西洋カリグラフィーの始め方|つけペンの選び方とイタリック体の基本ストローク
ペン角と文字の傾きを分けてガイドラインを引く
平ペンの練習でいうペン角は、紙を上から見たとき、先端の直線とベースラインが作る角度です。ペン軸を机から何度起こすかという角度とは別です。イタリック体の入門では四十五度前後を使う手本がよくありますが、まず選んだ教材の指定に合わせます。
文字の傾きは、縦に近い主線がどのくらい右へ傾くかを示します。ペン角が四十五度でも、文字そのものを四十五度へ倒すわけではありません。紙の左上に先端の向きを示す短い見本線を一本描き、別に文字の傾きの補助線を引くと、二つを混同しにくくなります。
高さを決める単位が、ペン幅です。先端の端から端までの幅を一単位として、小文字の胴の高さを何単位にするか考えます。胴の高さは x-height と呼ばれ、主に小文字の x などが収まる範囲です。上へ伸びる部分や下へ伸びる部分を含めた、文字全体の高さではありません。
たとえば幅二ミリの平ペンで、x-height を五ペン幅にするなら、胴は約十ミリになります。実際に先端の幅で小さな目盛りを積み重ねても確認できます。金属の刻印やマーカーの表示値だけでなく、紙上に出る幅も見ます。これは練習用の比率の例で、すべてのイタリック体に共通する絶対値ではありません。

罫線は、文字が乗るベースライン、小文字の胴の上端、上へ伸びる部分の上端、下へ伸びる部分の下端を用意します。b や h の上へ伸びる部分をアセンダー、p や y の下へ伸びる部分をディセンダーと呼びます。長さは手本ごとに異なるため、胴と同じ高さへ機械的にそろえません。
- 左端に一ペン幅の基準を置き、手本の指定に沿って胴の高さを決めます。
- 定規でベースラインと胴の上端を薄く引きます。
- 上下に伸びる文字のための補助線を足します。
- 数か所へ文字の傾きの補助線を入れ、行の間に余白を残します。
- 端へ短い線を書き、狙った高さと先端の幅が合っているか確かめます。
上端や下端を引いても、すべての文字を同じ長方形に押し込める必要はありません。丸みのある文字は、見た目の高さをそろえるためにわずかに線を越す手本もあります。最初は補助線を大きく外れないことを優先し、細かな見え方の補正は、主線が安定してから加えます。
ペン角と胴の高さの関係は、手持ちの教材の図で確かめるのが確実です。教材の比率を使うなら、字形だけを抜き出さず、角度と罫線も一緒に合わせます。
基本ストロークは軽い筆圧で向きの変化を確かめる
机には紙を数枚重ね、柔らかすぎない下敷きにします。椅子と紙の位置を整え、肩をすくめず、前腕が動く余地を作ります。指先だけで遠くの文字へ届こうとせず、行が進んだら紙を動かします。ペンを強く握るほど線が整うわけではありません。
最初の一本は、ペン先の左右がともに紙へ触れているかを見る線にします。平らな先端の片側だけが浮くと、想定より細い線や、輪郭が二重になった線になります。紙に接する面を保ち、持ち上げる直前まで同じ向きを意識します。先端をねじって線の太さを修正しようとしないことが出発点です。
練習する線は、下へ引く主線、横に近い線、斜めの線、緩い曲線、曲線から主線へつながる線です。どれも同じ速さで引く必要はありませんが、途中で長く止まるとインクが集まります。ゆっくり動かすことと、紙へ置いたまま考え込むことを分けます。
- ペン角を決め、短い下向きの線を五本ほど離して引きます。
- 四十五度の向きを保って横線を引き、縦線と同じくらいの幅になるかを見ます。
- 斜めの線を加え、細く見える方向を確かめます。
- 小文字の胴の高さで緩い曲線を書き、入り口と出口を見ます。
- 最も安定した線へ印を付け、次の一列ではその条件を再現します。
太線と細線の差が出ないときは、まず先端の形を確かめます。先端が丸い一般のペンでは、同じ動きでも平ペンの太細にはなりません。専用ペンなのに差が乏しければ、角度が途中で変わっていないか、フェルトの先がつぶれていないかを見ます。
曲線は、丸い輪郭をペン先でなぞる意識より、線を進めながら太さがどう移るかを観察します。太い部分から細い部分へ自然に変われば、筆圧を細かく変えなくても表情が出ます。円を一筆で閉じることにこだわらず、手本の区切りでペンを離してかまいません。
つけペンは、インクをつけ直す前後で線の状態が変わります。一本目だけ太くにじみ、その後は整うなら、動作よりインク量を疑います。逆に数本目からかすれるなら、補充のタイミングが遅い可能性があります。線の横に「補充直後」「五本目」などと記すと、同じ失敗を見分けられます。
左利きの場合も、紙の向きと腕の位置を調整し、手が乾いていない線へ重ならない位置を探します。無理に手首を折り曲げて右利きの写真を再現する必要はありません。左利き向けの先端形状もあるため、合わない姿勢が続くときは、教材や道具の案内を確認します。
小文字は似た骨格ごとに組み立てる
アルファベットを a から z まで順に書くより、似た動作を持つ文字をまとめると、練習の目的を絞れます。たとえば i、l、t では主線、u、n、m では曲がり方と折り返し、o、c、e では丸みと開き方を見ます。同じ仲間の中で、共通する部分と違う部分を分けて観察します。
最初は i を一本の棒として終わらせず、線の入り方、ベースラインでの抜け方、点の位置を手本と比べます。l はその主線を上へ伸ばす文字として考えられますが、長くなった分だけ傾きがぶれやすくなります。短い線が整ったら長い線へ移る順なら、修正する箇所が増えすぎません。
u は下側の曲線、n は上側の曲線と、主線へ移る接続を見ます。m は n の一部を繰り返す形として練習できますが、すべての縦線を等間隔にすればよいわけではありません。線の間にできる白い部分が、隣の文字と同じくらい落ち着いて見えるかを確かめます。
o は正円より細身の楕円に近い骨格を使う手本が多くあります。書き順は教材に従い、たとえば左右を別の曲線で組む場合は、上と下で接合部が重なりすぎないようにします。穴を埋めるように何度もなぞると、そこだけ黒くなって本来の線が分からなくなります。

a や d は、手本で共通する丸みと主線の関係を見ると、別々の図形として暗記せずに済みます。ただし、字形には流儀があり、活字体の a をそのまま組み合わせるとは限りません。文字の入り口、ペンを離す場所、最後に加える線を、手本へ小さく番号で記してから書きます。
一列の中に十個書いたら、十個すべてへ細かい評価を付けるより、最も手本に近い一字と、次に直す点を一つ選びます。「丸みが広すぎる」「胴が低い」のように形を言葉にすれば、次の一列の課題が具体的になります。「何となく下手」と書いても、次の動きにはつながりません。
小文字が少しそろったら、短い単語へ移ります。たとえば moon なら丸みと主線、minimum なら繰り返す主線のリズムを見られます。まだ練習していない大文字や装飾を同時に加えず、単語の中でも胴の高さとペン角を保てるか確かめます。










