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自然・サイエンス

鉄がさびるしくみ|赤さびと黒さびの違い、塩や湿気で進む理由と防ぎ方

鉄はなぜさびるのかを、酸素と水が関わる電気化学のしくみから説明し、赤さびと黒さびの違い、塩や湿気でさびが早く進む理由、ステンレスやトタン・ブリキのさびにくさの違い、鉄のフライパンや包丁、工具のさびを防ぐ手入れ、軽いさびの落とし方と注意点までをまとめました。

赤さびの浮いたスパナとくぎ、水滴

しばらく使わなかった包丁に茶色い点が浮いていたり、ベランダの手すりの塗装の下からさびがにじんでいたり。鉄のさびは、身近にある化学変化のなかでもいちばん目にするものの一つです。けれども、なぜ水に濡れるとさびるのか、なぜ海の近くだと早くさびるのかを説明しようとすると、意外と難しいものです。

さびは、鉄が酸素や水と反応して、もとの安定した形に戻ろうとする現象です。仕組みが分かると、道具をさびさせないための手入れにも、それぞれ理由があることが見えてきます。ここでは、さびの正体と化学のしくみ、赤さびと黒さびの違い、さびが早く進む条件、ステンレスやメッキがさびにくい理由、暮らしの道具のさびを防ぐ手入れ、軽いさびの落とし方、家でできる観察の実験までを順に紹介します。

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さびの正体は「鉄がもとの姿に戻ろうとする」変化

自然の中では、鉄はほとんどの場合、金属の状態ではなく、酸素などと結びついた鉄鉱石として存在しています。鉄鉱石の主な成分は、鉄と酸素が結びついた酸化鉄です。製鉄所では、この鉄鉱石を高温で処理して酸素を取り除き、金属の鉄を取り出しています。

つまり、私たちが使っている金属の鉄は、大きなエネルギーをかけて、酸素から無理に引き離した状態にあります。そのため、空気中の酸素と水に触れていると、少しずつ酸素と結びついて、もとの酸化鉄に近い状態へ戻ろうとします。これがさびです。

金属にはさびやすいものとさびにくいものがあり、金や白金のようにほとんどさびないものもあります。鉄は、その中でもさびやすい部類に入ります。一方で、強くて加工しやすく、たくさん作れるという長所があるため、さびと付き合いながら、建物から台所道具まで幅広く使われています。

酸素だけ、水だけではさびにくい

鉄がさびるには、酸素と水の両方が必要です。よく乾いた空気の中では、鉄はほとんどさびません。また、空気を抜いた水の中に鉄を沈めても、さびはゆっくりとしか進みません。酸素と水が同時にそろったときに、さびは目に見える速さで進みます。

このことは、鉄の道具を守るための基本にもつながります。道具の表面を乾かしておく、油で覆って水と酸素を近づけない、という手入れは、どちらもさびに必要な条件の片方、または両方を断つための工夫です。

「酸化」「腐食」「さび」の言葉の違い

さびの話には、似た言葉がいくつか出てきます。酸化は、物質が酸素と結びつく(化学的には電子を失う)変化全般を指す広い言葉で、金属に限らず、りんごの切り口が茶色くなる変化なども含みます。腐食は、金属が周りの環境と反応して、表面から傷んでいくことを指します。そしてさびは、腐食によって金属の表面にできた生成物、つまり赤茶色の粉や膜そのものを指すことが多い言葉です。

日常では区別せずに使われることも多いですが、「鉄が酸化して、腐食が進み、さびができる」と整理しておくと、説明書や解説を読むときに意味がとらえやすくなります。

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化学のしくみ:表面に小さな電池ができる

鉄のさびは、ただ酸素がくっつくだけの反応ではなく、鉄の表面で小さな電池のような仕組みが働くことで進みます。これを電気化学的な腐食と呼びます。

鉄の表面が水の膜で覆われると、場所によって少しずつ条件が違うため、二つの役割に分かれた部分ができます。

  1. 鉄が溶け出す部分(アノード): 鉄が電子を手放して、鉄のイオンになって水に溶け出します。
  2. 酸素が電子を受け取る部分(カソード): 鉄から流れてきた電子を、水に溶けた酸素が受け取り、水と反応して水酸化物イオンになります。
  3. さびができる: 溶け出した鉄のイオンと水酸化物イオンが結びつき、さらに酸素と反応して、赤茶色のさびになります。
さびが進む流れ(1. 水の膜ができる、2. 鉄が溶け出す、3. 酸素が電子を受け取る、4. さびができる)
水の膜の中で、小さな電池が働く。

このとき、電子は鉄の中を流れ、イオンは水の中を移動しています。電池と同じように、電気が流れる道がないと反応は進みません。水の膜は、イオンが移動するための通り道の役割を果たしています。

水滴の真ん中がさびやすい理由

鉄板の上に水滴を置いておくと、水滴の真ん中あたりからさびが出て、ふちの部分にはさびが出にくいことが知られています。これは、空気に近い水滴のふちには酸素が多く溶け込み、真ん中は酸素が少なくなるためです。酸素が少ない真ん中が鉄の溶け出す部分になり、酸素が多いふちが電子を受け取る部分になります。

この性質から、鉄の部品のすき間や、ほこりや汚れの下など、酸素が届きにくい場所では、かえってさびが深く進むことがあります。表面の汚れを落としておくことは、見た目だけでなく、さびの進み方にも関わっています。

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