はんだの種類とフラックス|共晶・鉛フリー・ヤニ入りの違いと、線の太さ・フラックスの選び方
「なじむ」とは何か、なじまない原因
ぬれ広がりを見る
はんだ付けの解説でよく出てくる「なじむ」という言葉は、溶けたはんだが金属の表面に薄く広がり、境目がなだらかにつながる状態を指します。専門的には「ぬれ」と呼ばれます。
なじんだ接合は、横から見ると、部品の足に沿って裾が広がった富士山のような形になります。反対に、なじんでいない接合は、はんだが丸い玉のように盛り上がり、足やランドとの境目にくぼみや隙間が見えます。見た目が整っていても、境目がはっきり線になっている場合は、表面に乗っているだけで、合金の層ができていない可能性があります。
原因の切り分け
なじまないとき、多くの人はまずはんだを足そうとします。しかし、量を増やしても原因が変わらなければ、玉が大きくなるだけです。次の順番で原因を確かめます。
- 温度は足りているか。こての設定温度、こて先の大きさ、当てる時間を見直します。鉛フリーなら特に、温度不足が多い原因です。
- 部品の足とランドの両方を温めているか。片方だけ温まっていると、温まっていないほうにははんだがなじみません。
- フラックスが残っているか。何度も温め直した接合部では、フラックスが使い切られています。少し足してから温め直します。
- こて先がきれいか。黒く酸化したこて先は熱が伝わりにくく、はんだもこて先に乗りません。
- 金属の表面が汚れていないか。古い部品の足、指で触った線、長く保管した基板は、酸化や油分でなじみにくくなっています。
古い線や部品の足を付けるときは、先に薄くはんだを乗せておく「予備はんだ」が役に立ちます。この作業はリード線とジャンパー線の加工|被覆のむき方・予備はんだ・より線の扱いで詳しく紹介しています。
こて先がはんだを弾くとき
こて先にはんだが乗らず、はじかれてしまう状態は、こて先が酸化している合図です。クリーナーで汚れを落としたあと、すぐに新しいはんだを少し溶かして、こて先全体を銀色に覆います。これを何度かくり返すと、たいていは元に戻ります。
それでも戻らない場合は、こて先の表面のめっきが傷んでいる可能性があります。やすりで削るとめっきがさらに傷むため、こて先用の再生剤を使うか、こて先を交換します。作業を終えるときは、こて先に少しはんだを残したまま電源を切ると、酸化を防ぐことができます。

残ったフラックスの後始末
洗うかどうかは種類で決まる
はんだ付けを終えると、接合部のまわりに茶色や透明の膜が残ります。これはフラックスの残りです。洗い流すかどうかは、使ったフラックスの種類で決まります。
水溶性のフラックスは、残すと腐食の原因になるため、必ず洗浄します。ロジン系は、製品の表示に洗浄が必要と書かれていれば洗い、そうでなければ残しても問題になりにくいとされています。無洗浄タイプは、その名のとおり残すことを前提に作られています。
ただし、見た目をきれいにしたい、残りがべたついてほこりが付く、高い電圧や細かい信号を扱う、といった場合は、洗浄したほうがよいこともあります。
洗浄の手順
ロジン系のフラックスの残りは、一般的にイソプロピルアルコール(IPA)などの溶剤で落とせます。
- 電源と電池を外し、基板が十分に冷えていることを確かめます。
- 換気をよくし、火の気のない場所で作業します。溶剤は燃えやすいので、熱いはんだごてからは離します。
- 歯ブラシ程度のやわらかいブラシに少量の溶剤を含ませ、接合部をやさしくこすります。
- 溶けた残りを、けば立ちにくい布やペーパーで吸い取ります。
- 基板を立てて、溶剤が完全に乾くまで待ってから電源を入れます。
無洗浄タイプのフラックスを中途半端に溶剤でこすると、残りが白っぽく広がって、かえって目立つことがあります。洗うなら全体をしっかり洗い、そうでなければ触らずに残しておくほうがきれいに見えることもあります。
溶剤が使えない部品(一部のスイッチ、可変抵抗、マイクなど)もあるので、部品の説明書きを確かめてから作業してください。
煙と手の汚れへの備え
はんだ付けで出る煙の多くは、フラックスが熱で気化したものです。ロジン系のフラックスの煙は、吸い込み続けると、喉や気管を刺激したり、体質によってはぜんそくのような症状につながったりすることが知られています。鉛フリーのはんだでも、フラックスの煙は出ます。
窓を開けて空気の流れを作るか、吸煙器を使って、煙が顔の前に来ないようにしましょう。作業台では飲食をせず、作業のあとは石けんで手を洗います。症状が続く場合は、作業を中断して医師に相談してください。
はんだやフラックスの安全な扱いは、製品ごとの説明書きや安全データシートに記されています。新しい材料を使い始めるときは、一度目を通しておくと安心です。
保管と買い足しの判断
はんだとフラックスの保管
糸はんだは、湿気の少ない場所で、リールごと袋や箱に入れて保管します。表面が少しくすんでも、たいていは問題なく使えますが、黒っぽく変色している、表面に粉のようなものが出ている場合は、新しいものに替えたほうが作業が楽です。
液体のフラックスは、ふたを開けたままにすると溶剤が飛んで濃くなります。使ったらすぐにふたを閉め、直射日光の当たらない涼しい場所に置きます。ペースト状のものも、乾くと使いにくくなるので、ふたをしっかり閉めて保管してください。
ペン型のフラックスは、先が乾くと出なくなります。使わないときはキャップを閉め、先を下に向けて保管するよう書かれた製品もあるので、説明書きに従ってください。
道具をそろえる順番
はんだまわりの道具は、一度にそろえる必要はありません。作るものが変わったときに、困ったことを一つずつ解決していくのが無駄のない買い方です。
- 最初の1本:電子工作用のヤニ入り糸はんだ(0.6〜0.8mm)
- 付け直しが増えたら:電子基板用のフラックス(ペンか少量のペースト)と、はんだ吸い取り線
- 細かな部品を扱うようになったら:細い糸はんだ(0.3〜0.5mm)と細いこて先
- 太い線や大きな端子を扱うなら:太めの糸はんだと、大きめのこて先
ブレッドボードで組んだ回路を基板に移すような作業では、2番目までそろっていると心強いでしょう。手順はユニバーサル基板への組み替え|ブレッドボードの回路を基板にはんだ付けする手順で紹介しています。
材料を変えたら条件も見直す
はんだの種類を変えると、同じこてでも作業の感覚が変わります。鉛入りから鉛フリーに変えたら、こての温度を上げる、当てる時間を少し長くする、フラックスを足すなど、条件を一つずつ見直します。一度に全部を変えると、何が効いたのか分からなくなるので、練習用の基板で一つずつ試すのがおすすめです。
まとめ
はんだは、すずを中心にした合金で、混ぜる金属の割合によって溶ける温度や仕上がりが変わります。鉛入りの共晶はんだは低い温度で一気に溶けて固まり、扱いやすいのが特徴です。鉛フリーは温度を高めにする必要があり、つやが控えめでも、なだらかに広がっていれば問題ありません。
糸はんだの太さは、一度に溶け出す量の違いです。最初の1本は0.6〜0.8mm程度が目安で、作業に合わせて細いものや太いものを足していきます。フラックスは酸化膜を取り除き、はんだを広がりやすくする薬剤で、熱で使い切られる性質があります。付け直しのときは少し足し、配管用のものは電子工作に使いません。
最初の一歩として、手元の糸はんだのパッケージを見て、合金の割合と線径、フラックスの種類を確かめてみてください。自分がどんなはんだを使っているかが分かるだけで、うまく付かないときの原因を探しやすくなります。
よくある質問
初めての電子工作には、どのはんだを選べばよいですか?
電子工作用と書かれた、フラックス入り(ヤニ入り)の糸はんだで、太さ0.6〜0.8mm程度のものが扱いやすい目安です。鉛入りか鉛フリーかは、作るものの用途や作業場所の決まりに合わせて選び、どちらか一方で練習を始めます。
共晶はんだとは何ですか?
合金の割合が特定の比率になっていて、ある一つの温度で一気に溶けて固まるはんだのことです。電子工作でよく知られているのは、すずと鉛を約63対37で合わせたもので、溶けてから固まるまでの間がほとんどないため、扱いやすいとされます。
ヤニ入りはんだを使えば、フラックスを別に用意する必要はありませんか?
部品の足を基板に付ける一般的な作業なら、ヤニ入りはんだだけで足りることが多いです。付け直しや吸い取り、古い部品の再利用など、フラックスが熱で使い切られやすい場面では、電子基板用のフラックスを少し足すと作業しやすくなります。
配管用のはんだやフラックスを電子工作に使ってもよいですか?
使わないでください。配管や板金用のフラックスには、腐食の強い成分を含むものがあり、基板や部品の足をあとから錆びさせるおそれがあります。必ず電子工作用、電子基板用と書かれたものを選びます。
鉛入りと鉛フリーのはんだを混ぜて使ってもよいですか?
同じ接合部で混ぜるのは避けたほうが無難です。溶ける温度や固まり方が変わり、接合が不安定になることがあります。材料を切り替えるときは、古いはんだを吸い取ってから付け直し、こて先も分けると安心です。











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