テンカラ釣りの始め方|竿・ライン・毛鉤のしくみと、渓流での振り込みと流し方
リールを使わず、竿と糸と毛鉤だけで渓流魚をねらうテンカラ釣り。道具の役割と長さの決め方、順毛鉤と逆さ毛鉤の違い、振り込みの手順、流れの読み方と毛鉤の流し方、遊漁券や禁漁期間などのルール、渓流で安全に過ごすための注意までを、初めての人向けに順を追ってまとめました。

テンカラ釣りは、竿の先に結んだ糸と毛鉤だけで、ヤマメやイワナ、アマゴといった渓流魚をねらう釣りです。リールもエサも使わず、道具は小さな袋に収まるほどしかありません。山あいの集落で、職漁師が魚を獲るために使ってきた方法がもとになったといわれ、今は趣味の釣りとして広く楽しまれています。
道具が少ないぶん、釣果を左右するのは、糸の長さの決め方や毛鉤を落とす位置、流れに乗せるときの竿さばきといった「使い方」です。ここでは、道具それぞれの役割から、振り込みと流し方、ポイントの読み方、ルールと安全の考え方までを、初めての人が最初に知りたい順に整理します。
テンカラ釣りのしくみと、ほかの釣りとの違い
テンカラの基本の形は、竿、ライン(道糸)、ハリス、毛鉤の四つです。竿を振ると、その力がラインに伝わって前へ伸び、ラインの先のハリスと毛鉤が、ねらった水面にそっと落ちます。重りを使わないので、ラインそのものの重さと、竿のしなりで毛鉤を運ぶのが特徴です。
毛鉤は、鉤に鳥の羽根や糸を巻いて、虫のように見せたものです。渓流魚は、水面に落ちた虫や、流れの中を漂う水生昆虫を食べています。毛鉤をその流れに自然に乗せ、魚に「流れてきた虫」だと思わせて食いつかせます。
フライフィッシングやエサ釣りとの違い
同じように毛鉤を使う釣りに、フライフィッシングがあります。フライではリールに巻いた重いラインを長く伸ばし、遠くまで毛鉤を届けられます。一方のテンカラは、ラインの長さが決まっているので、届く範囲は竿とラインを足した長さまでです。そのかわり、糸を巻き取る手間がなく、一つのポイントを探ったらすぐ次へ移れる身軽さがあります。
エサ釣りとの違いは、魚を探す動き方にあります。エサ釣りは、重りで沈めたエサを、魚がいそうな深い場所へじっくり流すことが多い釣りです。テンカラは、水面かそのすぐ下を中心に、浅い流れを次々に探って歩きます。
| 比べる点 | テンカラ | フライフィッシング | エサ釣り |
|---|---|---|---|
| リール | 使わない | 使う | 使う場合と使わない場合がある |
| 届く範囲 | 竿とラインの長さまで | 遠くまで届けられる | 仕掛けの長さによる |
| 主にねらう層 | 水面と表層 | 水面から深場まで | 底近くや深場が中心 |
| 道具の数 | 少ない | 多め | エサの用意が必要 |
| 向く場面 | 小〜中規模の渓流 | 広い川、湖 | 深い淵、濁った日 |
テンカラが得意なのは、川幅がそれほど広くなく、流れが変化に富んだ渓流です。反対に、川幅が広すぎる場所や、深い淵の底にいる魚をねらう場面は苦手です。万能な釣りではなく、「浅い流れを手早く探る釣り」と考えると、使いどころが分かりやすくなります。
竿・ライン・ハリスの役割と長さの決め方
テンカラの道具選びで迷いやすいのは、長さです。竿とラインとハリスの長さが、毛鉤の届く距離と扱いやすさを決めます。
竿は川の広さと木の茂り方で選ぶ
テンカラ竿は、振り出し式(伸縮式)の細長い竿で、長さは三メートル台が中心です。一般的な渓流なら、三メートル台半ばくらいが扱いやすいとされています。
木の枝が川の上に覆いかぶさる細い沢では、長い竿は振りにくく、枝に毛鉤を引っかけやすくなります。こうした場所では短めの竿が向いています。逆に、開けた広い川では、長めの竿のほうが遠くまで届き、魚に近づきすぎずに済みます。
竿の調子(しなり方)にも違いがあります。先のほうだけが曲がる竿は、狙った場所へ正確に毛鉤を送りやすく、竿全体が曲がる竿は、ゆったりしたリズムで振れて、魚が掛かったときのやり取りがやわらかくなります。最初の一本は、極端な調子のものより、中くらいのものを選ぶと癖が少なく練習しやすいでしょう。
ラインはレベルラインとテーパーラインの二種類
ラインには、大きく分けて二つの種類があります。
- レベルライン: 最初から最後まで同じ太さのライン。フロロカーボンなどの釣り糸を使います。軽く、好みの長さに切って使えるのが利点です。
- テーパーライン: 竿側が太く、先に行くほど細くなるライン。糸を撚り合わせて作られることが多く、重さが手元側に寄っているため、竿の力が先へ伝わりやすく、初心者でも振り込みやすいとされています。
どちらにも長所があり、上達後も好みで使い分ける人が多くいます。初めのうちは、振り込みの感覚がつかみやすいテーパーラインか、少し太めのレベルラインから始めると練習しやすいでしょう。レベルラインは目立つ色のものを選ぶと、流れの中でラインの動きが見えやすくなります。
ラインの長さの目安
ラインの長さは、竿と同じくらいから始めるのが基本です。慣れてきたら、竿の長さの一倍半程度まで伸ばして、遠くのポイントを探ることもできます。
ラインが短いと、毛鉤を正確に落としやすく、魚が掛かったときも取り込みやすくなります。ただし、魚に近づかないと届かないので、気づかれやすくなります。ラインが長いと、離れた場所から探れますが、振り込みが難しくなり、風の影響も受けやすくなります。迷ったら短めから始め、慣れに合わせて少しずつ長くするのがよい順番です。
ハリスは毛鉤と魚を結ぶ細い糸
ラインの先には、ハリスと呼ばれる細い糸を一メートル前後つなぎ、その先に毛鉤を結びます。ハリスを細くすると、毛鉤が水面で自然に動きやすく、魚に糸が見えにくくなります。そのかわり、強く引かれると切れやすくなります。
ハリスは、毛鉤を何度も付け替えたり、枝に引っかけたりするうちに短くなります。短くなりすぎたら新しいものに替えましょう。ラインとハリスの結び目は、ほどけていないか、こまめに確認します。

毛鉤の種類と選び方
テンカラの毛鉤は、ハックル(鳥の首や背中の羽根)の向きによって、大きく二つに分けられます。
順毛鉤と逆さ毛鉤
- 順毛鉤: ハックルが鉤の後ろ(曲がりのほう)へ向かってなびく形の毛鉤。水の抵抗を受けにくく、流れに素直に乗るので、自然に流すのに向いています。
- 逆さ毛鉤: ハックルが鉤の前(糸を結ぶ側)へ向かって開く形の毛鉤。水を受けて羽根が開いたり閉じたりするので、竿先で小さく動かすと、生き物らしい動きが出やすいとされています。
テンカラでよく見かけるのは逆さ毛鉤ですが、順毛鉤を好む人もいます。どちらが優れているというより、「流す釣り」と「誘う釣り」のどちらを中心にするかで選ぶと考えるとよいでしょう。
大きさと色の考え方
毛鉤の大きさは、その時期に川で見かける虫の大きさが目安になります。大きめの毛鉤は水面で見やすく、魚の反応も分かりやすい一方、警戒心の強い魚には見切られることがあります。反応が鈍いときは、一回り小さいものに替えてみます。
色は、明るい色と暗い色を一つずつ用意しておくと、天気や水の色で替えられます。ただ、テンカラでは「どの毛鉤を使うか」より「どう流すか」のほうが釣果を左右するとよくいわれます。最初は種類を増やしすぎず、同じ形の毛鉤を数個ずつ持ち、流し方の練習に集中するほうが上達が早くなります。
毛鉤を自分で巻く楽しみ
テンカラに慣れると、毛鉤を自分で巻く人も多くなります。鉤を小さな万力のような道具に固定し、糸と羽根を巻き付けて作ります。テンカラの毛鉤は構造が比較的シンプルなものが多く、自作の入り口として向いています。
自分で巻くと、魚の反応がよかった毛鉤の大きさやハックルの量を少しずつ変えて試せます。禁漁期のあいだに、次の季節に使う毛鉤を巻きためておくのも、テンカラの楽しみ方の一つです。










