クリスマスマーケットの歴史と楽しみ方|ドイツ発祥の冬の市、グリューワインと木の飾り
クリスマスマーケットがドイツ語圏の冬の市から始まった経緯、ドレスデンやニュルンベルクなど古い市の特徴、屋台に並ぶグリューワインやレープクーヘン、エルツ山地の木の飾りの意味、マグカップの預かり金の仕組み、寒さへの備えと見て回る順番までをまとめました。

12月が近づくと、木の小屋が並び、温かい飲み物の湯気が立つ「クリスマスマーケット」の写真をよく見かけるようになります。ヨーロッパの冬の風物詩として知られ、近年は日本の各地でも同じような市が開かれています。
ただ、どうしてクリスマスの前に市が立つのか、屋台に並ぶ木の人形やスパイスの香るお菓子にどんな背景があるのかは、意外と知られていません。この記事では、ドイツ語圏の冬の市から始まった歴史をたどり、代表的な飲み物や菓子、飾りの意味、そして現地や国内の会場で楽しむときのコツを順に紹介します。クリスマスそのものの由来はクリスマスの由来|12月25日になった理由で、待つ季節の習慣はアドベントの由来と楽しみ方でまとめているので、あわせて読むと流れがつかみやすくなります。
クリスマスマーケットとは、アドベントの間に開く冬の市
呼び名と開かれる時期
クリスマスマーケットは、ドイツ語で「ヴァイナハツマルクト(Weihnachtsmarkt)」と呼ばれます。南ドイツやオーストリアでは「クリストキンドルマルクト(Christkindlmarkt)」、つまり「幼子キリストの市」という呼び名も使われます。町の中心の広場や教会の前に、木で組んだ小屋のような屋台が集まり、飾りや手工芸品、温かい飲み物や軽食を売ります。
開かれるのは、多くの場合、クリスマスを待つ期間であるアドベントのあいだです。11月の終わりごろに始まり、クリスマスの直前まで続く市が多く見られます。クリスマス当日は家族と家で過ごす日と考える地域が多いため、市はその前に終わることが一般的です。一方で、年末まで続ける市や、年明けまで開く会場もあり、期間は町ごとにさまざまです。
買い物の場であり、待つ時間を楽しむ場でもある
クリスマスマーケットは、単に物を売る場所ではありません。仕事帰りに友人と温かい飲み物を一杯飲む、家族で飾りを一つ選ぶ、合唱や楽器の演奏を聴く、といった過ごし方が中心です。日が短く寒い冬に、明かりと人の集まる場所が町の真ん中にできることそのものが、大きな楽しみになっています。
そのため、市の雰囲気は町の性格を映します。大きな都市では複数の会場がテーマごとに分かれていることがあり、小さな町では教会の前の広場に数十軒が並ぶだけということもあります。どちらが本格的ということではなく、規模の違いが楽しみ方の違いになると考えるとよいでしょう。
| 呼び名 | 主に使われる地域 | 言葉の意味 |
|---|---|---|
| ヴァイナハツマルクト | ドイツ全体 | クリスマスの市 |
| クリストキンドルマルクト | 南ドイツ、オーストリアなど | 幼子キリストの市 |
| アドヴェンツマルクト | ドイツ語圏の各地 | アドベントの市 |
| マルシェ・ド・ノエル | フランス語圏 | クリスマスの市 |
始まりは中世の終わりの「冬を越すための市」
冬の前に必要な物をそろえる場
クリスマスマーケットの源流は、中世の終わりごろのドイツ語圏で開かれていた冬の市にあると考えられています。当時の暮らしでは、寒さが厳しくなる前に、肉や保存のきく食べ物、暖を取るための品、道具などをまとめて手に入れる必要がありました。町の市場は、冬を越す準備をする大切な場でした。
ウィーンでは13世紀の終わりに、12月の市を開く許可が与えられたという記録がよく紹介されます。ただし、これは今のような「クリスマスの飾りを買う市」というより、季節の市場の一つでした。冬の市がどの時点でクリスマスと結びついたかは町によって異なり、はっきりと一つの起源を決めることは難しいとされています。
クリスマスの前に開く市として定着する
15世紀から16世紀にかけて、クリスマスの前に開かれる市の記録が各地に現れます。ドレスデンの「シュトリーツェルマルクト」は、15世紀に始まったとされ、現存する中でも古いクリスマスマーケットの一つとして知られています。市の名前は、ドレスデンの名物である「シュトリーツェル」、つまりシュトレンの古い呼び名に由来するといわれます。
ニュルンベルクの「クリストキンドレスマルクト」も、16世紀から17世紀ごろには開かれていたと考えられている古い市です。フランスのアルザス地方にあるストラスブールでも、16世紀の後半に市がクリスマスの前へ移されたという話が伝わっています。アルザスはドイツ語圏の文化と深く結びついた地域で、今も大きなクリスマスマーケットで知られています。

宗教改革と「クリストキント」
南ドイツなどの市で名前に使われる「クリストキント」は、クリスマスに子どもへ贈り物を届ける存在として語られてきました。16世紀の宗教改革のころ、聖人を祝う習慣を見直す動きの中で、12月6日の聖ニコラウスの日に贈り物をする習慣を、クリスマスへ移そうとする流れがあったと説明されることがあります。その中で、贈り物の担い手として幼子キリストのイメージが広まったといわれます。
現在のニュルンベルクの市では、金色の衣装を着た「クリストキント」役の人が開幕の言葉を述べる習慣が知られています。こうした行事は、宗教的な由来を持ちながらも、町の人々が冬の始まりを確かめ合う祭りとして続いています。










