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歴史・文化

浮世絵の見方入門|版元・絵師・彫師・摺師の分業と、摺りの技法で味わう一枚

摺りの技法を探す――ぼかし・空摺り・雲母摺り

錦絵の魅力の多くは、摺師の技にあります。展示室で近づいて見ると、絵具を均一に塗っただけではない、さまざまな工夫が見つかります。代表的なものを知っておくと、作品の前で「これはどの技法だろう」と探す楽しみが生まれます。

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ぼかし

ぼかしは、色を濃い部分から薄い部分へなめらかに変化させる技法です。版木を湿らせた布でふいてから絵具をのせるなど、版木の上で絵具の濃淡をつけて摺ります。空の上部を帯状に濃くする「一文字ぼかし」は、名所絵でよく見られます。夕焼けや夜明け、水面の色の変化などにも使われ、同じ版木でも摺師によって仕上がりが変わる、腕の見せどころでした。

空摺り(からずり)・きめ出し

空摺りは、絵具をつけずに版を強くこすり、紙に凹凸だけをつける技法です。白い着物の柄や、雪の積もった様子、波しぶきなどに使われます。正面から見ても気づきにくく、斜めから光が当たったときに浮かび上がってくるため、展示ケースの前で少し角度を変えて見るのがこつです。似た技法に、版を強く押しつけて輪郭をふっくらと浮き出させるきめ出しがあります。

雲母摺り(きらずり)

雲母摺りは、鉱物の雲母(うんも)の粉を背景に摺り込み、きらきらとした光沢を出す技法です。人物の背景を雲母で埋めると、人物が浮かび上がるように見えます。光の当たり方で印象が大きく変わるので、照明の位置を意識して見ると違いがわかります。

正面摺り・布目摺りなど

黒い部分に、膠(にかわ)などでつやを出す正面摺りや、紙に布目の模様をつける布目摺りなど、細かな技法はほかにもあります。すべてを覚える必要はありませんが、「色のない凹凸」「光る部分」「つやのある黒」に気づけるようになると、一枚から得られる情報がぐっと増えます。

近づいて探したい摺りの工夫(空や水面にぼかしがあるか、白い部分に凹凸があるか、背景が光って見えるか、黒の部分につやがあるか、色の境目がずれていないか)
角度を変えると見えるものがある。

色と顔料――ベロ藍の登場

浮世絵の色は、植物や鉱物から作った絵具で摺られています。十九世紀に入ると、ヨーロッパで作られた合成顔料のプルシアンブルーが日本でも使われるようになり、「ベロ藍」と呼ばれました。それまでの植物由来の青と比べて鮮やかで退色しにくく、空や水の表現に大きな変化をもたらしました。名所絵の深い青を見たら、この新しい色が使われているかもしれない、と考えてみると、時代の空気も一緒に感じられます。

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落款と印から読み取れること

浮世絵の画面には、絵とは別に、文字や印がいくつか入っています。最初は読めなくてもかまいませんが、何が書かれているかの種類を知っておくと、作品を調べる手がかりになります。

落款(らっかん)は、絵師の署名と印のことです。「〇〇画」「〇〇筆」のように書かれ、同じ絵師でも時期によって名前を変えていることがよくあります。浮世絵師は師匠から一字をもらった画号を名乗ることが多く、同じ流派の絵師は名前の一部が共通しているので、系譜をたどる楽しみもあります。

版元印は、出版した版元を示す印で、屋号の文字や家紋のような意匠が使われています。同じ版元の作品を並べると、企画の傾向が見えてくることもあります。

改印(あらためいん)は、出版物を取り締まる制度のもとで、内容が確認されたことを示す印です。時代によって印の形や入れ方が変わり、年月を示す印が組み合わされている時期もあるため、制作時期を推定する手がかりになります。

このほか、題名を記した枠(題箋)や、揃い物の名前、絵の中の人物や場所を説明する文字、狂歌などが入っていることもあります。

崩し字は読み慣れないと難しいので、最初は解説パネルと見比べ、「署名はどこにあるか」「印はいくつあるか」を確かめるだけで十分です。家紋のような印に興味があれば、家紋の見方入門|図柄の種類と名前の読み解き方の考え方も役に立ちます。

判型・揃物・続絵――大きさと組み合わせ

浮世絵の版画は、紙の大きさによって呼び名が分かれています。代表的なのは、おおよそ縦に長い一般的な大きさの大判、その半分ほどの中判、細長い細判などです。実物を見ると、大判でも一般的な雑誌より少し大きい程度で、想像よりも手に取りやすい大きさだと感じる人が多いでしょう。もともと手に持って眺めるための絵だったことが、この大きさからも伝わってきます。

呼び名 形の特徴 よく使われた題材の例
大判 標準的な縦長の大きさ 美人画、役者絵、名所絵
中判 大判のおよそ半分 小品、揃い物
細判 縦に細長い 初期の役者絵、柱に掛ける絵
続絵 複数枚を横に並べる 大きな風景、群像、合戦

複数の作品を一つのテーマでまとめたものを揃物(そろいもの)と呼びます。街道の宿場を順にたどるもの、名所を数十か所描くもの、物語の各場面を描くものなどがあり、買う人は少しずつ集める楽しみがありました。展覧会で揃物が並んでいるときは、順番に歩きながら見ると、旅をしているような気分になれます。

また、二枚、三枚と横に並べて一つの大きな画面にする続絵(つづきえ)もあります。一枚ずつでも絵として成り立つように描かれていることが多く、並べたときと一枚のときの両方で構図を楽しめる工夫がされています。

次のページへ初摺と後摺――同じ作品でも違って見える理由
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  1. 秋の戸口に並ぶかぼちゃの明かりとかぶ、麦束
  2. 資料を手に落ち着いて話し合う二人
  3. ノートパソコンと資料、外付け記憶装置がある机
  4. 冬の木で越冬する卵のうやミノムシ、テントウムシ
  5. 青い折り鶴と三角に折った紙、無地の折り紙