聖ルチア祭の由来|12月13日の光の祭り、北欧の行列とサフランパン
サフランパン「ルッセカット」の由来
聖ルチア祭に欠かせないのが、黄色いパン「ルッセカット」です。ルッセはルチア、カットは猫を意味します。S字に丸めた形の両端に、レーズンを一粒ずつ埋めます。

名前の由来については、北方民族博物館が興味深い説明をしています。もとになったのはオランダや北ドイツの「ドゥイヴェカーテル」というパンで、17世紀にオランダ人がスウェーデンの港町イェーテボリに持ち込んだとされます。スウェーデンでは「ディーヴェルスカッテル」と呼ばれ、音からは「悪魔の猫」とも取れる名前になりました。のちに13日と結びついて、ルッセカットと呼ばれるようになります。
黄色いパンにサフランが使われるようになったのは、19世紀の終わりごろからとされています。サフランはクロッカスの仲間の花のめしべを乾かした香辛料で、一輪からわずかしか取れないので高価です。貴重な香辛料を使う点でも、特別な日のパンでした。
形はS字が多いものの、もとは二つの渦を組み合わせた形、十字に重ねた形など、地域によりいろいろありました。また、黄色の理由については「悪魔を遠ざける」「光を表す」といった説明がされますが、後からの解釈も混ざっています。はっきりしているのは、冬のごちそうとして親しまれてきたことです。
コーヒーと一緒に朝に食べるのが今の定番で、学校や職場の行列の後にも配られます。しょうがクッキーと、スパイス入りの温かい飲みものが一緒に出ることもあります。
家で焼くルッセカットの手順
ここでは、やわらかい生地の配合を紹介します。発酵の見極めが初めての方は、パン生地の発酵の基本を先に読むと進めやすくなります。分量は8個分の目安です。粉の種類やオーブンで変わるので、水分と焼き時間は調整してください。
| 材料 | 分量の目安 |
|---|---|
| 強力粉 | 300g |
| 牛乳 | 150ml前後 |
| 砂糖 | 50g |
| 無塩バター | 50g |
| インスタントドライイースト | 5g |
| 塩 | 3g |
| サフラン | ひとつまみ(めしべ20本ほど) |
| レーズン | 16粒 |
| 溶き卵(つや出し) | 少量 |

- 牛乳を人肌より少し熱い程度に温め、サフランを加えて冷蔵庫で一晩、短くても30分おきます。指先で軽くつぶしてから入れると色が出やすくなります。
- ボウルに強力粉、砂糖、イースト、塩を入れて混ぜます。イーストと塩は別々の場所に置きます。
- 人肌に温めたサフラン牛乳を少しずつ加え、まとまったら台に出して、表面がなめらかになるまでこねます。
- 室温に戻したバターを加え、さらにこねます。薄く伸ばしても破れにくくなるのが目安です。
- 丸めてボウルに入れ、ラップをかけて暖かい場所に置き、2倍ほどに膨らむまで発酵させます。
- 8等分して丸め、15分ほど休ませます。
- 長さ25cmほどの棒状に伸ばし、両端を反対向きに巻いてS字にします。
- 天板に並べ、ひと回り大きくなるまで二次発酵させます。巻きの中心にレーズンを1粒ずつ押し込みます。
- 溶き卵を塗り、200度ほどに予熱したオーブンで10〜12分焼きます。焼き色が付いたら取り出し、網の上で冷まします。
失敗しやすいのは、焼きすぎです。小さなパンなので、乾くと香りも食感も落ちます。余った分は当日のうちに冷凍し、食べる前に軽く温めます。発酵時間は室温で大きく変わるので、時計より大きさを基準にしてください。
サフランは必ず食品として売られているものを使ってください。庭に咲く似た花には有毒のものがあり(イヌサフランなど)、自分で摘んで使うのは危険です。また、頭にろうそくを載せる再現は火災ややけどの危険があります。家庭で楽しむときは、電池式のあかりを使ってください。
北欧以外の祝い方、シチリアから東ヨーロッパまで
聖ルチアの日の祝い方は、土地によってかなり違います。北欧の行列のイメージだけで語ると、別の豊かな面が見えなくなります。
シラクサの行列と小麦の料理
ルチアの地元シラクサでは、聖女の銀の像が担がれ、町を行列します。像は教会に移され、一週間ほど後に大聖堂へ戻ります。古くから町の大きな祭りとして続いてきたものです。
シチリアでは、この日にパンやパスタを控え、ゆでた小麦の粒を使う料理「クッチャ」を食べる習慣があります。飢饉のときに、聖ルチアの日に穀物の船が着き、人々が粉にする間も待てず粒のまま煮て食べた、という言い伝えと結びついています。
北イタリアでは子どもに贈り物
ベルガモなど北イタリアの一部では、12月12日の夜に聖ルチアが子どもに贈り物を届けると語られます。ロバを連れて訪ねるので、干し草を置いておく家もあるそうです。サンタクロースの話に似た役割を、この地域ではルチアが担っています。
ハンガリーとクロアチアの小麦まき
ハンガリーやクロアチアなどでは、この日に皿に小麦をまき、クリスマスまでの伸び具合で翌年の実りを占う習慣が知られています。ハンガリーにはさらに、13日から少しずつ椅子を作り、クリスマスの夜にそれに立つと魔女が分かる、という民話もあります。
デンマークの1944年、フィンランドの大聖堂
デンマークの行列は、ドイツ占領下の1944年に、暗い時代の中で静かな抗議の意味を持って始まったとされています。ノルウェーへの広がりは主に1950年代からです。フィンランドでは、スウェーデン語系の人々の伝統を受け継いで、ヘルシンキの大聖堂でルチアが戴冠される行事が続いています。1990年代にはバルト諸国でも見られるようになりました。

日本で聖ルチア祭を楽しむ考え方
日本でルチアの行列を見られる機会は多くありません。北欧の文化を紹介する団体や、関係する教会、学校などが催しを開くことがあります。開催の有無や参加の条件は年によって変わるので、見に行くときは主催者の案内を確かめてください。宗教行事として行われる場では、写真の可否も先に確認します。
家庭で取り入れるなら、行事の中身を小さくするのが無理のないやり方です。朝に少し早く起き、明かりを落とした部屋で電池式のあかりを灯して、ルッセカットとコーヒーを用意する。これだけでも、冬の朝の過ごし方としては十分です。クリスマスに向けた準備を、アドベントの習慣と合わせて楽しむのもよいでしょう。ディワリの由来と過ごし方や、冬至の過ごし方と並べて読むと、暗い季節の灯りの行事がそれぞれの土地でどう違うのかが見えてきます。
調べるときに気を付けたいのは、「北欧の古い光の祭り」「太陽信仰の名残」といった説明です。冬の光への願いが背景にあるのは確かでも、今の行列の形を古代にまでさかのぼる証拠はありません。一方で、歴史が新しいからといって、価値が低いわけでもありません。100年ほどの間に育った行事が、今の人々の冬を支えていることこそ、この祭りのおもしろさと言えます。
まとめ
聖ルチア祭は、シチリアの殉教者の記念日が、暦のずれによって一年でいちばん長い夜と重なり、北欧の農村の言い伝えや屋敷の余興、クリスマスの天使の姿と混ざり合い、20世紀の新聞によって全国の行事になったものです。サフランパンも、オランダ系のパンの名が形を変えて生まれたと説明されています。
古い祭りが一本の線でつながっているのではなく、別々の流れが12月13日に集まってできた行事だと考えると、見え方が変わります。
最初の一歩として、今年の12月13日の朝は、部屋の明かりを落として電池式のあかりを一つ灯してみてください。余裕があれば、前の晩にサフランを牛乳に浸しておき、ルッセカットを焼いてみると、黄色い生地の香りとともに行事が少し身近になります。
よくある質問
聖ルチア祭はいつですか?
毎年12月13日です。スウェーデンでは朝や夕方に学校、職場、教会などで行列が行われ、クリスマス前の大きな行事として親しまれています。曜日によって催しの日を前後させる場合もあるので、見に行くときは主催者の案内を確かめてください。
聖ルチアはどこの国の人ですか?
伝承では、3世紀末から4世紀初めのシチリア島シラクサの女性です。北欧の人ではありません。遠いシチリアの聖人の記念日が、名前の意味と暦の事情から、北欧で光の行事に育ちました。
なぜ冬至ではない12月13日が光の日なのですか?
以前使われていたユリウス暦では暦と季節のずれが広がり、14世紀ごろには冬至が12月13日ごろに来ていたためです。暦が改められて冬至の日付は動きましたが、祝日は13日のまま残り、「長い夜」の記憶も受け継がれました。
「サンタルチア」の歌と関係はありますか?
旋律は同じです。もとは19世紀のナポリの舟歌で、ナポリの海辺の地区サンタ・ルチアを歌ったものでした。これに別の歌詞を付けた歌が北欧で行列の歌になったので、聖人をたたえる内容はスウェーデン語版の歌詞で加わったものです。
ルッセカットはサフランなしでも作れますか?
作れますが、色と香りが大きく変わり、別のパンに近くなります。少量のサフランでも香りは十分に出るので、できれば食品として売られているものを使ってください。庭の植物を摘んで代用することは、有毒の植物と間違えるおそれがあるので避けます。








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