低緯度オーロラのしくみ|日本で赤く見える理由と、磁気嵐・宇宙天気予報の読み方
北海道や本州でもまれに見られる低緯度オーロラについて、光るしくみ、色が高さで変わる理由、日本では北の低い空が赤く染まって見えるわけ、太陽フレアと磁気嵐の関係、Kp指数など宇宙天気予報の読み方、撮影の設定の目安、見間違えやすい光までを順にまとめました。

オーロラというと、北欧やアラスカの夜空いっぱいに揺れる緑の光を思い浮かべる人が多いと思います。ところが、太陽の活動がとても活発になると、日本のような緯度の低い場所でも、北の空の低いところがぼんやりと赤く染まることがあります。これを低緯度オーロラと呼びます。
低緯度オーロラは、写真で見る北極圏のオーロラとはかなり違う姿をしています。色はほとんど赤で、空の高い所ではなく地平線近くに出て、動きもゆっくりです。なぜそう見えるのかは、オーロラが光るしくみと、地球が丸いことを合わせて考えると理解できます。ここでは、しくみ、色、太陽と磁気嵐の関係、予報の読み方、見に行くときの準備と撮影、見間違えやすい光までを順に紹介します。
オーロラが光るしくみ
オーロラは、宇宙から降り込んできた電子などの電気を帯びた粒子が、地球の上空の大気にぶつかって光る現象です。地上100キロメートルから数百キロメートルの高さで起こり、雲よりはるかに上、国際宇宙ステーションが飛んでいる高さとほぼ同じくらいの所まで広がっています。
光るしくみは、蛍光灯やネオンサインに近いものです。高速の電子が酸素や窒素にぶつかると、原子や分子が一時的にエネルギーの高い状態になります。それが元の状態に戻るとき、決まった色の光を出します。どの色になるかは、ぶつかった相手が酸素か窒素か、原子か分子かで決まっています。
では、粒子はどこから来るのでしょうか。太陽からは太陽風と呼ばれる電気を帯びた粒子の流れが、絶えず吹き出しています。地球は大きな磁石のような磁場を持っていて、太陽風を直接受けないように守られています。この磁場に包まれた領域を磁気圏といいます。太陽風の勢いや磁場の向きによって磁気圏にエネルギーがたまり、そこで加速された粒子が、磁力線に沿って北極と南極のまわりの上空へ降りてきます。これがオーロラのもとです。

オーロラが出やすい場所は、地磁気の極(方位磁針が指す北とは少しずれた、地球の磁場の軸の端)を囲む輪のような帯になっています。これをオーロラオーバル(オーロラ帯)と呼びます。ふだんは北極圏に近い高緯度の地域の上空にあり、北欧の北部やアラスカ、カナダ北部がオーロラ観光で知られるのは、この帯の真下に近いからです。
色は高さと原子の種類で決まる
オーロラの色の違いは、きれいな偶然ではなく、高さと大気の成分の違いで説明できます。よく見られる色と、その光が出やすい高さを整理すると次のようになります。
| 色 | 主に光っているもの | 出やすい高さの目安 | 見え方の特徴 |
|---|---|---|---|
| 緑 | 酸素の原子 | 約100〜200km | いちばんよく見られる色。カーテン状になりやすい |
| 赤 | 酸素の原子 | 約200〜400km | 緑の上の高い所に出る。淡く広がりやすい |
| 青・紫・ピンク | 窒素の分子など | 約100km前後 | カーテンの下の縁に出ることがある |
同じ酸素なのに緑と赤があるのは、酸素の原子が光を出すまでにかかる時間の違いによります。緑の光は、エネルギーの高い状態になってから1秒足らずで出ます。一方、赤の光は100秒ほどもかかります。大気が濃い低い所では、そのあいだにほかの粒子とぶつかってエネルギーが奪われ、赤い光を出す前に消えてしまいます。空気がとても薄く、ぶつかる相手が少ない高い所でだけ、赤い光が出せるというわけです。
窒素の光は低めの所で目立ちます。強いオーロラのときに、緑のカーテンの裾がピンクや紫に縁取られるのはこのためです。

降ってくる電子の勢いも関係します。勢いの強い電子は大気の深い所まで入り込むので、低い所の緑や窒素の光が強くなります。勢いの弱い電子は高い所で止まるので、赤が中心になります。北極圏で見られる明るいオーロラが緑のカーテンに見えるのは、主に高さ100〜200キロメートル付近が光っているからです。
日本でオーロラが赤く見える理由
日本で見られるオーロラが赤い理由は、大きく二つあります。一つは、見ている人が遠くにいること。もう一つは、日本の上空まで届くような磁気嵐のときに、高い所の赤い光が広く出やすいことです。
まず、距離の問題から考えます。地球は丸いので、遠くにある物ほど地平線の下に隠れていきます。船が水平線の向こうへ遠ざかると、船体から見えなくなり、最後にマストの先だけが残るのと同じです。オーロラも、北の遠くで光っているときは、低い所の緑の部分は地平線の下に隠れ、高い所にある赤の部分だけが北の空の低い所にのぞきます。高さ数百キロメートルの光なら、千キロメートル以上離れた場所からでも見えることがあります。
次に、場所の問題です。地球の磁場の軸は地軸から少し傾いていて、日本付近は地図の上の緯度よりも、磁場で測った緯度(磁気緯度)が低くなっています。同じ北緯40度台でも、北米の北部などに比べて、日本はオーロラオーバルから遠い位置にあります。日本でオーロラが見えるのは、オーロラオーバルが大きく南へ広がるほどの、まれで大きな磁気嵐のときに限られます。
そうした大きな磁気嵐では、比較的勢いの弱い電子が広い範囲に降り込んだり、上空の大気が温められたりして、高い所の赤い光が強く出やすくなります。中緯度の空に安定した赤い帯が現れる現象も知られていて、低緯度オーロラの赤さには、こうした光が加わっていることもあります。

低緯度オーロラが「カーテン」ではなく「北の空がぼんやり赤い」と表現されることが多いのは、こうした理由からです。ときには、赤い光の中に縦の筋が何本も立ち上がって見えることがあり、写真では柱のような形が写ることもあります。










