鉄がさびるしくみ|赤さびと黒さびの違い、塩や湿気で進む理由と防ぎ方
ステンレスとメッキがさびにくい理由
さびにくい金属の代表がステンレスです。また、鉄の表面をほかの金属で覆うメッキも、さびを防ぐ方法として広く使われています。それぞれ、さびを防ぐ仕組みが違います。
ステンレスは自分で膜を作る
ステンレスは、鉄にクロムなどを混ぜた合金です。クロムは空気中の酸素と結びついて、表面にごく薄く透明な膜(不動態皮膜)を作ります。この膜が鉄を水や酸素から守るため、ステンレスはさびにくくなっています。膜が傷ついても、周りに酸素があれば、また自然に膜ができ直すのが大きな特徴です。
ただし、ステンレスもまったくさびないわけではありません。次のような場合には、さびが出ることがあります。
- もらいさび: 鉄の粉や、さびた鉄の缶などが表面に付いたままになると、付いた鉄のほうがさびて、ステンレスの表面にさびが広がったように見えます。
- 塩分が長く残る: 塩分を含む汚れが付いたままになると、膜が部分的に壊れて、小さな穴のようなさびが出ることがあります。
- 酸素が届かないすき間: 部品の合わせ目や、汚れの下など、酸素が届きにくい場所では、膜が作り直されにくくなります。
ステンレスのシンクや鍋にさびのような点が出たときは、多くはもらいさびです。研磨剤の粗いもので強くこすると表面を傷めるので、まずはやわらかいスポンジで洗い、よく乾かして様子を見ましょう。
トタンとブリキの違い
鉄板にメッキをしたものとして身近なのが、トタンとブリキです。どちらも鉄をほかの金属で覆っていますが、守り方が違います。
| 名前 | メッキの金属 | 守り方 | 傷がついたとき |
|---|---|---|---|
| トタン | 亜鉛 | 亜鉛が先に溶けて鉄を守る | 傷の周りの亜鉛が身代わりになり、鉄がさびにくい |
| ブリキ | スズ | スズの膜で鉄を覆って守る | 傷から鉄が出ると、かえって鉄のさびが早まることがある |
トタンに使われる亜鉛は、鉄よりも溶け出しやすい性質があります。そのため、メッキに傷がついて鉄が出ても、周りの亜鉛が先に溶けて電子を送り、鉄が溶け出すのを防ぎます。このような守り方を犠牲防食と呼びます。屋根や外壁など、雨風にさらされる場所にトタンが使われてきたのはこのためです。なお、亜鉛も時間がたつと白っぽいさび(白さび)が出ることがあります。
ブリキに使われるスズは、鉄よりも溶け出しにくい金属です。膜が無傷のうちは鉄をよく守りますが、傷がついて鉄が出ると、先ほどの異種金属接触腐食のように、鉄のほうが先に溶け出してしまいます。缶詰の内側など、傷がつきにくく、見た目のきれいさが求められる場所に使われてきました。
暮らしの道具のさびを防ぐ手入れ
さびを防ぐ手入れは、どれも「水と酸素を近づけない」「さびを早める汚れを残さない」の二つにまとめられます。道具ごとの具体的な方法を紹介します。


鉄のフライパン・中華鍋
鉄のフライパンは、表面に油がなじんだ膜ができることで、さびにくく、焦げつきにくくなります。
- 使ったら、温かいうちにお湯とたわしで汚れを落とします。洗剤の使い方は、製品の説明に従います。
- 洗ったら、すぐに火にかけて水分を飛ばします。ふきんでふくだけより、加熱して乾かすほうが、すき間の水分まで飛ばせます。
- 火を止め、熱いうちに薄く油をなじませます。キッチンペーパーで全体に広げ、余分な油はふき取ります。やけどをしないよう、持ち手やペーパーの扱いに注意します。
長く使わないときは、油を薄く塗ってから、湿気の少ない場所にしまいます。
鋼の包丁
鋼(はがね)の包丁は、よく切れる反面、ステンレスの包丁よりさびやすい性質があります。使ったらすぐに洗い、乾いたふきんで水気をしっかりふき取ります。特に、刃と柄の境目は水がたまりやすいので注意します。長く使わないときは、刃に薄く油を塗り、新聞紙などで包んで保管する方法が知られています。
工具・園芸用品
工具や園芸用のはさみは、使ったあとに土や汚れを落とし、乾いた布でふいてから、薄く油を塗っておきます。工具箱や物置には、乾燥剤を入れておくと湿気を減らせます。素手で触ったあとの汗も、さびの原因になります。
革や布との組み合わせ
鉄の金具が付いた革製品や、布に包んだ刃物は、革や布が湿気を含むと、金具や刃がさびやすくなります。湿ったまましまわず、よく乾かしてから保管します。革靴の手入れについては、革靴の手入れの基本も参考になります。
軽いさびの落とし方と注意点
表面に出たばかりの軽いさびなら、家庭でも落とせることがあります。さびが深く進んでいる場合や、大切な道具の場合は、専門の店に相談するのが安心です。
- まず汚れを落とす: 油汚れやほこりを落としてから、さびの範囲を確かめます。
- やさしい方法から試す: 消しゴムのような形のさび取り用の研磨材や、目の細かい研磨スポンジで、軽くこすります。こすりすぎると素材を傷めるので、さびの部分だけを少しずつ落とします。
- 細かいくずを取り除く: 落ちたさびの粉や研磨くずを、乾いた布でふき取ります。
- すぐに保護する: さびを落とした面は、むき出しの鉄でさびやすくなっているので、油を薄く塗るか、用途に合った方法で保護します。
さび取り剤には、酸性の成分を含むものが多くあります。手袋を着け、換気をしながら、製品の表示に従って使ってください。塩素系の漂白剤や洗剤と一緒に使ったり、混ぜたりすると、有毒なガスが発生するおそれがあるので、絶対に混ぜないでください。また、調理器具には、調理器具に使えると表示されたものだけを使いましょう。
刃物の刃先や、精密な工具、骨董品などは、こすり方によっては形や価値を損ねることがあります。研ぎ直しや修理が必要なものは、刃物店や修理の専門店に任せるほうが確実です。
また、自転車のブレーキやチェーン、車の下回り、ベランダの手すりや階段など、安全に関わる部分のさびは、見た目以上に強度が落ちていることがあります。こうした場所は、自分で判断せず、販売店や専門の業者に点検を依頼しましょう。
家でできる、さびの観察実験
さびの条件は、家にあるもので確かめることができます。小学校の理科でも行われる、くぎを使った観察です。
- 鉄のくぎ(さび止めの加工がされていないもの)を4本用意し、表面の油を洗剤で洗って乾かします。
- 透明なコップを4つ用意し、それぞれに次の条件を作ります。
- A:何も入れない(空気だけ)
- B:水道水にくぎの半分ほどを沈める
- C:食塩を溶かした水にくぎの半分ほどを沈める
- D:一度沸かして冷ました水に沈め、表面を食用油の薄い層で覆う
- コップにくぎを入れ、毎日同じ時間に様子を観察し、写真やメモで記録します。
数日たつと、塩水に入れたCのくぎがいちばん早くさび、水道水のBがそれに続くことが多いでしょう。空気だけのAや、酸素が少なく油で空気をさえぎったDは、さびにくいはずです。BやCでは、水面のあたりにさびが集まるかどうかにも注目すると、酸素と水の両方がそろった場所でさびが進むことがよく分かります。
観察が終わったら、くぎとさびの出た水は、自治体のルールに従って片付けます。
まとめ
鉄のさびは、金属の鉄が酸素と水に触れて、もとの酸化鉄に近い姿へ戻ろうとする変化です。鉄の表面にできた水の膜の中で、小さな電池のような反応が起き、赤さびがふくらんではがれながら内側へ進んでいきます。一方、緻密な黒さびは表面を覆って鉄を守り、ステンレスは自分で作る薄い膜、トタンは亜鉛の身代わりによって、それぞれさびを防いでいます。
さびを防ぐ手入れは、汚れや塩分を落とし、水気を取り、必要なら油で覆うことに尽きます。まずは今日、台所の包丁や鉄のフライパンを使ったあとに、水気をふき取るだけでなく、刃と柄の境目まで乾かしてみてください。それだけでも、さびの出方は大きく変わってきます。
よくある質問
乾いた部屋に置いていても鉄がさびるのはなぜですか?
空気中にはいつも水蒸気が含まれていて、湿度が高い日や温度が下がった夜には、鉄の表面に目に見えないほど薄い水の膜ができることがあります。手で触ったあとの汗や皮脂、ほこりに含まれる塩分も水分を引き寄せるので、見た目に乾いていてもさびが進むことがあります。
黒さびは落とさなくてもよいのですか?
黒さびは赤さびより緻密で、表面を覆ってさびの進み方を遅くする働きがあるため、鉄器や工具の表面にわざと作る場合もあります。ただし黒っぽく見えても、汚れや焦げ、赤さびが混じっていることもあります。調理道具などは、メーカーの説明に沿った手入れをするのが確実です。
ステンレスなのにさびが出ました。不良品ですか?
ステンレスは表面の薄い膜でさびにくくなっていますが、まったくさびないわけではありません。鉄の粉が付いたり、塩分の多い汚れが長く残ったりすると、膜が傷んでさびが出ることがあります。多くは表面のもらいさびなので、やわらかいスポンジで洗って乾かすと落ちる場合があります。
さび取り剤を使うときに気をつけることは?
さび取り剤には酸性のものが多く、皮膚や目を傷めたり、素材を傷めたりすることがあります。製品の表示をよく読み、手袋を着けて換気をしながら使ってください。塩素系の洗剤や漂白剤と一緒に使ったり混ぜたりすると有毒なガスが出るおそれがあるので、絶対に混ぜないでください。
自転車や車、家の鉄部のさびは自分で直せますか?
表面の軽いさびを落として油や塗料で保護する程度なら、自分でできる場合もあります。ただし、ブレーキやチェーン、車の下回り、手すりや階段など、安全に関わる部分のさびは強度が落ちていることがあります。こうした場所は、販売店や専門の業者に点検してもらうのが安全です。










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