ディワリの由来と過ごし方|光の祭りの5日間、灯明とランゴーリー、地域ごとの物語
地域で違う由来の物語
北インド:ラーマ王子の帰還
北インドで最もよく知られているのは、叙事詩『ラーマーヤナ』の物語です。王子ラーマは、妃シーター、弟ラクシュマナとともに14年間の追放生活を送り、その間に魔王ラーヴァナにさらわれたシーターを救い出します。ラーヴァナを倒して都アヨーディヤーへ戻る一行を迎えるため、人々が道に灯りを並べて夜を照らした、というのがディワリの始まりだと語られます。
ディワリの20日ほど前には、ラーマがラーヴァナに勝ったことを祝う「ダシャハラー」という祭りがあり、北インドではラーヴァナの大きな人形を燃やす行事が行われます。勝利を祝ってから、帰還を灯りで迎えるまでがひと続きの物語になっているのです。
南インド:魔王ナラカースラ
南インドでは、2日目の行事で触れたナラカースラの物語が中心になります。人々を苦しめた魔王がクリシュナに倒され、その死を前に「この日を人々が灯りで祝うように」と願った、と伝える話もあります。夜明け前の油の沐浴は、魔王を倒した後に体を清めたことにちなむとされています。
東インド:女神カーリー
西ベンガル州などの東インドでは、ディワリの新月の夜は、力強い女神カーリーをまつる「カーリー・プージャー」の夜でもあります。同じ夜に灯りをともしても、まつる神も行事の雰囲気も北インドとはかなり違います。
西インド:商いの新年
グジャラート州など西インドでは、ディワリの時期が商いの年の区切りになってきました。新しい帳簿を開く行事が行われ、翌日を新年として、あいさつを交わして回ります。年の暮れに帳簿を締める習慣は、日本でも商家の年末行事として伝わってきたもので、比べてみると興味深い共通点です。

物語が違っても祭りが一つにまとまる理由
これだけ由来が違っても、ディワリが一つの祭りとしてまとまっているのは、「秋の新月の夜に灯りをともす」という形が共通しているからです。もとは秋の収穫を終えた時期の祭りでもあり、豊かな実りに感謝し、厳しい季節を前に光で暗さを払う、という農耕の暮らしの感覚が、さまざまな物語と結びついていったと考えられています。由来が一つに決まっていないことは、インドという広い土地の多様さそのものでもあります。
灯りの飾り:ディヤとランタン
素焼きの灯明「ディヤ」
ディワリの灯りの基本は、ディヤと呼ばれる素焼きの小さな灯明です。手のひらに収まるほどの皿形の器で、縁の一か所が少しつまんで細くしてあります。そこに綿の芯を置き、ギー(澄ましバター)や植物油を注いで火をともします。ろうそくの炎よりも小さく、揺らぎの多い柔らかな明かりです。

ディヤは、家の入口、窓辺、ベランダ、屋上の縁、礼拝の場所など、家の境目に並べます。外から訪れる幸運を迎え入れ、闇を家に入れないという意味が込められているとされます。素焼きのままのものもあれば、鮮やかな色に塗ったり、鏡のかけらで飾ったりしたものもあり、市場には祭りの前になると山のように並びます。
ランタンと電飾
ディヤのほかに、紙や布で作った星形のランタン(アーカーシュ・カンディール)を軒先につるす地域もあります。近年は電飾も広く使われ、建物全体を光の帯で縁取る家や、通り全体を飾り付ける商店街もあります。一方で、素焼きのディヤを並べることにこだわる家庭も多く、伝統の灯りと新しい灯りが混ざり合っているのが今のディワリの風景です。
花火と大気の問題
ディワリの夜には、各地で爆竹や花火が鳴らされてきました。ただ、大都市では、もともと秋から冬に大気がよどみやすい時期と重なり、花火の煙で大気汚染が深刻になることが問題になっています。そのため、地域によっては花火の販売や使用を規制したり、煙の少ない花火を勧めたりする動きがあり、花火を控えて灯りだけで祝おうと呼びかける人も増えています。

ランゴーリー:床に描く色の模様
迎え入れのための模様
ディワリの時期、家の入口の床や玄関前には、色とりどりの粉で描いた模様が現れます。これがランゴーリーです。花や蓮、孔雀、幾何学模様など、図柄はさまざまで、中央や周りにディヤを置くこともあります。訪れる人や神々を迎え入れるための飾りで、家の女性たちが祭りの前に時間をかけて描くことが多いとされています。
材料は、色を付けた米粉や石の粉、色砂、花びらなどです。指先で粉を少しずつ落としながら線を引き、面を塗り分けていきます。地域によって呼び名があり、南インドのタミル・ナードゥ州などでは、白い米粉で描く「コーラム」という似た習慣が、祭りの日に限らず毎朝の家事として続いてきました。
コーラムとランゴーリーの違い
コーラムは、点を規則的に打ち、その点を囲むように一筆書きの線を巡らせて描くものが多く、白い米粉の線の美しさが特徴です。米粉は、アリや小鳥への施しにもなるといわれます。ランゴーリーは、色の粉で面を塗り分けた華やかな図柄が中心で、祭りのときに特に大きく描かれます。どちらも、描いた模様が人に踏まれたり風で崩れたりして消えていくことを前提にした、その日限りの飾りです。
| 項目 | ランゴーリー | コーラム |
|---|---|---|
| 主な地域 | 北・西インドなど広い地域 | 南インドのタミル・ナードゥ州など |
| 材料 | 色を付けた粉、色砂、花びら | 主に白い米粉 |
| 描き方 | 面を色で塗り分ける | 点を打ち、線で囲む |
| 描く時期 | 祭りや祝いの日に大きく | 毎朝、家の前に |
家で描いてみる手順
日本の家でランゴーリーを試すなら、床に直接描かず、大きめの厚紙やボードの上に描くと片付けが簡単です。
- 厚紙に、鉛筆で中心の点と同心円を軽く描く。
- 中心に花や星などの簡単な図柄を決め、外側に向かって花びら形をくり返す。
- 色砂や、色を付けた塩、乾いた米などを、紙をすぼめた筒や小さなスプーンで少しずつ落とす。
- 外側の輪郭から先に描き、内側を塗りつぶすと形が崩れにくい。
- 仕上げに、生花の花びらを縁に並べると華やかになる。
左右や上下を対称にくり返す図柄は、少し崩れても全体として整って見えるので、初めてでも形になりやすいものです。










