雪の結晶の観察入門|ルーペとスマホで見る形の種類と、気温で形が変わるしくみ
降ってくる雪の結晶を自分の目で見たい人に向けて、六角形になる理由、気温と水蒸気の量で形が変わるしくみ、角板・樹枝状・針状・角柱など代表的な形、黒い布とルーペを使った観察の手順、スマホでの撮り方、見やすい日の条件までをまとめました。

雪の日に、黒いコートの袖に落ちた雪をよく見ると、小さな六本の枝や、六角形の板のような形が見えることがあります。雪の結晶は図鑑や写真の中のものと思われがちですが、条件がそろえば、身近な道具で自分の目で観察できます。
雪の結晶の形は、空の上の気温と水蒸気の量によって変わります。物理学者の中谷宇吉郎は、結晶の形から上空の様子がわかることを「雪は天から送られた手紙である」と言い表しました。ここでは、結晶が六角形になるしくみ、形と気温の関係、代表的な形の見分け方、黒い布とルーペを使った観察の手順、スマホでの撮り方までを順に紹介します。
雪の結晶はどうやってできるのか
雪は、雲の中で生まれる小さな氷の粒が育ったものです。雲の中の空気は、氷点下でもすぐには凍らない細かな水滴(過冷却の水滴)と水蒸気を多く含んでいます。そこに、ちりや火山灰、海の塩の粒など、氷ができるきっかけになる微粒子があると、小さな氷の粒が生まれます。
氷の粒のまわりでは、空気中の水蒸気が直接氷に変わって表面に積もっていきます。液体の水が凍りつくのではなく、気体の水蒸気が氷になるという点が大切です。水蒸気がどこにどれだけ付くかによって、結晶は板の形に広がったり、柱の形に伸びたり、枝を出したりします。
このようにして育った氷の結晶が、重くなって雲から落ちてきたものが雪です。落ちてくる途中で、まわりの水滴が付いて白っぽくなったり、ほかの結晶とくっついて大きな雪片になったりもします。地上で一つずつの結晶がきれいに見えるのは、この途中の変化が少なかった場合です。
六角形になるのは氷の分子の並び方のため
雪の結晶の多くが六角形や六本の枝を持つのは、氷の中で水の分子が並ぶ形に理由があります。水の分子どうしは水素結合という力で引き合い、ふつうの氷では、上から見ると六角形を基本にした網目のような並び方になります。
結晶が大きく育つと、この目に見えない並び方が、外側の形にもそのまま表れます。六角形の板の角が尖って伸びると、六本の枝になります。枝が六本ともよく似た形になるのは、六本の枝が同じ時間に同じ空気の中を通ってきたからだと考えられています。

形を決める二つの条件、気温と水蒸気の量
雪の結晶の形を決める主な条件は、結晶が育つ場所の気温と、空気中に含まれる水蒸気の量です。中谷宇吉郎は、実験室で人工的に雪の結晶を作り、気温と水蒸気の量を変えると形が変わることを確かめました。この関係を表した図は、中谷ダイヤグラムと呼ばれています。
気温によって「板」か「柱」かが変わる
おおまかに言うと、気温によって、結晶が板の形に広がるか、柱の形に伸びるかが入れ替わります。0度からマイナス4度くらいでは板の形、マイナス4度からマイナス10度くらいでは柱や針の形、マイナス10度からマイナス22度くらいでは再び板の形、それより低い温度では柱の形になりやすいとされています。
板と柱が温度によって何度も入れ替わる理由は、氷の表面のどの面に水蒸気が付きやすいかが、温度によって変わるためと考えられています。くわしいしくみは今も研究が続いている分野で、温度の境目も資料によって少しずつ幅があります。
水蒸気が多いほど複雑な形になる
同じ温度でも、水蒸気の量が少ないと、六角形の板や短い柱のような単純な形にとどまります。水蒸気が多いと、角の部分が先に伸びて、枝を出した複雑な形になります。六本の枝がさらに細かく枝分かれした、いわゆる「雪の結晶らしい」形は、マイナス15度前後で水蒸気が多いときに育ちやすいとされています。
角の部分が先に伸びるのは、結晶の角が周りの空気に大きく突き出していて、水蒸気を受け取りやすいからです。一度角が伸び始めると、ますます水蒸気が集まって枝になっていきます。
| 育った場所の気温の目安 | 育ちやすい形 | 水蒸気が多いと |
|---|---|---|
| 0〜マイナス4度 | 薄い六角形の板 | 板の縁が広がる |
| マイナス4〜マイナス10度 | 角柱・針 | 細長い針や中が空洞の柱 |
| マイナス10〜マイナス22度 | 六角形の板 | 扇形や樹枝状の枝が伸びる |
| マイナス22度より低い | 角柱 | 柱が組み合わさった形 |
温度の境目は目安です。地上の気温ではなく、結晶が雲の中で育った高さの気温を表しています。地上が同じ気温でも、上空の状態によって降ってくる結晶の形は変わります。
結晶は「通ってきた道のり」を記録している
一つの結晶は、雲の中を上下しながら育つ間に、気温や水蒸気の量が違う場所を通ります。中心部は板の形で育ち、途中で水蒸気の多い場所に入って枝が伸び、最後に乾いた場所で枝の先が板のように広がる、といった変化が一つの結晶に重なって残ります。
結晶の中心から外側へ順に見ていくと、その結晶がどんな環境を通ってきたかを想像できます。「天からの手紙」という言葉は、この読み取りのことを表しています。










