中国語のピンインと声調の基本|四声の出し方と、日本人がつまずく発音のポイント
母音(韻母)でつまずきやすいところ
韻母は、単母音と、母音の組み合わせ、鼻音で終わるものに分けられます。ローマ字読みのままでは通じにくいものを中心に見ていきます。
e と ü
単独の e は、日本語の「エ」ではありません。口を半開きにして、喉の奥から「ウ」と「オ」の中間のような音を出します。「饿(è、おなかがすいた)」などがこの音です。ただし、ie、üe、ei のように組み合わさると「エ」に近い音になります。
ü は、唇を「ウ」の形に丸めたまま「イ」と言う音です。日本語にはない音で、口の形を保つのがポイントです。鏡を見ながら、唇が丸く突き出た状態で「イ」と言えているかを確かめます。
なお、j、q、x、y のあとに来る ü は、点を省いて u と書きます。「去(qù)」や「鱼(yú)」は、見た目は u でも、実際の音は ü です。ここは読み間違いが多いところなので、注意して覚えます。
zhi、chi、shi、ri、zi、ci、si の i
これらの音節の i は、「イ」とは発音しません。zhi、chi、shi、ri では、そり舌の構えのまま声を出した、こもった音になります。zi、ci、si では、舌先を前歯の裏に近づけたまま、口を横に引いた「ウ」に近い音になります。i の字に引きずられて「ジ」「チ」「シ」と読むと、別の音に聞こえてしまいます。
-n と -ng の区別
an と ang、en と eng、in と ing のように、中国語では鼻音で終わる音節を二種類に分けます。日本語の「ン」は一種類として意識されていますが、実は次のように発音の位置が変わっています。
- 「案内(あんない)」の「ン」:舌先が上の歯ぐきにつく → -n に近い
- 「案外(あんがい)」の「ン」:舌の奥が持ち上がる → -ng に近い
-n は舌先を上の歯ぐきにつけて終わり、-ng は舌の奥を持ち上げ、口を開いたまま鼻に抜けて終わります。「an は前、ang は奥」と覚え、自分の舌の位置を意識しながら言い分けてみます。
y と w のつづり
声母のない音節では、i、u、ü で始まるときにつづりが変わります。
- i で始まる:yi(衣)、ya(压)、ye(也)
- u で始まる:wu(五)、wa(瓦)、wo(我)
- ü で始まる:yu(鱼)、yue(月)
y や w は独立した子音というより、つづりの決まりとして付いていると考えると理解しやすくなります。
省略されたつづり
ピンインには、本来の母音の一部を省いて書くつづりがあります。代表的なのが iu、ui、un の三つです。
- iu は、本来 iou の o を省いた形です(六 liù)。実際の発音では、特に第三声や第四声で、間に軽い「オ」の響きが聞こえることがあります。
- ui は、本来 uei の e を省いた形です(对 duì)。「ドゥイ」より「ドゥエイ」に近く聞こえることがあります。
- un は、本来 uen の e を省いた形です(村 cūn)。
つづりだけを見て読むと音が足りなくなりやすいところなので、音声を聞きながら、省かれた母音の響きを確かめておくと安心です。
日本語の知識を生かす
日本語話者は、漢字の形と意味をすでに知っているという点で、中国語の学習に有利なところがあります。発音についても、日本語の音読みとの対応を知っておくと、単語を覚える手がかりになります。
音読みとの対応
日本語の音読みの多くは、昔の中国語の発音をもとにしています。現在の中国語の発音とはかなり変わっていますが、いくつかの傾向が見られます。
- 音読みが「ン」で終わる漢字は、中国語では -n で終わることが多い(安 ān、山 shān、新 xīn)。
- 音読みが「エイ」「オウ」「ョウ」のように長くのびる漢字は、中国語では -ng で終わることが多い(生 shēng、東 dōng、明 míng)。
- 音読みが「ツ」「ク」「キ」などで終わる漢字は、中国語では子音で終わらず、短い一音節になる(一 yī、学 xué、国 guó)。
この傾向は、-n と -ng のどちらか迷ったときの手がかりとして使う学習者もいます。ただし例外もあるので、あくまで覚えるときの補助として使い、最終的には一語ずつ辞書や音声で確かめます。
同じ漢字でも意味が違う語
漢字が同じでも、日本語と意味が違う語があります。「手紙(shǒuzhǐ)」は中国語ではトイレットペーパー、「汽车(qìchē)」は自動車を指します。発音の練習と合わせて、意味の違う語を一つずつ確かめる習慣をつけると、思い込みによる誤解を防げます。
漢字に頼りすぎない
漢字を見ると意味が分かるため、読み方を飛ばして覚えたつもりになりやすいのも、日本語話者によくある落とし穴です。単語を見たら、必ずピンインと声調を声に出して確かめる。この一手間を続けると、聞き取りと会話の力が大きく変わってきます。
毎日の練習のしかた
発音は、知識として理解するだけでは身につきません。短い時間でもよいので、毎日声に出す習慣を作るのがいちばんの近道です。


二音節の組み合わせで練習する
中国語の単語は二音節のものが多く、声調の組み合わせは、軽声を含めると二十通りほどになります。教科書には、この組み合わせを表にした練習ページがあることが多いので、一日一行ずつ読み上げると、単語の声調が自然に身につきやすくなります。一音節ずつの練習だけでは、単語になったとたんに声調が崩れることがよくあります。
録音して聞き比べる
自分の発音は、話しているときには客観的に聞き取れません。スマートフォンで録音し、お手本の音声と聞き比べると、どこが違うのかが分かります。特に、第一声の高さが保てているか、第三声が上がりすぎていないかは、録音で確かめやすいポイントです。
手を動かしながら言う
声調に合わせて、手で高さの変化をなぞりながら発音する方法もあります。第一声は横にまっすぐ、第二声は斜め上に、第三声は低く、第四声は斜め下に手を動かします。体の動きと結びつけると、声調の感覚がつかみやすくなります。
教材と音声の選び方
発音の練習では、音声の付いた教材を選ぶことが何より大切です。入門書を選ぶときは、次の点を確かめておくと失敗が少なくなります。
- 発音の章が十分に厚く、声母・韻母・声調が一つずつ説明されているか
- すべての例に音声があり、繰り返し再生しやすい形で提供されているか
- 大陸の標準語(簡体字・ピンイン)か、台湾の発音(繁体字・注音符号)か、目的に合っているか
- 声調の組み合わせ表や、聞き分けの練習問題があるか
教材を何冊も並行して使うより、一冊の発音の章を何度も繰り返すほうが、最初のうちは効果が出やすいものです。音声は、ゆっくりした速さのものから始め、慣れてきたら自然な速さのものに移ります。
単語は声調とセットで覚える
単語を覚えるときは、漢字と意味だけでなく、ピンインと声調を必ず一緒に覚えます。あとから声調だけを覚え直すのは大変です。単語カードを作るなら、表に漢字、裏にピンインと意味を書き、声に出して答えを確かめます。思い出す練習を繰り返す方法は、アクティブリコールとは?社会人の学びに使う復習のやり方とコツでも紹介しています。
よくあるつまずきと判断のしかた
発音の練習を続けていると、多くの人が同じようなところで迷います。
- 第四声ばかりになる:日本語話者は、語尾を下げる癖が出やすく、第一声が第四声のように聞こえることがあります。第一声は「高さを最後まで保つ」ことを意識します。
- 第二声と第三声の区別がつかない:どちらも低いところから始まるように感じるためです。第二声は「上がりきる」、第三声は「低く抑える」と、終わり方の違いに注目すると区別しやすくなります。
- ピンインをローマ字読みしてしまう:特に e、ü、i、-ng は要注意です。読み方が日本語のローマ字と違う文字を、自分用の一覧にまとめておくと便利です。
- 聞き取れない:最初から聞き取れないのは当然です。知っている単語を、お手本の音声でまねる練習を続けると、聞き取りも少しずつ追いついてきます。
外国語の文字と音の対応を一つずつ押さえていく考え方は、スペイン語の発音と読み方の基本|つづりどおりに読むための文字のルールとアクセントの位置とも共通しています。言語は違っても、「つづりの規則を知る」「声に出して確かめる」という手順は同じです。
発音の細かい部分は、文字の説明だけでは伝わりにくいものです。教材に付いている音声や、ネイティブの話す音声を必ず聞きながら練習してください。可能であれば、講師や話者に一度聞いてもらうと、自分では気づきにくい癖が分かります。
一歩進んだ人向けの工夫
基本の発音に慣れてきたら、次のような点にも目を向けると、より自然な中国語に近づきます。
儿化(アル化)
北方の話し言葉では、語の終わりに「儿(er)」を付けて、舌を反らせた音で終える「儿化」がよく使われます。「一点儿(yìdiǎnr)」「哪儿(nǎr)」などが代表的な例です。地域によって使う頻度が異なるので、教材の音声を参考にしながら慣れていくとよいでしょう。
文全体のイントネーション
単語ごとの声調に加えて、文全体にも自然な強弱やリズムがあります。すべての音節をはっきり同じ強さで言うと、ぎこちなく聞こえます。慣れてきたら、短い文を丸ごと音声に合わせて読む「シャドーイング」に挑戦すると、リズムがつかみやすくなります。
ピンイン入力を使ってみる
パソコンやスマートフォンで、中国語のピンイン入力を設定してみるのもよい練習です。ピンインをつづって変換候補から漢字を選ぶので、正しいつづりを覚えるきっかけになります。ü は多くの入力方式で v のキーで代用できます。
まとめ
中国語の発音は、ピンインのしくみを理解し、四つの声調と、日本語にない音を一つずつ押さえていけば、少しずつ身についていきます。第一声は高さを保つ、第三声は低く抑える、有気音は息の強さで区別する、-n と -ng は舌の位置で言い分ける。こうしたポイントを知っているだけでも、練習の質は大きく変わります。
まずは今日、mā má mǎ mà を声に出して録音し、お手本の音声と聞き比べてみてください。違いが分かったら、その一つを直すところから始めると、無理なく発音の練習を続けられます。
よくある質問
ピンインを覚えずに漢字だけで勉強できますか?
漢字の意味は日本語の知識で推測できることも多いのですが、読み方は日本語の音読みと大きく異なります。発音と声調を身につけるには、ピンインを読めるようになるのが近道です。最初の数週間をピンインに集中させると、その後の単語の覚え方が楽になります。
声調を間違えると通じないのですか?
声調が違うと別の単語になることがあるため、単語だけを言うと通じにくくなる場合があります。一方で、文の流れや場面から相手が推測してくれることも多いので、最初から完璧を目指すより、よく使う単語から正しい声調で覚える意識を持つのが現実的です。
第三声がうまく出せません。どうすればよいですか?
第三声は、低く抑えたまま発音する意識を持つと出しやすくなります。単独で言うときや文末では最後に少し上がりますが、文中ではほとんど上がりません。「低く、沈めるように」と考えて練習すると安定しやすいでしょう。
ピンインの「e」は「エ」と読めばよいですか?
単独の e は日本語の「エ」とはかなり異なり、口を半開きにして喉の奥から出す、「ウ」と「オ」の間のような音です。ただし ie や ei のように組み合わさると「エ」に近い音になるので、つづりごとに覚えていくのがおすすめです。
台湾の中国語もピンインで勉強できますか?
台湾では、発音の表記に注音符号(ボポモフォ)が使われることが多く、文字も繁体字が中心です。発音そのものには共通する部分が多いため、ピンインで学んだ知識は役立ちますが、教材を選ぶときは目的の地域に合わせると混乱が少なくなります。










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