温泉の泉質の見方|地下での成り立ちと、温泉分析書を読む順番
温泉の泉質は、地下の熱、水の通り道、岩石との反応から生まれます。火山性・非火山性の成り立ちと、単純温泉、塩化物泉、硫黄泉などの特徴を紹介。掲示された分析書の泉温、pH、溶存物質、成分名を読む順番から、湯の色の変化や湯の花の仕組みまで、効能と切り離して温泉を観察する方法をまとめます。

温泉施設の壁に、長い泉質名や成分表が掲示されていることがあります。数字が多くて読みづらく見えても、源泉の名前、泉温、pH、主な成分という順で見ると、その湯が持つ特徴を少しずつつかめます。
温泉は地下の水と熱が出会い、岩石との反応や水どうしの混合を経て地表へ届いたものです。成り立ちと分析書を結び付けると、透明な湯が後から茶色くなる理由や、同じ温泉地でも湯の印象が違う理由が見えてきます。ここでは病気への効能を判断せず、地球の仕組みとして泉質を読む方法を紹介します。
温泉は水の起源・熱源・通り道を分けて考える
地下の水は岩石のすき間を通る
雨や雪の一部は地面にしみ込み、岩石の割れ目や地層のすき間を通って地下水になります。地下には必ず大きな空洞や川があるわけではなく、水が通りやすい層と通りにくい層が重なっています。温泉を考えるときも、地中の巨大な湯だまりを一つ想像するより、水が通る経路として見る方が分かりやすくなります。
水は地下で熱を受けるだけでなく、接した岩石から成分を取り込んだり、もともと溶けていた物質を析出させたりします。反応の進み方は、岩石の種類、水温、水の酸性やアルカリ性、流れてきた経路などで変わります。地下にいた時間が長ければ、必ず成分が濃くなるという単純な関係ではありません。
温まった水が地表へ届くには、水の通り道も必要です。断層に沿う割れ目などを通って上がる場合や、掘削した井戸から取り出す場合があります。断層がある場所なら必ず温泉が出る、深く掘ればどこでも同じ湯になる、と考えることはできません。熱、水、地質の条件がそろっているかが関わります。

温泉という呼び名と泉質の分類を区別する
日本では温泉法に基づく温度や成分の条件があり、日常語の「温かい湯」と範囲が一致するわけではありません。地表へ出たときに温度が低くても、成分の条件によって温泉に該当することがあります。一方、浴槽で温められた湯の熱さだけでは、地下から来た時点の条件は分かりません。
さらに、療養泉としての泉質名を付けるための分類は、温泉に該当するかどうかの条件と区別して読む必要があります。「温泉だが、よく見る泉質名が付いていない」という場合も、成分がないという意味ではありません。制度や分類の詳しい基準、最新の情報は環境省の温泉の定義と現地の掲示で確認してください。
火山性と非火山性では温められ方が異なる
火山性の温泉はマグマに由来する熱が関わる
火山性の温泉は、マグマに由来する熱や高温の岩体、火山ガスなどの影響を受けて生じます。雨や雪からの地下水が温められる場合も、火山ガスが地下水へ溶け込む場合もあります。火山の近くの温泉を、すべてマグマそのものから出てきた水と考える必要はありません。
ガスに含まれる成分が水に溶けると、酸性の強さや硫黄に関係する成分へ影響することがあります。そのため火山性の温泉には酸性や硫黄の特徴を持つ例がありますが、火山性なら必ず酸性で白濁するという対応ではありません。水が通った岩石との反応や、別の地下水との混合によっても性質が変わります。
非火山性には地下の熱や古い海水が関わる
地中は一般に深くなるほど温度が高くなる傾向があり、火山の近くでなくても、深い場所を通る水が熱を受けることがあります。その温度の上がり方は地域によって違います。地下深部で温まった水が割れ目を上がったり、掘削によって取り出されたりするものが、非火山性温泉を考える代表的な例です。
また、海でたまった地層の中には、古い海水に由来する水が長く閉じ込められている場合があります。「化石海水」と呼ばれることがありますが、昔の海水が成分もそのまま保存されているとは限りません。地層との反応や他の水との混合を経るため、現在の海水と同じ組成にはなりません。
非火山地域のすべての温泉を、この二つだけで説明できるわけでもありません。地下のさらに深い所から上昇する流体が関わる例も研究されています。産総研の深部流体の起源では、火山のない地域の温泉を含めた水の起源を紹介しています。個別の温泉の成因は、地域の地質資料や研究機関の解説で確かめるのがよいでしょう。

火山との距離や海沿いという位置は、成因を考える手がかりになります。ただし、海の近くにある塩化物泉をすべて海水の混入と決めたり、山の湯をすべて火山性と決めたりはできません。観光地図の位置と、分析書の成分は、それぞれ別の情報として記録すると混同を減らせます。
分析書は源泉名・採取時点・泉温から読み始める
どの水をいつ調べた結果かを確かめる
最初に見るのは施設名だけでなく源泉名です。一つの施設が複数の源泉を使う場合や、内湯と露天で使う湯が違う場合があります。施設の入口にある一枚の分析書を、すべての浴槽の説明と受け取らず、源泉名と浴槽の対応を案内で確認します。
次に採取場所、採取日、分析日を見ます。源泉から採った水なのか、複数の水を混ぜた場所の試料なのかで、表が何を示すかが変わります。分析書はその時点と条件の試料を調べた記録です。現在の浴槽の水を常時測定している表とは区別してください。
泉温は温泉水を採取した場所などでの温度です。浴槽へ運ぶ間に冷めることもあり、利用のために加温や加水が行われる場合もあります。数字が高い源泉ほど入浴時も熱い、低い源泉は温泉ではない、といった読み方は避けます。今入ろうとしている湯の温度は、浴槽側の表示や施設の案内で確認します。
最初の一巡ではすべての成分を読まない
- 源泉名を読み、利用する浴槽に対応する掲示かを確かめます。
- 採取日と採取場所を見て、いつ、どこの水の記録かを押さえます。
- 泉温とpHを見て、源泉の温度と酸性・アルカリ性の傾向を読みます。
- 泉質名を探し、長い名前を区切って主な成分を見つけます。
- 浴槽への利用方法を示す掲示で、加温、加水などの説明を読みます。
最初は源泉名、泉温、泉質名の三つをメモするだけでも十分です。読めない項目を残したまま先へ進んでかまいません。掲示を見るために脱衣所の通行を妨げず、撮影は施設の許可と他の利用者のプライバシーを優先してください。
分析書の読み方は日本温泉協会の解説にもまとまっています。成分の数字を多い順に覚えるより、「どこの水の結果か」を先に押さえると、後で湯の見た目と照らし合わせるときに迷いにくくなります。










