水が凍るしくみと過冷却|表面から張る氷、0度でも凍らない水と家庭での実験
凍り始めに出る潜熱
冷たい水からも熱が出る
過冷却した水へ氷を触れさせると、白っぽい結晶が一気に広がることがあります。ここで起きるのは、氷の並びへの変化に伴う熱の放出です。水と氷の間で状態が変わるときに出入りする熱を、凝固や融解の潜熱と呼びます。水が凍る向きでは熱を放出し、氷が溶ける向きでは周囲から熱を受け取ります。
普段、水を冷やすと温度が下がるので、「熱が逃げる量と温度の下がり方は同じ」と感じがちです。しかし、状態が変わる途中では、温度があまり変わらないまま熱が移動することがあります。純粋な水と氷が釣り合いながら凍結している間は、熱を外へ逃がしても主に氷の量が増え、水と氷の温度は0度付近に保たれます。
過冷却した水はすでに0度より低いため、凍り始めに放出される熱で残りの水が温められます。外へ逃げる熱が少ない短時間を考えると、液温は凝固点付近へ戻り、それ以上一気に凍るための条件が弱まります。冷たい水が凍ることで温度を上げるのは、この熱の移動で説明できます。
白く広がっても全体は固まっていない
家庭で扱う程度の過冷却では、最初の変化で水の一部が氷になるだけで、氷と水の混合物になりやすくなります。細かな氷が広い範囲に伸びるため、見た目はボトル全体が白くなっても、すべてが硬い氷になったとは限りません。シャーベットのように見えるのは、水の中へ氷の結晶が広がっているためです。
一度に凍る割合は、最初にどれだけ低い温度だったかや、周囲との熱のやり取りで変わります。「刺激が弱かったから固まり切らなかった」と考えて、何度も容器をたたく必要はありません。残った水をさらに凍らせるには、潜熱を外へ逃がす冷却を続ける必要があります。

凍り始めに水温が上がる様子は、温度を測る実験でも確かめられています。ただし、測る位置や道具によって、教科書のようなきれいな変化がいつも得られるとは限りません。家庭では、まず結晶が広がる様子を観察し、温度の記録は道具と測り方を用意できる場合の別の課題にすると進めやすくなります。
家庭実験の道具と準備
容器の冷凍対応を先に確認する
冷凍庫の実験には、水を入れて凍らせる用途に対応した小型のペットボトルを使います。普通の飲料ボトルがすべて冷凍に対応するわけではありません。食品用であることに加え、冷凍できること、入れてよい量、ふたの扱いを説明や表示で確認できるものを選びます。対応が分からなければ、別の容器で無理に代用せず、準備が整ってから行います。
ガラス瓶は水の凍結による膨張で割れるおそれがあるため使いません。缶や冷凍非対応の容器、未開封の炭酸飲料も凍らせないでください。容器をたたく、落とす、強く振る方法は避け、膨らみや亀裂が見えたら実験を中止します。子どもが行う場合は大人が準備と取り扱いを担当してください。
炭酸飲料の凍結による破裂については、東芝ライフスタイルの注意事項にも説明があります。今回の実験で使うのは水だけです。水道水でも過冷却は起こり、高価な水や特殊な試薬は必要ありません。同じ種類の水を使い、実験後は飲食に回さず、料理用の氷とは分けます。
用意するものは、冷凍対応を確認した同じ形のボトルを少数、飲用できる水、タイマー、受け皿、拭き取り用の布、氷の小片、清潔なスプーンです。受け皿は冷凍庫の棚に安定して置ける、低温に対応したものにします。水をこぼして食品や電気部分をぬらさない位置で作業します。
水量と開始温度をそろえる
初回はボトルごとに200〜300mL程度の少量を試すと、扱いと記録がしやすくなります。ただし、これは過冷却を保証する量ではありません。容器の冷凍時の指定量が最優先で、水が膨張するための空間を残します。容量いっぱいに入れたり、容器の指定を超えて密閉したりしないでください。
同じ水を同じ量だけ入れ、いったん冷蔵庫で冷やして開始時の条件をそろえます。室温から冷やす場合も実験はできますが、夏の台所と冬の台所では所要時間が違います。開始時の温度をそろえておけば、次回は冷凍庫へ入れる時間を調整しやすくなります。

冷凍庫は普段の設定で使い、実験のために食品の保存条件を変えないようにします。ボトルは冷気の吹き出し口に押し付けず、他の物にぶつからない位置へ静かに置きます。扉の開閉が多い時間帯を避けると条件をそろえやすくなりますが、冷却中の食品を外へ出して場所を作ることはしません。
冷やす時間を探す手順
予備観察で自宅の条件を知る
家庭の冷凍庫では、「何時間冷やせば必ず過冷却になる」という共通の時間はありません。ボトルの形、水量、開始時の水温、棚の位置、庫内の食品の量などで変わります。いきなり本番の動画を撮ろうとせず、最初の一回は水がいつ頃凍り始めるかを調べる予備観察にします。

- 同じ形のボトルに、同じ種類・量の水を入れ、ふたは冷凍時の使用説明に従って扱います。
- 冷蔵庫で開始条件をそろえたら、冷凍庫の安定した受け皿へ静かに置き、時刻を記録します。
- 初回は30〜60分程度から短く様子を見て、側面や水面に氷がないか、できるだけ動かさず確認します。
- 氷が見えない場合は、その後15〜20分程度ごとを目安に確認し、毎回時刻を残します。
- 氷が見え始めたら予備観察を終え、その時間と、どこに氷があったかを書きます。
この間隔も目安で、水量が少ない場合などは早く凍ることがあります。扉を長く開けず、液体か確かめるために何度もボトルを揺らさないようにします。タイマーを使い、寝る前や外出前には始めません。凍結するまで必ず見張るという意味ではなく、予定した観察時間内で終え、放置しないための準備です。
氷の小片を加えて変化を見る
次の試行では、同じ条件で冷やし、予備観察で氷が見えた時刻より少し前に取り出して試します。初回から複数を用意する場合も、一度にすべて動かさず、試すボトルを一つ決めます。隣のボトルの結果が同じになるとは限らないため、一本ずつ記録します。
- 受け皿、スプーン、氷の小片を先に並べ、手元を片付けます。
- 水面や側面に氷が見えないボトルを、傾けたりぶつけたりせず静かに取り出します。
- 安定した受け皿へ置き、ふたをゆっくり開けます。開ける途中で凍った場合も、そのまま観察します。
- スプーンで小さな氷のかけらを水面へ入れ、触れた場所から結晶が広がるかを見ます。
- 変化の始まった位置、広がり方、液体が残る様子を記録して終了します。
氷を入れた周囲から白い結晶が急に増えれば、過冷却していた水が凍り始めたと考えられます。氷の小片だけが溶ける場合は、まだ十分に冷えていなかった可能性があります。変化しないからと道具で水をかき回したり、ボトルを強く押したりせず、その回は結果を記録して終えます。
取り出しただけで凍った場合は、取り扱いによって凍結が始まった観察になります。「氷を入れる瞬間を撮れなかった」として失敗扱いにする必要はありません。反対に、水が冷凍庫の中ですでに凍り始めていたなら、その回は過冷却が解ける瞬間を見たことにはなりません。見えた変化と、見ていない過程を分けてメモします。










