小正月とどんど焼き|左義長の起こり、地域で違う呼び名、持ち込めるものと小豆粥の作り方
小正月に伝わるほかの行事
どんど焼きは小正月の行事の一部にすぎません。実りを願い、村の悪いものを追い払い、祝福を運ぶ行事が各地に伝わっています。

餅花と繭玉:枝に実りを咲かせる
餅花は、ヤナギやミズキの枝に、紅白の小さな餅や団子を付けた飾りです。稲の穂が実る姿や花が咲く姿を、一足先に家の中で見せて、その年の豊作を約束してもらう、という意味があります。予祝の考え方がいちばんわかりやすく表れた形です。
養蚕の盛んだった地域では、団子を繭の形に丸めた「繭玉」を飾りました。枝に付けた繭玉は、小正月が済むと下ろして焼いて食べたり、どんど焼きの火であぶって食べたりします。今も正月に繭玉を売る寺社や市があり、養蚕が消えたあとも形だけが残っています。
成木責め:木を脅して実らせる
柿などの果樹に向かって、一人が刃物を持って「なるかならぬか、ならねば切るぞ」と迫り、もう一人が木の代わりに「なります、なります」と答える。これが成木責めです。木に小さな傷を付け、そこへ小豆粥を塗る形もありました。
笑いを誘う行事ですが、言葉の力で結果を先に決めてしまうという、言霊の考え方が背景にあります。傷を付ける行為が、木の生長や結実にかかわる刺激になるという見方もありますが、民俗行事としての意味は豊作の約束にあります。
鳥追いともぐら打ち
子どもたちが朝早くから、棒や拍子木を鳴らして歌いながら村を回り、作物を荒らす鳥を追う真似をするのが鳥追いです。西日本には、藁束で地面をたたいてもぐらを追い出す、もぐら打ちの行事もあります。実際に害を減らすというより、これから来る一年の害を先に払う行事です。
秋田県横手市のかまくらも、小正月の行事として知られています。今は2月中旬に行われていますが、これは旧暦の小正月の日取りを残しているためで、もとは水神様を祀る行事でした。
来訪神:ナマハゲも小正月の行事だった
小正月の晩に、仮面や蓑をまとった異形の者が家々を訪ね、怠け者を戒めて祝福を与える行事が、東北などに伝わります。秋田県男鹿のナマハゲは今は大晦日に行われますが、もとは小正月の行事でした。
こうした行事は「来訪神」と呼ばれ、2018年にはユネスコの無形文化遺産に複数の行事がまとめて登録されました。遠くの世界から季節の変わり目に神が来る、という考え方は、年神様を迎える正月の感覚とも通じます。
粥占:粥で一年を占う
粥占(かゆうら)は、竹の管を入れて粥を炊き、管の中に入った粥の量で、その年の作物の出来を占う行事です。長野県の諏訪大社下社の筒粥神事がよく知られ、全国の神社にも似た行事が残っています。粥を使うのは、小正月の中心が小豆粥だったことと結びついています。
小豆粥の意味と作り方
1月15日の朝に小豆粥を食べる習わしは、とても古いものです。紀貫之の『土佐日記』には、旅の途中で正月15日に小豆粥を煮られなかったという記述が見られます。清少納言の『枕草子』にも、15日の粥にまつわる宮中の遊びが書かれています。粥を炊いた木の棒で女性の腰を打つと子宝に恵まれるという「粥杖」の話です。
なぜ赤い粥なのか
小豆の赤い色には、魔除けの力があると考えられてきました。赤飯、ぼた餅、ぜんざいと、節目の食べ物に小豆が多いのはそのためです。冬至のかぼちゃと小豆の煮物も、同じ流れにあります。
また、15日の粥を「望粥(もちがゆ)」と呼ぶことから、餅を入れる形も広まりました。満月の「望」と食べ物の「餅」が音で重なったとも言われます。平安時代の宮中では、米に粟や小豆などを合わせた「七種粥」を、この日に食べたと伝えられ、これが1月7日の七草がゆの源流の一つとする見方もあります。七草がゆと人日の節句の話と続けて読むと、正月の粥の流れがつかめます。
小豆粥の作り方
小豆から煮る、基本の作り方です。分量は2人分の目安です。
材料は、米2分の1カップ、乾燥小豆50グラム、水適量、塩小さじ3分の1、切り餅2個です。小豆は大豆と違って、前の晩から水に浸しておく必要はありません。
- 小豆を洗い、鍋にたっぷりの水とともに入れて火にかける。沸騰したら3分ほどゆで、ざるにあけて湯を捨てる(渋切り)。
- 鍋に小豆と水800ミリリットルを入れ、ふたをずらして弱火で30〜40分煮る。指で軽くつぶれるやわらかさが目安。途中で水が減ったら足す。
- 米を洗い、30分ほど水に浸してから水気をきる。
- 別の鍋に、小豆とその煮汁を入れ、水を足して全体で900ミリリットルほどにする。米を加えて火にかける。
- 沸騰したら弱火にし、ふたをずらして30分ほど炊く。かき混ぜすぎると粘りが出るので、最初に底から一度混ぜる程度にする。
- 塩を加えてひと混ぜし、焼いた餅をのせる。
粥の水加減や火加減は鍋で変わります。汁が少なくなったら湯を足して調整します。小豆の皮がいくらか破れていても問題ありません。

ゆで小豆を使う簡単な方法
砂糖の入っていないゆで小豆の缶詰やパックを使えば、手順2までを省けます。冷やご飯を使う場合は、ご飯1杯に水と小豆の煮汁を合わせて2〜3倍ほど入れ、10分ほど煮ます。砂糖入りのゆで小豆を使うと、塩味の粥ではなくおしるこに近い味になるので、原材料を確かめてから買います。
甘くするか塩味にするかは、土地や家によって違います。砂糖をかけて食べる土地もあります。子どもが食べやすいのは少し甘いほうですが、塩を少し効かせると小豆の香りがはっきりします。
続けられなくなる地域と、これからの形
どんど焼きは、今いくつかの理由で続けにくくなっています。参加する側も知っておくと、行事の見え方が変わります。
煙と場所の問題
屋外での焼却は、廃棄物処理法で原則として禁じられていますが、風俗習慣や宗教上の行事に必要なものは例外とされています。ただし、例外だからといって何を燃やしてもよいわけではなく、持ち込まれたプラスチックなどを燃やせば問題になります。さらに、多くの地域では火災予防の条例に基づいて、消防署へ事前に届け出ることが求められています。
住宅が増えた地域では、煙やにおい、灰が洗濯物に付くことへの苦情から、会場探しに悩む例があります。田んぼが宅地になり、川沿いの場所が管理上使えなくなった地域もあります。
担い手の問題
竹を切り出してやぐらを組むには、人手と体力が必要です。子ども会や青年団の縮小で続けられなくなり、やぐらを小さくする、神社の焚き上げに切り替える、数年おきにするといった例が見られます。
住んでいる地域で行事を続けたい、あるいは自治会で担当になったという場合は、消防署と自治体の担当部署に早めに相談します。風速による中止の基準、消火用の水や消火器の準備、終了後の残り火の確認は欠かせません。詳しい決まりは地域で異なるので、最新の情報は自治体や消防の案内で確認してください。
行事が近くにないとき
近くにどんど焼きがなくても、小正月の過ごし方はいくつかあります。
- 1月15日の朝に小豆粥を炊く
- 小さな枝に紅白の丸い餅を付けて、餅花を飾る
- 正月飾りを神社の古札納め所へ納める
- 正月の片付けを15日までに終え、気持ちを切り替える
飾りの処分に迷ったときは、まず神社に尋ね、受け付けがなければ、金属やプラスチックを外し、紙に包んで塩を振り、自治体の分別に従って出す方法があります。大切なのは手順そのものより、一年の節目に飾りをきちんと片付けることです。
まとめ
小正月は、満月の日を正月としたころの名残とされる、もう一つの正月です。大正月が年神様を迎える行事なら、小正月は実りを前もって祝い、神様を見送り、暮らしへ戻っていく行事です。どんど焼きはその中心にあり、宮中の三毬杖と村の火の信仰が重なって、土地ごとに違う形で伝わってきました。
参加するときに気をつけることは三つです。受け付ける物を確かめること、金属やプラスチックを外すこと、化学繊維の服を避けて風下に立たないこと。行事の中身は地域ごとに違うので、案内の内容が何より優先です。
最初の一歩として、今年の正月飾りを買う前に、自分の地域のどんど焼きの日程を調べてみましょう。市区町村の広報、近くの神社の掲示、自治会の回覧が手がかりになります。日程が決まったら、カレンダーの1月15日のそばに「飾りを納める」と書き、その朝の分の小豆を買っておくと、小正月を一度きちんと過ごせます。
よくある質問
どんど焼きはいつ行われますか?
もとは1月14日の夜から15日の朝にかけての行事でしたが、今は成人の日の前後の週末に行う地域が増えています。九州の鬼火焚きのように1月7日前後に行う所もあります。日程は神社の掲示や自治会の回覧、市区町村の広報で確かめるのが確実です。
どんど焼きと左義長は違うものですか?
同じ系統の行事で、地域によって呼び名が違うと考えてかまいません。左義長は宮中の三毬杖に由来する古い呼び名で、どんど焼き、とんど、さいの神焼きなどは各地の呼び方です。ただ、飾りを焼くだけの所から、山車や踊りを伴う祭りまで、中身の幅は広くあります。
プラスチックの付いたしめ飾りは持って行けますか?
多くの会場では、プラスチック、金属、ビニール袋を外してから出すよう求めています。外せない部品がある飾りは受け付けない所もあります。可否は主催者によって違うので、案内を確かめ、不明な物は持ち込まず問い合わせるのが無難です。
どんど焼きの団子にはどんな意味がありますか?
この火で焼いた団子や餅を食べると、一年を無病息災で過ごせると言い伝えられています。神様を送る清らかな火で調理したものを身に取り込む、という考え方です。小さな子どもや高齢の人には小さく切って渡すなど、のどに詰まらせないよう気をつけます。
近くにどんど焼きがないとき、正月飾りはどうすればよいですか?
神社の古札納め所が受け付けているか確かめるのが最初の手です。受け付けがない場合は、飾りから金属やプラスチックを外し、紙に包んで塩を振り、自治体の分別に従って出す方法が一般的です。感謝の気持ちを込めて扱えば、形式にこだわりすぎなくてもよいと言われています。










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