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歴史・文化

寺の宗派と本尊の見方|天台・真言から禅・浄土・日蓮まで、境内で宗派を読み取る手がかり

寺の名前と寺紋

寺の正式な名前は、「〇〇山 〇〇院 〇〇寺」のように、山号・院号・寺号の三つからなることが多いです。山号は、寺が山の中に建てられていた名残といわれ、平地の寺にも付けられるようになりました。名前だけで宗派を決めることはできませんが、本山の名前と同じ山号を持つ寺は、その本山と縁が深い場合があります。

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寺の屋根の瓦や幕、提灯などに描かれた紋(寺紋)も手がかりになります。宗派や本山で用いる紋があり、たとえば浄土真宗本願寺派では下がり藤の紋が知られています。ただし、寺独自の紋や、寺を支えた家の紋を使っている例もあるので、紋だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。紋の見方については、家紋の見方入門も参考になります。

建築の様式から見る

鎌倉時代に禅宗とともに中国から伝わった建築の様式を「禅宗様(ぜんしゅうよう)」と呼びます。上部がとがった花のような形の窓(花頭窓)や、放射状に広がる垂木(扇垂木)などが特徴です。一方、日本で古くから続く様式は「和様」と呼ばれ、落ち着いた直線的な構えが特徴です。禅宗様の要素が見られれば、禅宗の寺か、その影響を受けた建物である可能性があります。ただし、時代が下るにつれて様式は混ざり合っていくので、あくまで目安として見てください。

境内で見るところ(門柱や案内板の宗派名、石碑や額に書かれた言葉、法堂・大師堂・祖師堂などの名前、瓦や幕に描かれた紋、窓や垂木などの建築の形、縁起を記した掲示)
いくつか組み合わせて手がかりにする。

本堂の中の並びを読む

本堂に上がって内部を拝観できる寺では、本尊の左右や周りに並ぶ仏さまにも目を向けてみてください。本尊と脇侍の組み合わせには決まった型があり、それが分かると、どの仏さまが本尊なのかを推し量る手がかりにもなります。

三尊の組み合わせ

本尊を中央に、左右に一体ずつ脇侍を置く形を「三尊(さんぞん)」と呼びます。よく見られるのは、次のような組み合わせです。

  1. 阿弥陀三尊:阿弥陀如来を中央に、観音菩薩と勢至菩薩を左右に置きます。浄土系の寺でよく見られます。
  2. 釈迦三尊:釈迦如来を中央に、文殊菩薩と普賢菩薩を左右に置く形がよく知られています。禅系の寺で多く見られます。
  3. 薬師三尊:薬師如来を中央に、日光菩薩と月光菩薩を左右に置きます。奈良の古い寺や天台宗の寺などで見られます。

左右の脇侍が分かれば、中央の仏さまの見当がつきます。たとえば、頭に小さな仏さまを付けた観音菩薩が脇に立っていれば、中央は阿弥陀如来である可能性が高いでしょう。

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本尊の周りにあるもの

本尊の周りには、ほかにも宗派らしさが表れるものがあります。真言宗の寺では、本堂の左右の壁に、密教の世界を図で表した二つの曼荼羅(両界曼荼羅)が掛けられていることがあります。浄土真宗の寺では、中央の阿弥陀如来の左右に、親鸞や、宗派の歴史に関わる僧の絵像が掛けられている形がよく見られます。禅宗の寺では、本尊の脇に、禅を中国に伝えたとされる達磨(だるま)の像や、寺を開いた僧の像が置かれていることがあります。

寺の格を表す呼び名

案内板には、「総本山」「大本山」「本山」「末寺」といった言葉が出てくることもあります。総本山や大本山は、その宗派や派の中心となる寺で、末寺はその下に属する各地の寺を指します。呼び方や位置づけは宗派ごとに違いますが、地域の小さな寺も、多くはどこかの本山とつながっています。案内板に本山の名前が書かれていれば、その寺がどの流れに属しているのかが分かります。

本尊を拝むときに知っておきたいこと

本尊は寺にとっていちばん大切な存在なので、拝観のしかたにもいくつかの約束ごとがあります。知っておくと、戸惑わずに落ち着いて拝むことができます。

内陣と外陣

本堂の内部は、本尊が祀られている奥の「内陣(ないじん)」と、参拝者が座る手前の「外陣(げじん)」に分かれていることが多いです。内陣は僧が法要を行う場所なので、一般の参拝者は入れないのが普通です。外陣から静かに手を合わせ、内陣の柵や段差を越えないようにしましょう。

秘仏とお前立ち

寺によっては、本尊を「秘仏」として、ふだんは厨子(ずし)と呼ばれる扉付きの入れ物の中に納め、扉を閉じています。数年、数十年に一度だけ扉を開く「開帳」のときに、ようやく拝むことができる寺もあります。秘仏の前には、本尊の姿を写した「お前立ち」と呼ばれる像が置かれていることがあり、ふだんはこちらを拝む形になります。

開帳の時期は寺ごとに決まっていて、事前に告知されることが多いので、見たい本尊がある場合は寺の公式の案内で確かめてみてください。

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撮影と拝み方

本堂の内部や本尊の撮影は、禁止されていることが多くあります。撮影してよいかどうかは掲示に従い、表示がない場合も、本尊に向けてカメラを構える前に受付で確かめると安心です。境内での撮影の考え方は、観光地での写真マナーでも紹介しています。

拝み方は、合掌して一礼するのが一般的です。唱える言葉や焼香の回数は宗派によって違いがありますが、観光や拝観で訪れるときに、無理に作法を合わせる必要はありません。参拝の基本は、神社とお寺の参拝の基本にまとめています。

宗派を知ると楽しくなるお寺めぐり

宗派の違いが少し分かってくると、お寺めぐりに新しい楽しみ方が加わります。ここでは、一歩進んだ見方をいくつか紹介します。

同じ宗派の寺を続けて訪ねる

同じ宗派の寺を何か所か訪ねてみると、建物の並びや本堂の雰囲気に共通点があることに気づきます。たとえば禅宗の寺を続けて歩くと、三門から法堂へと続く一直線の配置や、方丈の前の庭の造りが似ていることが分かってきます。禅宗の寺の庭については、日本庭園の見方も合わせて読むと、さらに見どころが増えるでしょう。

違う宗派を比べてみる

反対に、浄土系の寺と禅系の寺を同じ日に訪ねてみると、違いがはっきり感じられます。浄土系の寺では、阿弥陀如来を中心に、極楽浄土を思わせるきらびやかな内陣が見られることがあります。禅系の寺は、全体に簡素で落ち着いた雰囲気のところが多いです。どちらがよいということではなく、教えの違いが空間にも表れている、と考えると見え方が変わります。

浄土系と禅系の寺の雰囲気(浄土系と禅系の比較)
教えの違いが空間にも表れる。

御朱印から見える宗派の違い

御朱印の授与のしかたにも、宗派による違いが見られます。たとえば浄土真宗では、教えの考え方から、御朱印を授与していない寺が多いとされています。御朱印をいただけないことがあっても、それは寺の考え方によるものなので、無理にお願いせず、参拝そのものを大切にしましょう。御朱印の基本は、御朱印のいただき方で紹介しています。

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よくある勘違い

最後に、宗派について入門者が抱きやすい勘違いをいくつか挙げておきます。

  • 「大きな仏像がある寺はすべて同じ宗派」ではありません。大仏は宗派を問わず各地に作られています。
  • 「お地蔵さんが多い寺は地蔵菩薩が本尊」とは限りません。境内の石仏と本尊は別のことが多いです。
  • 「観光で有名な寺は宗派と関係がない」わけではありません。多くの寺は今も宗派に属し、法要が営まれています。

宗派や寺の歴史には、地域や寺ごとに異なる伝承があります。この記事は一般的な傾向をまとめたもので、個々の寺の本尊や由緒は、その寺の案内や公式の情報を確かめてください。

まとめ

宗派は、仏教の中で大切にする経典や修行の形の違いから生まれたまとまりで、本尊は寺やお堂の中心に祀られる仏さまです。浄土系なら阿弥陀如来、禅系なら釈迦如来が多いといった傾向はありますが、天台宗や真言宗のように寺ごとに本尊が違う宗派もあり、宗派はあくまで手がかりの一つです。

次にお寺を訪ねたら、まず門柱や案内板で宗派名を探し、本堂の本尊が何かを確かめてみてください。そのうえで、石碑に刻まれた言葉や、お堂の名前を一つだけでも見てみると、表で整理した内容が実際の寺と結びついていきます。一つの寺で「宗派」と「本尊」の二つを言えるようになることが、お寺めぐりを深める最初の一歩です。

よくある質問

宗派が分かれば、その寺の本尊も分かりますか?

おおよその傾向は分かりますが、決まりきったものではありません。浄土宗や浄土真宗では阿弥陀如来が中心ですが、真言宗や天台宗、臨済宗では、寺の成り立ちによって薬師如来や観音菩薩、不動明王など本尊がさまざまです。確かめたいときは、寺の案内板や公式の案内を見るのが確実です。

寺の宗派はどこで確かめられますか?

山門や本堂の近くの案内板、寺の縁起を記した掲示、受付で配られる案内、寺の公式サイトなどに書かれていることが多いです。門柱に宗派名が刻まれていることもあります。見当たらないときは、受付で尋ねても失礼にはあたりません。

本尊が見られない寺があるのはなぜですか?

本尊が秘仏とされ、厨子の扉が閉じられている寺があるためです。数年から数十年に一度の開帳のときだけ拝めることもあります。代わりに、本尊の姿を写した「お前立ち」という像が前に置かれている場合もあります。

宗派によって拝み方は変わりますか?

寺では一般に合掌して一礼しますが、唱える言葉や焼香の作法などは宗派によって違いがあります。観光や拝観で訪れるときは、静かに合掌するだけでも問題ありません。法要に参列するときは、その寺や家の作法に合わせるのが安心です。

同じ宗派なのに名前が違うのはなぜですか?

一つの宗派の中にも、歴史の中で分かれた派があり、それぞれに本山があるためです。たとえば臨済宗や真言宗には、本山の名前を冠した多くの派があります。案内板に「〇〇宗〇〇派」と書かれていれば、後ろの部分が属する派を表しています。

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