テスター(マルチメーター)の基本|乾電池で覚える電圧・導通・抵抗の測り方
電子工作で使うテスター(マルチメーター)の基本を、乾電池やUSB電源などの低い電圧に限って紹介します。端子とテスト棒の差し方、ダイヤルの読み方、直流電圧・導通・抵抗の測り方、値がおかしいときの切り分け、電流測定で気をつけることまで、最初につまずきやすい点を順に整理しました。

電子工作の部品がうまく動かないとき、「電池が弱っているのか」「配線が切れているのか」「はんだ付けが不十分なのか」を見た目だけで判断するのは難しいものです。そこで役立つのが、電圧や抵抗、配線のつながりを数字や音で確かめられるテスター(マルチメーター)です。
ただ、テスターはダイヤルの記号が多く、差し込み口も複数あるため、最初の一回で戸惑う人が少なくありません。本記事では、乾電池やUSB電源などの低い電圧に限って、直流電圧・導通・抵抗の測り方を順に紹介します。家庭のコンセントや家電の内部の測定は扱いません。
この記事で扱うのは、乾電池や電子工作キットなど低い電圧の測定だけです。家庭用コンセント、分電盤、家電の内部、大容量のバッテリーは感電・発火の危険があるため測らず、電気工事士やメーカーに相談してください。
テスターで分かることと、電子工作での使いどころ
一台で何役もこなす測定器
テスターは、もともと別々の計器だった電圧計・電流計・抵抗計を一台にまとめた道具です。マルチメーターとも呼ばれます。電子工作でよく使うのは、次の四つの機能です。
- 直流電圧:電池やUSB電源、回路の各点にどれくらいの電圧がかかっているか
- 導通:二点が電気的につながっているか(ブザーで知らせる機種が多い)
- 抵抗:部品や配線がどれくらい電気を通しにくいか
- 直流電流:回路にどれくらいの電流が流れているか
このほか、交流電圧、ダイオードの向きの確認、静電容量や周波数を測れる機種もあります。最初からすべてを使う必要はありません。電圧と導通、抵抗の三つを確実に使えるようになれば、電子工作のトラブルの多くは切り分けられます。
どんな場面で役立つか
たとえば、Arduinoで最初のLEDを光らせるような小さな回路で、LEDが点かないとします。考えられる原因は、電源が来ていない、配線が抜けている、部品の向きが逆、抵抗の値が違う、などさまざまです。テスターがあれば、「電源の電圧はある」「この配線はつながっている」と一つずつ確かめ、原因の候補を減らしていけます。
はんだ付けの後にも出番があります。見た目はきれいでも、内部で接触が不十分なことがあります。逆に、隣の端子にはんだが流れてつながってしまうこともあります。はんだ付けの基本で触れた「通電前の確認」を、テスターなら音や数字で行えます。

デジタルとアナログ、選ぶときに見るところ
表示の違い
テスターには、数字で表示するデジタル式と、針の振れで表示するアナログ式があります。初めての一台にはデジタル式が扱いやすいでしょう。数字をそのまま読めるため、目盛りの読み違いが起きにくく、プラスとマイナスを逆に当てても、多くの機種では「-」が付いて表示されるだけです。
アナログ式は、値の変化を針の動きで直感的に追える良さがあります。電圧がふらつく様子や、コンデンサーへの充電の様子などは、針のほうが分かりやすい場面もあります。ただし、目盛りが複数並んでいて読む段を選ぶ必要があり、極性を逆に当てると針が逆に振れてしまいます。

オートレンジとマニュアルレンジ
レンジとは、測る値のおおよその範囲のことです。マニュアルレンジの機種では、「20V」「200V」のように測る範囲をダイヤルで選びます。測りたい値より大きいレンジを選ぶ必要があり、小さすぎると「1」や「OL」などの表示になります。
オートレンジの機種は、測る種類(電圧、抵抗など)を選ぶだけで、範囲は自動で切り替わります。初めてならオートレンジのほうが操作の手順が少なく、迷いにくいでしょう。ただし、表示が落ち着くまで少し時間がかかることがあります。
安全に関わる表示
テスター本体や説明書には、どのような環境でどの電圧まで使えるかを示す「測定カテゴリ(CAT)」の表示があります。家庭用の電源や配線を測ることを想定した表示ですが、本記事の範囲(乾電池や電子工作キット)では、この表示があるからといって高い電圧の測定に挑戦する理由にはなりません。
選ぶときは、次の点を確かめておくと安心です。
- 説明書が付いていて、各端子の上限が読めること
- 電流の端子にヒューズが入っていること(交換用の情報があるとなおよい)
- テスト棒の被覆が厚く、指を止めるつば(ガード)が付いていること
- 導通チェックにブザーが付いていること
価格や機能の多さだけで選ばず、説明書を読んで理解できる機種を選ぶほうが、結果的に長く使えます。
端子とテスト棒の差し方、ダイヤルの読み方
黒は COM、赤は測るものに合わせる
テスターの差し込み口(ジャック)は、たいてい三つか四つあります。黒いテスト棒は「COM」と書かれたジャックに差します。COM は common(共通)の略で、どの測定でも基準になる側です。
赤いテスト棒は、測る種類によって差し込み口を変えます。電圧・抵抗・導通では、「V」「Ω」の記号が並んだジャックに差すのが一般的です。電流を測るときだけ、「A」や「mA」と書かれた別のジャックに差し替えます。機種によって表記や配置が違うため、必ず手元の説明書で確認してください。
| 測るもの | 黒のテスト棒 | 赤のテスト棒 | ダイヤルの例 |
|---|---|---|---|
| 直流電圧 | COM | V・Ω の端子 | V に直線と点線の記号 |
| 導通 | COM | V・Ω の端子 | ブザーの記号 |
| 抵抗 | COM | V・Ω の端子 | Ω |
| 直流電流 | COM | A または mA の端子 | A に直線と点線の記号 |
電流の端子に差したままにしない
最もよくある失敗は、電流を測ったあと、赤いテスト棒を電流の端子に差したまま電圧を測ろうとすることです。電流の端子は内部の抵抗がごく小さく、そのまま電池の両端に当てると、電池をほぼ短絡させたのと同じ状態になります。ヒューズが切れるだけで済めばよいほうで、電池やテスト棒が熱を持つ危険もあります。
電流を測り終えたら、すぐに赤いテスト棒を V・Ω の端子に戻す習慣をつけましょう。普段は電流の端子を使わない、と決めておくのも一つの方法です。
ダイヤルの記号の意味
ダイヤルには、似た記号が並んでいます。
- V のそばに直線と点線(または「DC」):直流電圧。電池やUSB電源はこちら
- V のそばに波線(または「AC」):交流電圧。本記事では使いません
- Ω:抵抗
- 音符やスピーカーのような記号:導通(ブザー)
- 三角と縦線の記号:ダイオードの確認
- A や mA:電流
測る前に「何を測るか」「ダイヤルは合っているか」「赤い棒の差し込み口は合っているか」の三つを声に出すくらいの気持ちで確かめると、間違いが減ります。











