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歴史・文化

ハヌカーの由来と過ごし方|8日間の灯りとハヌキヤの並べ方、揚げ物とドレイドルの意味

ユダヤ教の冬の祭りハヌカーについて、マカバイの反乱と神殿の再奉献という由来、油の伝承、ユダヤ暦で日付が毎年動く理由を紹介します。9本の枝を持つ燭台ハヌキヤの並べ方と点ける順番、ラトケスやスフガニヤ、ドレイドルの遊び方、日本で触れるときの気づかいまでまとめました。

雪の夜の窓辺で灯る9本のろうそくの燭台

12月が近づくと、海外のニュースや映画で、窓辺に並んだたくさんのろうそくや、こまで遊ぶ子どもたちの場面を見かけることがあります。これはユダヤ教の祭り「ハヌカー」の風景です。クリスマスと同じ時期に8日間続き、毎晩ひとつずつ灯りを増やしていくことから「光の祭り」とも呼ばれます。

日本ではなじみの薄い祭りですが、背景を知ると、灯りの数や並べ方、揚げ物を食べる理由、こまに刻まれた文字にまで、一つの物語が通っていることが分かります。ここでは、由来となった紀元前2世紀の出来事から、燭台の使い方、料理と遊び、日本で触れるときの気づかいまで、順を追って紹介します。宗教上の作法は家庭や共同体によって違うため、ここで書くのはよく知られた一般的な形だと考えてください。

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ハヌカーとはどんな祭りか

名前は「奉献」を意味する

ハヌカー(Hanukkah、Chanukah とも書きます)は、ヘブライ語で「奉献」や「献納」を意味する言葉です。異教の神殿として使われていたエルサレムの神殿を取り戻し、もう一度ユダヤ教の神殿として清め、神にささげ直した出来事を記念しています。日本語では「ハヌカ」「ハヌカー」「ハヌカ祭」などと表記されます。

祭りの期間は8日間で、毎晩日が暮れると燭台に灯りをともします。1日目は1本、2日目は2本と増えていき、最終日には8本すべてが並びます。暗い季節に光が少しずつ増えていく様子が、この祭りのいちばんの象徴です。

宗教上の位置づけ

ユダヤ教の祭りには、聖書(ユダヤ教ではヘブライ語聖書、タナハと呼ばれます)に定められた大祭日と、後の時代の出来事を記念する祭りがあります。ハヌカーは後者で、過越祭(ペサハ)や贖罪日(ヨム・キプール)のように、仕事を控える決まりのある祭日ではありません。人々はふだんどおり働き、学校へ行き、夕方に家族で灯りをともします。

一方で、家庭の行事としては親しまれています。子どもが楽しめる遊びや料理があり、家族や友人が集まるきっかけになるためです。特に北アメリカでは、クリスマスと時期が重なることもあって、贈り物をする習慣とともに大きく扱われるようになりました。この点は後の章で詳しく触れます。

項目 ハヌカーの場合
意味 神殿の再奉献を記念する
期間 ユダヤ暦キスレウ月25日から8日間
象徴 毎晩1本ずつ増える灯り
仕事 休む決まりはない(安息日を除く)
家庭の楽しみ 揚げ物の料理、こま遊び、贈り物

由来:マカバイの反乱と神殿の再奉献

ヘレニズムの時代と宗教への圧力

物語の舞台は紀元前2世紀のユダヤ地方です。アレクサンドロス大王の遠征の後、この地域はギリシア系の王朝に治められ、ギリシア風の文化(ヘレニズム文化)が広がっていました。ユダヤの人々のあいだでも、ギリシア風の暮らしを受け入れる人と、伝統を守ろうとする人とで考えが分かれていました。

その中で、セレウコス朝の王アンティオコス4世が、ユダヤ教の信仰に強い圧力をかけたと伝えられています。安息日を守ることや割礼などの習わしが禁じられ、エルサレムの神殿にはギリシアの神をまつる祭壇が置かれ、ユダヤ教では食べてはならないとされる豚がささげられたといいます。信仰の中心である神殿が、異なる神のための場所に変えられてしまったのです。

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マカバイ家の反乱

これに対して立ち上がったのが、祭司マタティアとその息子たちでした。息子の一人ユダは「マカバイ」というあだ名で呼ばれ、一族は「マカバイ家」として知られます(ハスモン家とも呼ばれます)。彼らは山地を拠点に少ない兵力で戦い続け、数年の後にエルサレムを取り戻しました。

神殿を取り戻した人々は、汚されたとみなした祭壇を取り除き、新しい祭壇を築いて神殿を清め、もう一度神にささげました。この再奉献が行われたのが、ユダヤ暦のキスレウ月25日とされます。年代としては紀元前164年ごろと考えられています。ハヌカーの8日間は、このときの奉献の祝いを記念したものです。

ハヌカーの由来の流れ(1. 信仰への圧力、2. マカバイ家の反乱、3. エルサレムの奪回、4. 神殿の再奉献)
神殿が奪われ、取り戻され、清められた。

「油の奇跡」の伝承と、記録による違い

ハヌカーの話として広く知られているのが「油の奇跡」です。神殿の燭台にともすための清められた油を探したところ、封印の残った壺が一つだけ見つかりました。それは1日分しかありませんでしたが、灯りは8日間燃え続け、その間に新しい油を用意できた、という話です。8日間灯りをともす理由として、今も家庭で語り継がれています。

ただし、この話がどこに書かれているかには注意が必要です。反乱の経緯を詳しく伝えるのは『マカバイ記』という書物で、そこでは8日間の祝いが記されているものの、油が長く燃えた話は出てきません。油の奇跡が書かれているのは、数百年後にまとめられたユダヤ教の学者たちの議論の記録(タルムード)です。8日間という長さについては、同じ時期に祝えなかった仮庵祭(スコット)の8日間の祝いを、このとき改めて行ったからだという見方もあります。

どちらが正しいかを決める必要はありません。戦いに勝った歴史と、灯りが絶えなかった信仰の物語の両方が重なって、今のハヌカーの形ができていると考えると分かりやすいでしょう。なお『マカバイ記』は、ユダヤ教の聖書には含まれず、カトリックや正教会では聖書の一部、プロテスタントでは外典(聖書に準じる書物)として扱われるなど、宗派によって位置づけが異なります。

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日付の決まり方:ユダヤ暦のキスレウ月25日

太陰太陽暦なので毎年ずれる

ハヌカーが「毎年12月○日」と決まっていないのは、ユダヤ暦が月の満ち欠けを基準にした暦だからです。ユダヤ暦の1か月は新月から次の新月までのおよそ29日半で、12か月では太陽の1年より11日ほど短くなります。そのままでは季節がずれていくため、およそ19年に7回、1か月を足す「閏月」の年を設けて、季節と暦を合わせています。

この仕組みは、日本でかつて使われていた旧暦とよく似ています。そのため、キスレウ月25日を太陽暦に当てはめると、年によって20日以上前後し、おおむね11月下旬から12月下旬のあいだに始まります。その年の日付は、ユダヤ暦と西暦を対応させたカレンダーで確かめてください。月の満ち欠けで暦を作る考え方は、月の満ち欠けのしくみを読むと具体的にイメージしやすくなります。

一日は日没から始まる

もう一つ知っておきたいのが、ユダヤ暦では一日が日没から始まることです。カレンダーに「ハヌカー 12月○日から」と書かれていても、実際に最初の灯りをともすのはその前日の夕方、ということがよくあります。海外のカレンダーで「Hanukkah begins at sundown」と添えられているのはこのためです。

8日間の最終日も同じ考え方で、8本目の灯りをともした翌日の日没で祭りが終わります。日付の数え方に慣れていないと一日ずれて受け取りやすいので、知人とやりとりするときなどは「いつの夕方から」と確かめると間違いがありません。

日付が動く理由(月が基準、閏月で調整、日没が始まり、西暦では変動)
暦の作り方を知ると、ずれ方が納得できる。
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