寄席の楽しみ方|定席の番組の見方、色物の楽しみ、入退場と飲食のマナー
高座まわりの道具と言葉
演者が芸を見せる舞台を高座(こうざ)と呼びます。もともとは客席より一段高く設けた座のことで、いまでは演者が座る場所そのものも指します。高座のまわりには、寄席ならではの道具や習わしがあります。

めくりと寄席文字
高座の脇には、いま出ている演者の名前を書いた紙の札が掛けられています。これをめくりといい、一人が終わるごとに一枚ずつめくって次の演者の名前を出します。めくりの文字は、太く丸みのある独特の書体で書かれることが多く、寄席文字と呼ばれます。すき間なく黒く書くのは、客席がいっぱいに埋まるようにという願いを込めたものだといわれます。
出囃子と下座
演者が高座に上がるときに流れる音楽を出囃子(でばやし)といいます。三味線・太鼓・笛などで演奏され、演者ごとに曲が決まっていることが多いので、通ううちに曲を聞いただけで誰が出てくるかわかるようになります。演奏は舞台の袖で、お囃子の担当者や前座が生で行うのが一般的です。
開場のときに鳴らす一番太鼓や、終演のときに鳴らす追い出し太鼓もあります。追い出し太鼓は、お客さんを送り出しつつ「また来てください」という気持ちを込めたものといわれます。
高座返し
一人の演者が下りると、前座が高座に出てきて座布団を裏返したり、位置を直したりします。これを高座返しといい、次の演者を迎えるための準備です。あわせてめくりもめくられます。この短い時間が、客席の出入りにちょうどよい区切りになります。

羽織を脱ぐしぐさ
真打や二ツ目は、羽織を着て高座に上がることが多く、マクラから本題に入るあたりで、話しながら羽織をすっと脱ぎます。脱いだ羽織は、高座の後ろへ置かれ、前座がそっと引き取ることもあります。前座は羽織を着ないのが一般的なので、着ているものからも芸歴の段階がうかがえます。羽織を脱ぐしぐさを、噺の本題に入る合図として見ていると、高座の流れがつかみやすくなります。
落語家が高座で使う道具は、基本的に扇子と手ぬぐいだけです。扇子は箸や筆、刀などに、手ぬぐいは財布や手紙、本などに見立てて使います。上方では、演者の前に見台という小さな机を置き、小拍子という木の拍子木で音を入れる場面もあります。同じ噺でも、道具の扱いの違いを見比べると楽しみが増えます。
入場のしかたと席の選び方
定席の通常の興行は、入口の木戸口で入場料を払って入る形が多く見られます。寄席では入場料のことを、昔の言い方で木戸銭(きどせん)と呼ぶこともあります。料金や支払い方法、割引の有無は寄席ごとに違い、時期によって変わることもあるので、出かける前に公式サイトで確認しましょう。
当日の流れ
- 公式サイトで、その日の番組と開演・終演の時刻を確かめる。
- 開演の少し前に着き、入口で入場料を払う。
- 場内に入り、空いている席を選んで座る。指定席の寄席では、案内に従う。
- 携帯電話の電源を切るか、音と振動の出ない設定にする。
- 開口一番から聴き、仲入りで一息つく。
混み合う日は、開演前に列ができることもあります。とくに人気の演者がトリを務める旬や、土日、祝日、正月などは早めに着くと安心です。
席の選び方
寄席の多くは自由席です。初めてなら、高座がよく見える中ほどの席がおすすめです。前のほうの席は表情や扇子の細かな動きまでよく見えますが、演者との距離が近いぶん、途中で出入りしにくくなります。途中で帰る予定がある人は、通路側や後ろのほうに座ると気兼ねなく動けます。
寄席によっては、畳に座って見る桟敷席や、二階席があるところもあります。桟敷は足を伸ばしにくいこともあるので、長い時間座るなら体に合う席を選びましょう。荷物は座席の下や足元にまとめ、隣の席を荷物でふさがないようにします。

服装と持ち物
寄席に決まった服装はありません。ふだん着で気軽に出かけてかまいません。長い時間座ることが多いので、締めつけの少ない服装が楽です。季節によっては場内の冷暖房が強く感じられることもあるため、一枚はおれる上着があると調節できます。
持ち物は、入場料と、音を消せる携帯電話、ハンカチ程度で十分です。荷物は少なめにすると、座席でも出入りでも身軽に動けます。気になった演者を書き留める小さなメモ帳があると、帰り道の楽しみが増えます。










