冬の昆虫の越冬を観察する|卵・幼虫・さなぎ・成虫で冬を越す虫の探し方と見守り方
冬は虫がいなくなる季節に見えますが、多くの昆虫は卵・幼虫・さなぎ・成虫のいずれかの姿で、身近な場所でじっと冬を越しています。休眠や寒さに耐えるしくみ、カマキリの卵やミノムシ、アゲハのさなぎ、集まって越冬するテントウムシなどの探し方、観察のマナーと持ち帰らない理由、触れないほうがよい虫まで紹介します。

木の葉が落ちて、外を歩いても虫の姿をほとんど見かけなくなる冬。昆虫たちは死んでしまったように思えますが、実は多くの種類が、卵や幼虫、さなぎ、成虫の姿で、身近な場所にじっとひそんで春を待っています。葉が落ちて見通しがよくなる冬は、かえって虫の冬越しの姿を見つけやすい季節でもあります。
この記事では、昆虫がどのようなしくみで冬の寒さを乗り越えているのかを紹介したうえで、卵・幼虫・さなぎ・成虫のそれぞれの姿で越冬する代表的な虫と、その探し方を順に見ていきます。後半では、観察のマナーや持ち帰らない理由、触れないほうがよい虫、記録のつけ方もまとめました。公園や庭先、通勤路の植え込みでもできる、静かな冬の自然観察の入り口にしてください。
昆虫が冬を越すしくみ
昆虫は、まわりの温度によって体温が変わる生き物です。気温が下がると体の働きが鈍くなり、動いたり食べたりすることが難しくなります。そのうえ冬はえさとなる植物の葉や花、ほかの虫も少なくなります。そこで多くの昆虫は、冬の間は活動をやめ、決まった姿で寒さをやり過ごす生活をしています。
休眠という準備
冬を越す昆虫の多くは、「休眠」と呼ばれる状態に入ります。休眠は、単に寒くて動けないのではなく、成長や活動を一時的に止める、体の準備が整った状態です。多くの昆虫は、秋に日が短くなっていくのを感じ取り、寒くなる前に休眠に入る準備を始めると考えられています。
休眠に入った昆虫は、少し暖かい日があってもすぐには目覚めません。一定の期間、冬の寒さを経験してはじめて、春の暖かさに反応して活動を再開できるようになる種類が多く知られています。冬の途中の暖かい日に誤って目覚めて、えさのない時期に弱ってしまうのを防ぐしくみと考えられています。
凍らないための工夫
寒さそのものへの備えもあります。昆虫の中には、体の中の水分が0℃より低い温度でもすぐには凍らない状態(過冷却)を保てるものや、糖やアルコールの仲間の物質を体の中にためて凍りにくくしているものがいます。反対に、体の一部が凍っても耐えられる種類もいます。どの方法を使うかは種類によって違い、まだ詳しく分かっていないことも多い分野です。
越冬の姿は種類ごとに決まっている
昆虫は、卵・幼虫・さなぎ・成虫のうち、どの姿で冬を越すかが種類ごとにおおむね決まっています。同じ仲間でも種類によって違い、たとえばチョウの仲間では、卵で越すもの、幼虫で越すもの、さなぎで越すもの、成虫で越すものがそれぞれいます。冬の観察では、「何の虫か」と同時に「どの姿で越冬しているか」に注目すると、見え方がぐっと広がります。

冬の観察に出かける前に
越冬中の虫はじっとして動かず、色も周りに溶け込んでいることが多いので、何も考えずに歩くと見逃してしまいます。少しの準備と探し方のコツで、見つかる数がずいぶん変わります。
持っていくもの
- ルーペ: 小さな卵や、樹皮のすき間の虫を見るのに便利です。10倍前後のものが扱いやすいでしょう。
- 手袋: 枝や落ち葉に触れるときに手を守ります。ただし、手袋をしていても、種類の分からない虫には触れません。
- メモと筆記用具、カメラ: 場所や日付、見つけた姿を記録します。スマートフォンのカメラでも十分です。
- 小さな懐中電灯: 樹皮のすき間や建物の陰をのぞくときに役立ちます。
観察に向いた日と時間
越冬中の虫は寒い日も暖かい日もその場にいるので、いつ探しても構いません。歩きやすく、手がかじかまない晴れた日中が向いています。冬の晴れた日には、成虫で越冬するチョウが日だまりに出てきて、日光浴をする姿が見られることもあります。
どこを探すか
冬の虫探しでは、「風が当たらず、雨や雪がかかりにくく、急な温度の変化が少ない場所」を意識すると見つけやすくなります。具体的には次のような場所です。
- 木の枝先と幹: 葉の落ちた枝に、卵やさなぎ、ミノムシなどがついていることがあります。
- 樹皮のすき間: 桜などの樹皮のめくれた部分には、小さな成虫や幼虫がひそんでいることがあります。
- 落ち葉の下: 積もった落ち葉の下は、地面の冷え込みがやわらぐ場所です。
- 石や倒木の下: めくったら必ず元に戻します。
- 建物の壁や軒下、フェンス: 日当たりのよい壁や、雨のかからない軒下に、さなぎや成虫が見つかることがあります。
| 探す場所 | 見つかりやすい姿 | 観察のコツ |
|---|---|---|
| 木の枝先 | 卵・ミノムシ・さなぎ | 葉の落ちた低い枝を下から見上げる |
| 樹皮のすき間 | 成虫・幼虫 | 懐中電灯で照らし、はがさない |
| 落ち葉の下 | 幼虫・成虫 | 少しめくって見たら元に戻す |
| 建物の壁・軒下 | さなぎ・成虫 | 日当たりのよい面を中心に見る |
| 石や倒木の下 | 幼虫・成虫 | 持ち上げたら静かに元の位置へ |
卵で冬を越す虫
卵は、殻に守られていて乾燥や寒さに強く、冬を越す姿としてよく選ばれています。葉の落ちた枝や幹に、卵がまとめて産みつけられているのを見つけることができます。

カマキリの卵のう
冬の観察でいちばん見つけやすいのが、カマキリの卵の入ったかたまりです。「卵のう(卵鞘、らんしょう)」と呼ばれ、メスが秋に泡のようなものを出して卵を包み込み、それが固まってできます。中には数十から数百もの卵が入っていて、泡が固まった部分が寒さや乾燥、衝撃から卵を守っていると考えられています。
卵のうの形や大きさ、ついている場所は、カマキリの種類によって違います。木の枝や草の茎、フェンス、建物の壁などに産みつけられ、丸くふくらんだもの、細長いもの、平たく固いものなどがあります。図鑑で形を見比べると、どの種類のカマキリの卵か見当がつくことがあります。
春になると、卵のうから小さな幼虫がいっせいに出てきます。見つけた卵のうに目印をつけておき、春にもう一度見に行くと、幼虫が出てきた跡が残っているのを確かめられることがあります。
カマキリの卵の高さと雪の言い伝え
「カマキリが高い場所に卵を産んだ年は雪が多い」という言い伝えを聞いたことがあるかもしれません。昔から各地で語られてきた話ですが、確かな根拠があるとは言いにくく、はっきりした結論は出ていません。言い伝えとして楽しみつつ、雪の予想は気象情報で確かめるのが確実です。
枝に並ぶ小さな卵
カマキリほど目立ちませんが、ほかにも卵で冬を越す虫はたくさんいます。木の枝や冬芽のまわりに、ごく小さな卵が並んでついていることがあり、ルーペで見ると、形や色、模様の違いに驚かされます。冬芽や葉の落ちた痕と一緒に観察すると、枝先の観察がいっそう楽しくなります。冬芽の見方は冬芽と葉痕の観察も参考にしてください。

幼虫で冬を越す虫
幼虫で冬を越す虫は、えさを食べずにじっとしている種類と、暖かい日には少し動いて食べる種類がいます。落ち葉の下や土の中、自分で作った巣の中など、見つけにくい場所にいることが多いのが特徴です。
ミノムシ
冬の枝先にぶら下がっているミノムシは、ミノガという蛾の仲間の幼虫が、葉や小枝を糸でつづって作った袋(みの)の中で冬を越している姿です。みのは風や寒さから幼虫を守る家のような役目をしていて、幼虫はその中で春を待ちます。
ミノムシは、以前に比べて見かける機会が減ったと言われる地域もあり、その原因の一つとして、ミノガに寄生するハエの影響などが挙げられています。見つけたら、取ったり中を開けたりせず、そのままの姿で観察しましょう。どの植物の葉や枝を材料にしているかを見比べると、意外に個性があることに気づきます。
落ち葉の下や土の中の幼虫
落ち葉の下や、柔らかい土の中では、甲虫の幼虫や蛾の幼虫などが冬を越していることがあります。落ち葉を少しめくって見つけたら、観察したあとは同じようにかぶせて戻してあげてください。落ち葉の層は、虫たちにとって冬の布団のような役割をしています。
硬い繭の中で越冬する幼虫
木の枝や幹に、小さな卵のような硬い粒がついていることがあります。種類によっては、幼虫が硬い繭を作り、その中で冬を越しています。繭の形は種類ごとに特徴があり、昔から子どもの遊びや暮らしの中で親しまれてきたものもあります。繭そのものは観察しても問題ないことが多いですが、その虫が幼虫のときに毒のあるとげや毛を持つ種類の場合もあるので、種類が分からないものは触らずに見るだけにしておきましょう。









