湯治の始め方|自炊部のある宿の選び方と、数日から楽しむ過ごし方・入浴のペース
自炊の献立の考え方
自炊部に泊まると、毎食の献立を自分で考えることになります。ここで張り切りすぎると、炊事に時間を取られ、湯治の「休む」時間が減ってしまいます。湯治の自炊は、家での料理よりも簡単にすることを前提に組み立てると続けやすくなります。
簡単にするための三つの考え方
一つ目は、品数を減らすことです。ご飯と汁もの、焼くか煮るかしただけのおかずが一品あれば、湯治の食事としては十分です。二つ目は、同じ食材を何度かに分けて使うことです。大根を買ったら、一日目は味噌汁、二日目は煮物、三日目は漬物のように使い回すと、買い物も保存も楽になります。三つ目は、火を使う時間を短くすることです。炊事場のコンロは数が限られていることが多く、長く煮込む料理は、ほかの宿泊者が使いたい時間と重なりがちです。
持ち込みと現地調達の分け方
持ち込むとよいのは、米、乾麺、わかめや麩、かつお節などの乾物、小分けにした調味料やだしの素、日持ちする根菜や缶詰、お茶の葉です。一方、豆腐や卵、葉物野菜、その日に食べる肉や魚は、傷みやすいので現地で買うほうが安心です。地元の漬物や山菜の加工品も、現地ならではの楽しみになります。
乾物は軽くて傷みにくいので、湯治の持ち込みに向いています。味噌汁の具にわかめや麩を入れるだけで、一品増えます。干ししいたけのように戻すのに時間がかかる乾物は、朝に水につけて冷蔵庫に入れておけば、夕方には使えます。
三泊の献立の例
たとえば三泊なら、一日目の夜はご飯と味噌汁と卵焼き、二日目は朝に残りのご飯で雑炊、夜は豆腐と野菜の煮物、三日目は地元の直売所で買った野菜を焼いて、残った食材を使い切る、という流れにすると、無駄が出にくくなります。最終日の朝は、冷蔵庫の中を空にすることを目標に献立を決めると、帰り支度が楽です。
湯上がりにすぐ食事を作るのは、思ったより疲れることがあります。お腹が空く前に下ごしらえを済ませておく、ご飯を多めに炊いて次の食事に回す、といった工夫で、入浴と休憩の時間を守りましょう。
一日の過ごし方と入浴のペース
湯治では、一日のなかで何度も温泉に入りますが、回数を増やせばよいというものではありません。体を疲れさせないペースで入ることが、湯治を心地よく続けるための基本です。
入浴の回数の考え方
湯治の経験者のあいだでは、最初の日は一、二回、慣れてきても一日に数回までにとどめ、一回の入浴は長くしすぎない、という考え方がよく語られます。入る回数よりも、入ったあとにしっかり休むことのほうが大切です。
温泉の成分や温度によって、体への感じ方は大きく変わります。熱い湯や、成分の濃い湯は、短い時間でも体が疲れやすいことがあります。泉質のちがいについては、温泉の泉質の見方で紹介しています。
一日の流れの例
| 時間帯 | 過ごし方の例 |
|---|---|
| 朝 | 起きて軽く体を動かし、朝食のあとにひと休みしてから入浴 |
| 昼前 | 散歩や読書。昼食は軽めに |
| 午後 | 昼寝のあとに入浴。湯上がりは水分をとって横になる |
| 夕方 | 炊事場で夕食の支度。食事の前後すぐの入浴は避ける |
| 夜 | 寝る少し前にぬるめの湯に短く入り、早めに休む |
食事の直後や、お酒を飲んだあとの入浴は、体に負担がかかりやすいとされます。少し時間をおいてから入るようにします。湯上がりには、水やお茶で水分をとりましょう。
湯上がりの過ごし方
湯治では、入浴そのものと同じくらい、湯上がりの時間を大切にします。浴場から部屋に戻ったら、すぐに次の行動に移らず、浴衣のまま横になったり、窓辺で涼んだりして、体が落ち着くのを待ちます。体が冷えないよう、汗が引いたら羽織るものを一枚着ておきます。
湯上がりに昼寝をする人も多く、湯治場では昼下がりの時間がとても静かです。眠くなったら逆らわずに休むのが、湯治らしい過ごし方です。逆に、湯上がりにすぐ散歩や買い物に出かけたり、炊事を始めたりすると、知らないうちに疲れがたまっていきます。入浴と次の予定のあいだに、少なくとも短い休憩をはさむことを意識しておきましょう。
湯あたりへの備え
湯治を続けていると、数日目にだるさや眠気、食欲がわかないといった疲れを感じることがあります。これを湯あたり(湯ただれ、湯さわりと呼ぶ地域もあります)と言うことがあります。
だるさを感じたら、入浴の回数を減らし、部屋で横になって休みます。無理に入り続ける必要はありません。めまいや動悸、強い頭痛など、いつもと違う症状があるときは、入浴をやめ、宿の人に相談するか、医療機関を受診してください。
持病のある人や治療中の人、妊娠中の人は、湯治に出かける前に主治医に相談してください。温泉は治療の代わりにはなりません。体調に不安があるときは入浴を控え、医療機関の判断を優先してください。
入浴の作法
湯治場の共同浴場は、地元の人や長く滞在している人が日常的に使う場所です。かけ湯をしてから入る、タオルを湯船に入れない、洗い場を広く使いすぎない、といった基本の作法を守ります。くわしくは、温泉の入り方とマナーを参考にしてください。
湯治場によっては、熱い湯とぬるい湯の湯船が分かれていたり、地元の人が決めた入り方の順番があったりします。分からないときは、周りの人のやり方を見て合わせるか、宿の人に尋ねるのが確実です。










