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歴史・文化

ギリシャ建築の柱の見分け方|ドリス式・イオニア式・コリント式の基本

西洋建築の柱は、柱頭の形を見ればドリス式・イオニア式・コリント式のおおよその区別がつきます。柱礎や溝の数、梁の上の飾りまで、三つのオーダーの違いと成り立ち、ローマで加わった二つの様式、日本の近代建築で柱を見るときのポイントを順にまとめました。

三つの柱頭が並ぶギリシャ建築の風景

美術館の正面や古い銀行の建物で、白い柱がずらりと並んでいるのを見たことがある人は多いと思います。どれも同じように見えますが、柱のいちばん上や足もとをよく見ると、形にははっきりとした違いがあります。この違いには名前があり、古代ギリシャで生まれた「オーダー」と呼ばれる様式に分けられます。

オーダーを知っていると、旅先の遺跡だけでなく、街なかの近代建築や映画の背景まで、少し違った目で見られるようになります。ここでは、ドリス式・イオニア式・コリント式の三つを中心に、見分けるときに見る場所、それぞれの成り立ちと性格、ローマ以降に加わった様式、実際に建物を見るときのコツまでを順に紹介します。

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オーダーとは何か

オーダー(order)は、日本語では「柱式」とも訳されます。柱一本の形だけでなく、柱とその上に載る梁の部分をひとまとまりにした決まりごとを指す言葉です。古代ギリシャの神殿は、石の柱を並べて、その上に水平の梁を渡し、さらに屋根を載せる造りでした。この柱と梁の組み合わせ方、比率、飾り方に、いくつかの型があったのです。

オーダーを構成する部分は、大きく下から順に三つに分けられます。

  • 柱礎(ちゅうそ):柱の足もとに置かれる台座のような部分。様式によってはありません。
  • 柱身(ちゅうしん):柱の長い胴の部分。縦に細い溝が彫られていることが多くあります。
  • 柱頭(ちゅうとう):柱のいちばん上で、梁を受け止める部分。様式の違いがいちばん目立つ場所です。

柱の上に載る水平の部分は「エンタブラチュア」と呼ばれ、これも下から、アーキトレーヴ(梁の本体)、フリーズ(帯状の飾りの部分)、コーニス(張り出した軒の部分)の三段に分かれます。神殿の正面の三角形の部分はペディメントと呼ばれ、ここに彫刻が置かれることもありました。

オーダーを下から見る順番(1. 柱礎、2. 柱身、3. 柱頭、4. エンタブラチュア)
柱だけでなく、上に載る梁までがひとそろい。

オーダーという考え方が大切にされたのは、形の決まりが比率の決まりと結びついていたからです。柱の太さを基準にして、高さや柱と柱の間隔、梁の厚みが決まっていくので、型を守ると建物全体の釣り合いがとれます。古代ローマの建築家ウィトルウィウスが書き残した建築書は、この考え方を後の時代に伝え、ルネサンス以降の建築家たちが古典を学ぶ手がかりになりました。

柱頭で見分ける三つの基本

三つの様式は、柱頭を見ればおおよそ区別できます。まずは細かい違いより、柱頭の印象をつかむのが近道です。

  • ドリス式:柱頭は、丸く張り出したお皿のような部分(エキヌス)と、その上の四角い板(アバクス)だけでできています。飾りが少なく、どっしりとした印象です。
  • イオニア式:柱頭の左右に、くるりと巻いた渦巻き(ヴォリュート)がついています。巻物を左右から巻き込んだような形で、遠くからでもわかりやすい特徴です。
  • コリント式:柱頭がアカンサスという植物の葉の飾りで覆われ、ふんわりと盛り上がった、かごのような形をしています。葉の間から小さな渦巻きがのぞくこともあります。
見る場所 ドリス式 イオニア式 コリント式
柱頭 平たいお皿と四角い板 左右に渦巻き アカンサスの葉の飾り
柱礎 ギリシャでは無いのが基本 ある ある
柱身の太さ 太く短め ほっそり さらにほっそり
溝 浅めで、溝と溝が鋭い稜線で接する 深めで、溝の間に平らな帯が残る イオニア式に近い
フリーズ 縦じまの板と浮き彫りの板が交互 連続した帯状の浮き彫りが多い イオニア式に近い
印象 力強く重厚 優雅で軽やか 華やかで装飾的

表のとおり、柱頭以外にも違いはありますが、実際の建物では時代や地域、建築家の好みによって細部が変わります。柱礎のあるドリス式や、溝の無い柱も珍しくありません。「柱頭でおおよそ判断し、ほかの部分で確かめる」くらいの気持ちで見ると、迷いにくくなります。

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ドリス式|飾らない力強さ

ドリス式は、三つの中でもっとも古く、もっとも簡素な様式です。名前は、古代ギリシャの一部族であるドーリス人に由来するとされ、ギリシャ本土や、南イタリア・シチリア島などのギリシャ人の植民市で多く建てられました。

ドリス式の特徴

ギリシャのドリス式の柱は、柱礎を持たず、神殿の床(基壇)から直接立ち上がっているのが基本です。柱身は太く、高さは太さのおよそ数倍ほどと短めで、ずんぐりとした力強い姿をしています。縦の溝は浅めで、溝と溝の間が尖った稜線で接しているため、光が当たるとくっきりとした縦じまの陰影が生まれます。

柱の上の梁の部分にも、ドリス式ならではの特徴があります。フリーズには、縦に溝が刻まれた「トリグリフ」という板と、浮き彫りが施される「メトープ」という四角い板が、交互に並びます。トリグリフは、木造の神殿だった時代の梁の端の名残ではないかと考えられています。石で建てるようになってからも、木の構造の記憶が飾りとして残ったわけです。

代表的な建物

ドリス式の代表としてよく挙げられるのが、アテネのアクロポリスにあるパルテノン神殿です。外まわりの柱はドリス式ですが、内部の一部にはイオニア式の要素が使われ、建物を一周する帯状の彫刻もイオニア式の考え方に近いものです。純粋な様式というより、二つの様式の長所を組み合わせた建物として見ると面白さが増します。

南イタリアのパエストゥムや、シチリア島の神殿群には、より古い時代のドリス式の神殿が残っています。これらは柱が一段と太く、柱頭の張り出しも大きく、パルテノン神殿と比べると時代による変化がよくわかります。

ドリス式を見分ける手がかり(柱頭、柱礎、溝、フリーズ)
飾りの少なさと太さが目印。
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