動物の冬眠のしくみ|体温の下げ方、ヤマネとクマの違い、変温動物の冬越し
冬眠は、寒さで動けなくなることとは異なり、代謝と体温の調節を変えて冬の食料不足を乗り切るしくみです。ヤマネ・シマリス・コウモリの体の変化、中途覚醒の謎、クマの冬ごもりと出産、脂肪や貯食による準備、褐色脂肪の働き、変温動物の冬越しとの違いを紹介します。暖冬の影響と観察・飼育の注意も整理します。

冬の森では、夏に走り回っていた動物の姿を見かけなくなることがあります。暖かい場所へ移るもの、食べ物を変えて活動するものもいますが、ヤマネや一部のコウモリのように、体のエネルギー消費を大きく抑えて過ごすものもいます。これが、哺乳類の冬眠です。
冬眠は、長い昼寝とも、寒さで体が動かなくなることとも違います。体温をどう調節するか、冬の燃料をどこに蓄えるか、途中でなぜ体を温め直すかを見ると、動物ごとの違いが分かります。まず冬眠の意味を整理し、小型哺乳類とクマ、カエルや昆虫の冬越しを比べてみましょう。
冬眠は代謝と体温の調節を変える省エネのしくみ
食べ物が少ない時期の支出を減らす
動物の体内では、食べ物から得た栄養を使い、細胞を維持したり、筋肉を動かしたりする反応が続いています。こうした反応のまとまりが代謝です。呼吸や循環を保つだけでもエネルギーは必要で、じっとしていれば消費がなくなるわけではありません。
哺乳類は、体内で作る熱によって体温を比較的高く保ちます。寒い季節には外へ逃げる熱を補う必要がある一方、昆虫や植物などの食べ物は手に入りにくくなります。冬眠は、この収入が少ない時期に体の支出を下げる生存戦略です。単に寒さを避ける行動と考えるより、食料不足と熱の維持を一緒に考えると理解しやすくなります。
冬眠に入る哺乳類は、代謝を能動的に抑え、体温を高く保つ調節も変化させます。「体温の設定値を下げる」という説明は、普段なら熱を作って維持する温度を、冬眠中はもっと低い側へ変えることを表しています。動物が意識して温度を選ぶという意味ではなく、神経や体の働きによる調節です。
冷えた結果と、調節された低体温を区別する
熱を作る量が少なくなると、小型の冬眠動物の体温は周囲の温度に近づきます。それでも、体温調節がすべて失われるわけではありません。寒さが強まりすぎれば熱を作る必要があり、低ければ低いほど有利という単純なしくみではありません。
冬眠できない動物が寒さで体温を保てなくなる状態では、このような季節に適応した調節や体の準備が整っているとは限りません。冬眠する種でも、一年中いつでも同じように低温へ耐えられるわけではなく、冬眠期に向けて代謝などの変化が起こります。北海道大学の冬眠研究紹介でも、季節に伴う体の変化が研究課題として説明されています。

普段の睡眠でも体温や代謝は変わりますが、深い冬眠での低下はそれより大きなものです。専門的には、代謝と体温を下げた状態を「トーパー」と呼びます。短時間のトーパーを使う動物もいるため、「体温を下げる動物はすべて冬じゅう冬眠する」とは考えないようにしましょう。
カエル・ヘビ・昆虫の冬越しとは何が違うのか
恒温・変温と、熱を得る方法を分けて考える
哺乳類や鳥類は恒温動物、カエルやヘビ、昆虫などは変温動物と呼ばれます。ただし、恒温動物も冬眠中には体温を変えますし、変温動物もいつも気温と同じ体温でいるわけではありません。この呼び方だけで冬越しのしくみを分けると、例外が分かりにくくなります。
そこで役立つのが、熱を得る方法です。哺乳類は主に体内で作る熱を使う「内温性」、カエルやヘビは主に周囲からの熱に頼る「外温性」です。例えば、ヘビは日なたや物陰へ移ることで体温を調節します。外温性でも、環境の変化にただ任せきりということではありません。ノースカロライナ州立大学の解説でも、両生類や爬虫類が行動と環境を使って体温を調節する点を説明しています。
冬には、外温性の動物の体温や活動が環境温度の影響を強く受けます。カエルやヘビは、種に応じて地中や水中、岩の隙間などで冬を越します。哺乳類が普段の高い体温の維持を抑える場合とは、出発点となる熱の得方が違います。
| 比べる点 | 小型哺乳類の典型的な冬眠 | カエル・ヘビなどの冬越し | 昆虫の冬越し |
|---|---|---|---|
| 普段の熱の得方 | 主に体内で熱を作る | 主に周囲の熱を利用する | 多くは周囲の温度の影響が大きい |
| 冬の主な変化 | 代謝と体温調節が変わる | 低温下で活動や代謝が低下する | 休眠などで発育や活動を抑える |
| 冬を過ごす姿 | 成体などの個体が冬眠する | 種に応じた場所で過ごす | 卵・幼虫・さなぎ・成虫など |
| 説明するときの注意 | 冷やせば冬眠するわけではない | 哺乳類と熱の調節が異なる | 冬越しのすべてが同じ休眠ではない |
表は代表的な違いを整理したものです。実際の冬越しは種や生活段階によって異なり、すべてを一つの型へ収めることはできません。
昆虫の休眠には発育の時期を合わせる働きもある
昆虫の休眠では、発育や繁殖が季節に合わせて抑えられます。単に寒くて動きが鈍い状態とは異なり、日長などを手がかりに休眠へ入るものがあります。農研機構のノシメマダラメイガの解説では、温度だけでなく日長の条件が休眠に関わる例を紹介しています。
越冬は、こうした多様な方法を含む「冬を越すこと」全体の言葉です。日常語ではカエルの冬越しも冬眠と呼ばれますし、英語の資料でも用語の使い方には幅があります。呼び名だけを正誤で分けるより、「普段はどう熱を得るか」「冬に何を抑えるか」を確認すると、しくみを比べられます。
身近な虫がどの姿で冬を越すかは、冬の昆虫の越冬を観察する|卵・幼虫・さなぎ・成虫で冬を越す虫の探し方と見守り方でも紹介しています。哺乳類との違いを考える際も、まず種と生活段階をそろえて見ると整理しやすくなります。
ヤマネ・シマリス・コウモリの体で起こる変化
体温は大きく下がっても一定ではない
ヤマネは、深い冬眠をする日本の小型哺乳類です。丸くなって手足を内側へ収める姿には、体の表面から逃げる熱を少なくする意味もあります。多摩動物公園の飼育記録では、周囲の温度に応じて体温を下げ、条件によっては零度近くになることが紹介されています。
シマリスも、活動期には高い体温を保ちながら、冬眠期には低体温で過ごす期間を持ちます。北里大学が紹介する研究例では、深い冬眠時の体温は約6℃、中途覚醒では約37℃です。これは研究条件での目安であり、すべてのシマリスが同じ温度になるという意味ではありません。北里大学のシマリス冬眠研究に、体温の変化が説明されています。
「冬眠中の体温は何度か」という問いには、動物の名前だけでなく、周囲の温度と冬眠のどの段階かも必要です。深い冬眠に入る途中、低体温が続く時期、温め直す途中では、同じ個体でも測定値が違います。図鑑の数字を比べるときは、最低値と期間の平均値を混同しないようにします。
心拍と呼吸も少ない消費に合わせて変わる
体の反応が遅くなり、必要とする酸素が少なくなると、心臓や呼吸の働きも大きく変化します。冬眠中の一部のコウモリでは、活動時より心拍が大幅に遅くなり、呼吸と次の呼吸の間が長くなることがあります。体温が下がるだけでなく、酸素を運び、使う全体の働きが変わるのです。
ただし、コウモリという一つの型があるわけではありません。冬眠する種、移動する種、条件に応じて両方を使う種がいます。米国国立公園局のコウモリの解説でも、こうした違いと、冬眠中の代謝・心拍・呼吸の低下が説明されています。
研究では、体温の記録に加え、心電図や呼吸、酸素消費などを組み合わせます。酸素消費は、体がどれほどエネルギーを使っているかを調べる手がかりです。体温の一点だけでは、熱を作っている途中なのか、代謝が低いままなのかを十分に区別できません。
外から見える丸い姿や動きの少なさは、体内の状態を確定する材料にはなりません。野外でこの変化を確かめようと触ったり、飼育動物の呼吸が見えにくいから冬眠だと決めたりせず、研究記録と目の前の動物の扱いを分けて考えてください。









