さを比べるなら、口の縁と実の底面の位置が分かる向きで撮ります。大きさの基準がない写真どうしで、実の大小を判断しないようにします。
欠けた殻斗や強くしわの寄った実しかない場合は、見えない特徴を想像で埋めず、「縁が欠けて深さ不明」のように書きます。比較の条件が足りないことと、別の種類であることは区別します。実の形は候補に合うのに葉が大きく違うなら、珍しい形の葉だと片付ける前に、別の木の葉を拾っていないかを見直します。










