災害用トイレの備え|流してよいかの判断、必要な枚数、携帯トイレの使い方と保管
携帯トイレと簡易トイレの違い
災害用のトイレには、似た名前のものがいくつもあります。呼び方は資料によって少し違いますが、家庭で備えるものは大きく次のように分けられます。
| 種類 | 形 | 使う場所 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 携帯トイレ | 袋と凝固剤、または吸水シート | 自宅の便器、車の中 | 家庭の備えの中心 |
| 簡易トイレ | 組み立て式の便座に袋をセット | 便器が使えない部屋 | 便器が倒れた、浸水した家 |
| ポータブルトイレ | いす型の据え置き | 寝室など | 足腰の弱い人 |
| 仮設トイレ | 屋外に設置された個室 | 避難所、公園 | 自治体が用意するもの |
家庭で備えるなら、まず携帯トイレです。ふだん使っている便器をそのまま便座として使えるので、体が慣れていて、個室も確保できます。トイレ室が壊れた場合や、家の外で過ごす場合に備えて、組み立て式の簡易トイレを1台足すと、幅が広がります。
固める方式の違い
携帯トイレには、主に二つの方式があります。
- 凝固剤タイプ: 用を足したあと、粉を振りかけて固めます。袋が別なので、粉の量を調整しやすい一方で、粉をこぼさない注意がいります。
- シートタイプ: 袋の中に吸水シートが入っていて、すぐ吸い込みます。手順が少なく、暗い中や子どもでも使いやすい方式です。
どちらがよいかは好みによりますが、大事なのは、固める力の表示を見ることです。吸収できる量の目安がミリリットルで書かれている製品なら、1回の尿量より余裕があるか確かめます。

何枚必要かを計算する
必要数の基本の式は、次のとおりです。
1人1日5回 × 人数 × 日数
神奈川県や名古屋市など多くの自治体が、1人1日5回を目安としています。日数は「最低3日、できれば7日」とする案内が多く見られます。大きな災害では下水道の復旧に時間がかかることがあるので、余裕があるなら7日分を目指します。
| 家族の人数 | 3日分 | 7日分 |
|---|---|---|
| 1人 | 15回 | 35回 |
| 2人 | 30回 | 70回 |
| 3人 | 45回 | 105回 |
| 4人 | 60回 | 140回 |
| 5人 | 75回 | 175回 |
自宅の事情で増やす
5回は成人の平均に基づく目安で、実際の回数には個人差があります。ある日に家族がトイレへ行った回数を数えてみると、自分の家の数字が分かります。
- 高齢の家族や、夜間によく起きる人がいるなら、回数を多めに見る
- 利尿作用のある薬を飲んでいる人や、妊娠中の人も、回数が増えやすい
- 小さな子どもは、おむつや補助便座も含めて別に考える
- 冬は寒さで尿の回数が増えやすい
小便の数回分を1袋にまとめれば、数は節約できます。ただし、袋が重くなると破れやすくなるので、製品の説明に書かれた吸収量を超えないようにします。
一度にそろえなくてもよい
4人家族の140回分と聞くと、大きな買い物に見えるかもしれません。一度にそろえる必要はありません。まず3日分をそろえて、次の機会に7日分まで増やせば十分です。製品によって1袋あたりの量はかなり違うので、「50回分」と書かれた箱なら、必要な箱の数も計算しやすくなります。
凝固剤や吸水シートには、使用期限や保存年数の目安が書かれていることがあります。買った日と期限を箱に書いておくと、点検の手間が省けます。
便器で使う手順
携帯トイレの使い方はシンプルですが、一度も試していないと、停電の暗い中で戸惑います。ここでは、凝固剤タイプを便器に取り付ける手順を説明します。製品ごとに説明書があるので、それも読んでおきます。

準備するもの
- 携帯トイレ(袋と凝固剤、またはシート付きの袋)
- 大きめのポリ袋(45リットル程度。便器全体を覆える大きさ)
- トイレットペーパー
- 使い捨て手袋、ウェットティッシュ、手指消毒用の品
- においを通しにくい袋、ふた付きの保管容器
- 手が空く明かり
手順
- 便座を上げ、便器全体に大きなポリ袋をかぶせる
- 便座を下ろし、ポリ袋の上から固定する
- 便座の上に携帯トイレの袋をかぶせる
- 用を足す。トイレットペーパーも同じ袋に入れる
- 凝固剤を振りかけ、シートタイプなら少し待つ
- 袋の中の空気を抜いて、口をきつく縛る
- 外側に、においを通しにくい袋をもう一枚重ねて保管する

大きなポリ袋を先に敷くのは、便器に残った水が袋に触れて、上の袋がぬれたり汚れたりするのを防ぐためです。下の袋は交換せず、上の袋だけを1回ごとに替えます。便器の水を抜く必要はありません。
よくある失敗
- 袋を敷かずに携帯トイレだけをかける: 便器の水に触れて、外側がぬれます。
- 用を足す前に凝固剤を入れる: 製品によって順番が違います。説明書どおりにします。
- 袋を二重に縛らない: 1枚では、時間がたつとにおいが漏れてきます。
- 袋を便器の中へ落とす: 便器の中に落ちると、回収が面倒です。流してはいけません。
- 手を洗えず、そのまま食事をする: 水が使えないときこそ、手の衛生は最初に確保します。
家族で一度試す
いちばん効果がある準備は、平時に一度使ってみることです。夜に照明を消して、手元の明かりだけで袋をセットしてみると、足りないものが見つかります。便器の形によっては、袋を固定するのに洗濯ばさみやテープが便利なこともあります。
使ってみるのに抵抗があるなら、尿のかわりに水を使って固まり方を確かめるだけでも、感触が分かります。練習で使った分は、自治体のふだんの出し方に従って処分します。
においと保管の工夫
携帯トイレの使い始めより、数日後の保管で困る家庭が多いかもしれません。1週間で出る量を考えてみると、大人1人の1日の尿量はおよそ1〜1.5リットルなので、4人家族なら1週間で30〜40リットルほどになります。重さにすると30〜40キログラムほどで、これが袋に分かれて家のどこかに置かれることになります。
におい対策
- 袋は小さく空気を抜いてから縛る
- においを通しにくい袋を外側に使う
- ふた付きの大きな容器に入れる
- 容器の底に新聞紙を敷き、万一の漏れを受ける
- 消臭スプレーや重曹を補助に使う
置く場所
置き場所は、風通しがよく、雨と直射日光を避けられるところが基本です。ベランダや庭の物置、軒下などが候補ですが、夏の高温の場所では、袋が膨らんだり傷んだりすることもあります。マンションのベランダは避難経路になる場合があり、仕切り板の前をふさいではいけません。廊下や階段などの共用部にも置かないようにします。
ごみに出してよいかは、自治体の案内に従います。災害時は収集の仕方が変わることがあるので、出す時期や分別は、自治体の防災情報を確認してください。










