透明水彩の始め方|絵の具・紙・筆の選び方と、にじみ・ぼかし・重ね塗りの基本
透明水彩を始めたい人に向けて、絵の具のチューブと固形の違い、紙の素材と目の粗さ・厚さ、筆の種類、パレットの並べ方、にじみ・ぼかし・重ね塗り・ふき取りの基本の技法、色が濁る・紙が波打つ・輪じみができるといった失敗の原因と対策までをまとめました。

透明水彩は、水で溶いた絵の具を紙に重ね、紙の白さを生かして描く画材です。水が紙の上で広がる様子を生かせるので、空のグラデーションや、花びらのやわらかな色合いを、短い時間で表現できます。道具も比較的そろえやすく、机の上で気軽に始められる趣味です。
一方で、水の量や紙の乾き具合によって結果が大きく変わるので、思ったとおりにいかないと感じやすい画材でもあります。多くの失敗は、道具の性質と水の扱いを知ると避けられます。ここでは、絵の具・紙・筆の選び方、パレットの準備、基本の技法、よくある失敗の原因と対策までを、始める人の目線で順に紹介します。
透明水彩はどんな絵の具か
透明水彩の絵の具は、色のもとになる顔料を、アラビアゴムという植物由来の樹脂などで練り合わせたものです。水で溶くと、顔料の粒が水に広がり、紙の上で水が乾くと、アラビアゴムが顔料を紙につなぎ止めます。
透けることが最大の特徴
透明水彩の絵の具は、塗った層が薄く透けるため、下に塗った色や紙の白さが見えます。黄色の上に青を重ねると、混ぜなくても緑に見えるのはこのためです。重ねるほど色は暗く深くなりますが、明るい色を後から上にのせて明るくすることは、基本的にできません。
そのため、透明水彩では「明るいところから暗いところへ」と描き進め、いちばん明るい部分は紙の白を塗り残して表すのが基本になります。白い絵の具を使って明るさを出す油絵やアクリル画とは、考え方の順序が逆になります。
不透明水彩との違い
水彩絵の具には、透明水彩のほかに、不透明水彩(ガッシュ)があります。小学校で使った絵の具は、この中間のような性質のものが多いとされています。
| 種類 | 塗った見た目 | 重ね塗り | 向いている表現 |
|---|---|---|---|
| 透明水彩 | 薄く透け、紙の白が見える | 下の色が透けて混ざって見える | にじみ、グラデーション、軽やかな風景 |
| 不透明水彩(ガッシュ) | 下の色を覆い隠す | 明るい色を上から塗れる | イラスト、平らに塗るデザイン |
透明水彩の絵の具の中にも、透明度の高い色と、少し不透明な色があります。チューブやラベルに透明度が表示されていることもあるので、慣れてきたら確かめてみると、色の重ね方を考える手がかりになります。

絵の具の選び方
チューブと固形(パン)
透明水彩の絵の具には、練った状態でチューブに入ったものと、固めて小さな皿(パン)に入れた固形のものがあります。
チューブは、一度にたくさん溶けるので、広い面を塗る絵や大きな紙に向いています。パレットに出しておき、乾かして固形のように使う人もいます。固形は、水を含ませた筆でこすって溶かします。持ち運びやすく、ふたを閉めればすぐ片づけられるので、屋外のスケッチや少しずつ描く人に向いています。
学生用と専門家用
多くの絵の具の製造元は、手頃な価格の学生用(スタディ用)と、顔料を多く含む専門家用(アーティスト用)の二つの系統を出しています。専門家用は、色が濃く鮮やかで、混色したときに濁りにくい傾向があります。学生用は、手頃な価格で練習に使いやすいのが利点です。
始めのうちは学生用のセットで十分に楽しめます。よく使う色だけ専門家用に買い替えるという方法もあります。
色数と、混色の考え方
十二色前後のセットがあれば、混色でかなりの色を作れます。混色の基本は、混ぜる色の数をできるだけ少なくすることです。三色以上を混ぜると、色が濁って灰色っぽくなりやすくなります。
絵の具のラベルに、使われている顔料が書かれていることがあります。一つの顔料だけでできた色(単一顔料の色)は、混色したときに濁りにくい傾向があります。慣れてきたら、こうした表示を見て色を選ぶのも、一歩進んだ楽しみ方です。
粒状になる色、紙に染み込む色
透明水彩の色には、塗ると顔料の粒が紙のくぼみにたまって、ざらっとした質感になる色があります。これを粒状化(グラニュレーション)と呼び、岩や古い壁、空の質感を表すのに生かせます。
反対に、紙の繊維に染み込んで、ふき取っても色が残りやすい色もあります。後でふき取って明るくしたい部分には、こうした色は避けたほうが扱いやすくなります。










