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自然・サイエンス

動物の冬眠のしくみ|体温の下げ方、ヤマネとクマの違い、変温動物の冬越し

途中で体温を戻す「中途覚醒」には謎が残る

冬眠は低体温が春まで続く一本の線ではない

小型哺乳類の多くでは、深い冬眠と、体温を活動期に近い水準まで上げる時期が交互に現れます。冬眠の途中でこのように体温を回復させることを中途覚醒といいます。「冬眠中に目覚める」と聞くと冬眠が終わったように感じますが、季節全体としてはまだ冬眠期の途中です。

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深い冬眠が続く長さや、温かい状態で過ごす時間は、種や周囲の温度などで変わります。数日ほど低体温で過ごしてから体温を上げる研究例もありますが、何日おきと一律には決められません。外へ出ずに巣の中で体温を上げる場合もあり、中途覚醒と採食のための外出は同じ意味ではありません。

小型哺乳類に見られる冬眠の周期(1. 冬眠へ入る、2. 深い冬眠、3. 中途覚醒、4. 再び冬眠へ)
周期の長さや中途覚醒中の行動は、種や条件で異なります。

体を温め直すには燃料が必要です。中途覚醒を含めて見なければ、冬のエネルギー収支は分かりません。深い冬眠中の消費が非常に小さくても、温度の上げ下げが何度も起きれば、冬全体の消費はその分だけ増えます。だからこそ、研究者は低い体温だけでなく、いつ、どのくらいの頻度で温度が戻るかを記録します。

起きている変化と、その目的は別の問い

中途覚醒の役割として、免疫の働きの回復、睡眠に関わる調節、低温で進みにくい細胞の反応などが検討されています。例えば、ジリスを用いた研究では、深い冬眠中に抑えられた免疫反応が、体温の回復後に現れることが報告されています。中途覚醒と免疫反応の研究は、役割を考える手がかりの一つです。

ここで「体温が戻ったときに免疫が働く」という観察と、「免疫を働かせるために必ず目覚める」という説明は区別します。温度が戻った結果として再開した反応かもしれず、その反応だけが周期全体を生み出しているとは限りません。一つの役割ですべての種を説明できるかも、まだ分かっていません。

シマリスの肝臓では、中途覚醒に伴い体内時計に関わる遺伝子の働きが一時的に変化することも調べられています。北海道大学が公開するシマリスの研究報告では、冬眠中の体温変動と時計遺伝子の関係が紹介されています。中途覚醒は「トイレのため」「空腹だから」と一つの理由で片づけず、未解明な部分が残る現象として読むのが適切です。

クマの冬ごもりは体温の下がり幅が小さい冬眠

冬眠に含めるかより、何が違うかを見る

クマの冬ごもりは、ヤマネのような深い低体温と区別して説明されることがあります。ただし、体温がそれほど下がらなくても、代謝を抑えて食料不足の季節を乗り切る点では共通しており、研究ではクマも冬眠する動物として扱われます。「クマは冬眠しない」という言い切りだけでは、生理的な特徴を十分に伝えられません。

雪の斜面の穴で落ち葉の上に眠るクマ
クマは体温の下がり幅が小さい冬眠をする

代表的なクマの冬眠では、体温は活動期より数度ほど下がるのが目安で、小型哺乳類のように周囲の低い温度近くまで下がるわけではありません。それでも代謝は大きく低下します。アラスカ大学の研究発表では、比較的高い体温と大きな代謝低下が両立することを報告しています。

この結果は、「冷えたから体の反応が遅くなる」だけでは冬眠を説明しきれないことを示します。クマでは、小型哺乳類に典型的な、深い低体温と中途覚醒の大きな反復も同じ形では現れません。一方で、体温や活動がまったく一定になるわけでもなく、寝返りなどの動きもあります。

小型哺乳類とクマの冬眠を比べる(ヤマネ・シマリスなどとクマの比較)
代表的な違いです。体温や行動には種・個体・条件による幅があります。
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大きな体は冷めにくいが、温め直す量も多い

同じような形なら、体が大きいほど、体積に対する表面積の割合は小さくなります。熱は表面から逃げるため、大きな体は小さな体より熱を保ちやすい傾向があります。小型の動物では、体重当たりで見た熱の維持の負担が大きくなりやすく、代謝を下げる利点も大きくなります。

一方、大きな体を低温から一気に温め直すには、多くの熱が必要です。クマが小型哺乳類と同じ温度変化を繰り返さないことを考えるうえで、体の大きさは重要な条件になります。ただし、大きさだけで冬眠の型が決まるわけではなく、体のつくり、食べ物、繁殖、生息環境も関わります。

飲食や排泄をほとんどせず、巣で子を育てる

冬ごもり中のクマは、基本的に飲食や排尿、排便をほとんどせず、蓄えた脂肪を主な燃料にします。脂肪を利用する過程では水も生じます。排尿しない間の窒素成分の再利用についても研究されていますが、仕組みには未解明な点が残ります。クマの生理を扱った研究レビューでも、尿素の再利用に関する報告は限られると説明されています。

妊娠したメスが冬ごもり中に出産し、巣で授乳することもクマの特徴です。札幌市円山動物園のエゾヒグマの解説でも、冬眠と繁殖の一年の流れを紹介しています。母グマには自分の維持に加え、子を育てるための蓄えが必要になります。

これは冬の巣が安全な観察場所だという意味ではありません。クマは冬でも活動する場合があり、冬眠の知識から遭遇時の安全を判断することはできません。野外では季節にかかわらず、自治体や施設が出す出没情報と立入規制に従ってください。

冬の準備は脂肪をためる型と食料を貯める型

燃料を体の内側と外側のどちらに置くか

冬眠中も消費は続くため、冬の前に燃料を確保する必要があります。大きく見ると、体内に脂肪を蓄える方法と、巣などへ食料を貯める「貯食」を使う方法があります。クマや多くの冬眠するコウモリは脂肪への依存が大きく、シマリスは貯食を利用する代表例です。

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脂肪は、食べ物を探しに出ずに使える体内の蓄えです。食料が少ない時期に外へ出る回数を減らせる一方、冬が来る前に十分な栄養を得られるかが重要になります。冬眠の準備は、冬の入口だけで完結するものではなく、活動期の食料事情ともつながっています。

貯食を使う場合は、中途覚醒中に蓄えた食料を食べて、再び低体温の期間へ戻ることがあります。ただし、低い体温のまま普段どおり食べ続けるという意味ではありません。また、貯食型でも体内の燃料を使うので、「脂肪がまったくない型」と二分するのは正確ではありません。

準備の方法 主な利点 冬を越すうえでの制約 理解するときの注意
脂肪を蓄える 体内の燃料で長く過ごせる 冬の前の食料と蓄えに左右される 脂肪が熱を作る組織とは限らない
食料を貯める 覚醒時に食べ物を補える 貯蔵場所と利用できる状態が必要 深い冬眠中に食べるとは限らない
両方を利用する 複数の蓄えを使える 配分は種や条件によって異なる 型の名前は主な依存先を表す

シマリスの貯食と、脂肪に頼るクマの違いは、円山動物園の解説でも取り上げられています。冬眠の写真だけでは燃料の置き場所までは分からないため、食料の蓄え方と中途覚醒中の行動を組み合わせて見ます。

寒くなった当日だけで冬眠が始まるわけではない

冬眠の開始には、周囲の温度や日長、食料、体内の季節的なリズムなどが関わります。どの条件の影響が強いかは種によって違い、同じ場所にいる動物が同じ日に冬眠するわけではありません。年齢や繁殖状態、蓄えの違いも、冬の過ごし方に関わります。

冬眠場所も準備の一部です。巣や樹洞、洞窟などでは、外の気温と内部の温度が同じとは限りません。風が当たりにくい、温度変化が小さいといった条件は、冬の消費を考える手がかりになります。外が寒いほど、どんな場所でも冬眠に適するというわけではないのです。

動物が見えない季節に、周囲の自然の変化を知りたいときは、冬のロゼット観察入門|地面に広がる草の形の理由と、葉で見分ける手がかりのように、休息場所を開けずに見られる対象を選ぶ方法もあります。動物を探し出すことだけが、冬の暮らしを知る方法ではありません。

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