感謝祭(サンクスギビング)の由来|1621年の収穫祭から国の祝日になるまでと、七面鳥の食卓
先住民の視点と、語られ方の変化
感謝祭の始まりの物語は、長いあいだ「移住者と先住民が仲良く食卓を囲んだ」という、明るい話として語られてきました。けれども近年は、その語られ方を見直す動きも広がっています。
物語から抜け落ちてきたこと
1621年の収穫祭のあと、移住者がさらに増えるにつれて、先住民の人びとは土地を失い、持ちこまれた病気や争いによって大きな被害を受けていきました。ワンパノアグの人びとにとって、移住者の到来は、暮らしが大きく変わっていく始まりでもありました。
「みんなで仲良く食卓を囲んだ」という部分だけを切り取った物語は、こうしたその後の歴史を見えにくくしてしまう、という指摘があります。
「喪に服す日」として過ごす人びと
1970年からは、感謝祭の日にプリマスで、先住民の人びとが自分たちの歴史を思い起こす集まりが開かれています。この日を祝いの日ではなく、喪に服す日として過ごす人もいるのです。
学校の授業でも、かつては子どもたちが移住者と先住民の衣装をまねて劇をする、といった行事がよく行われていましたが、現在は先住民の文化や歴史を正しく伝える内容に見直す学校が増えているといわれます。
二つの見方を知っておく
感謝祭を楽しむ人の多くは、家族と過ごす温かい祝日として大切にしています。一方で、同じ日をつらい歴史とともに思い出す人もいます。どちらか一方だけが正しいというより、両方の見方があることを知っておくと、アメリカの人と感謝祭の話をするときにも、より深く理解しながら話を聞けるはずです。
世界の収穫を祝う行事と、日本の新嘗祭
秋の収穫を祝い、感謝する行事は、アメリカだけのものではありません。農耕を営んできた多くの地域に、それぞれの形で収穫の祝いがあります。
世界の収穫の祝い
| 地域 | 行事 | 時期の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 感謝祭 | 11月の第4木曜日 | 家族で七面鳥を囲む |
| カナダ | 感謝祭 | 10月の第2月曜日 | アメリカより早い時期に祝う |
| ドイツなど | 収穫感謝祭 | 秋の日曜日(地域による) | 教会に収穫物を飾って感謝する |
| イギリス | ハーベスト・フェスティバル | 秋(教会や学校による) | 食べ物を持ち寄り、寄付にも回す |
| 韓国 | 秋夕(チュソク) | 旧暦の8月15日ごろ | 先祖を敬い、家族が集まる |
| 日本 | 新嘗祭 | 11月23日 | 新しい穀物を神に供える |
日付や形は違っても、「その年の実りを、家族や地域、神や先祖とともに分かち合う」という点は共通しています。ハロウィンの起源とされるサウィン祭も、もともとは収穫を終えて冬を迎える区切りの祭りでした。ハロウィンの由来と読み比べると、秋の終わりに人びとが何を大切にしてきたかが見えてきます。
新嘗祭と勤労感謝の日
日本では、宮中や神社で、古くから「新嘗祭(にいなめさい)」という祭りが行われてきました。その年に収穫された新しい米などの穀物を神に供え、収穫に感謝する祭りです。
この新嘗祭が行われる11月23日は、戦後に「勤労感謝の日」という国民の祝日になりました。祝日の法律では、勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝し合う日と説明されています。名前は「勤労」ですが、その背景には「秋の収穫に感謝する」という古い祭りがあるのです。
アメリカの感謝祭と勤労感謝の日は、直接のつながりはありませんが、ほぼ同じ11月下旬に、収穫と感謝にかかわる祝日がそれぞれの国にあるのは興味深い重なりです。冬に向かう時期の日本の行事については、冬至の風習でも紹介しています。
日本の家庭で感謝祭の食卓を楽しむ
由来を知ったら、日本の家庭でも感謝祭の食卓を少しまねてみると楽しいものです。七面鳥の丸焼きはハードルが高いので、手に入りやすい食材で雰囲気を出す方法から考えます。
七面鳥の代わりに使えるもの
日本では、七面鳥は冷凍で年末の時期を中心に売られていることがありますが、どこでも手に入るわけではありません。一羽が大きく、家庭のオーブンに入らないこともあります。少人数なら、次のようなもので代えると無理がありません。
- 鶏の丸焼き(丸鶏)。小ぶりな一羽なら家庭のオーブンにも入りやすい
- 鶏の骨付きもも肉。焼き時間が短く、切り分けやすい
- 鶏むね肉や豚肉のロースト。ハーブと塩で下味をつけて焼く
冷凍の鳥を扱うときの注意
冷凍の七面鳥や丸鶏を使う場合は、冷蔵庫の中で時間をかけて解凍するのが基本です。大きなものほど解凍に時間がかかり、七面鳥なら数日かかることもあります。常温で長く置いて解凍すると、表面だけが温まって傷みやすくなるので避けましょう。
焼くときは、中心まで十分に火を通すことがいちばん大切です。厚みのある部分や、もものつけ根などは火が通りにくいので、料理用の中心温度計で確かめると安心です。鶏肉などは、中心部が75℃で1分以上加熱されることが目安とされています。最新の目安は、厚生労働省など公的機関の情報で確認してください。
詰め物(スタッフィング)を鳥の中に詰めて焼くと、詰め物の中心まで熱が届くのに時間がかかります。家庭で作るときは、詰め物は耐熱皿で別に焼くほうが、火の通りを確かめやすく安心です。
少人数の感謝祭の献立の組み立て方
- 主菜を決める。丸鶏か骨付きもも肉をオーブンで焼くのが手軽です。
- 付け合わせを2つ選ぶ。マッシュポテトと、さつまいもを焼いたものが作りやすい組み合わせです。
- ソースを用意する。焼いたときに出た肉汁でグレイビーを作り、クランベリーソースの代わりに、酸味のあるジャムを少し添えます。
- デザートを決める。日本のかぼちゃで作るパンプキンパイは、裏ごしして水分を飛ばすと、なめらかに仕上がります。
- 食卓を囲んだら、一人ずつ「今年感謝していること」を一つずつ話してみます。

残りものの扱い
大きな鳥を焼くと、食べきれない分が出ることがよくあります。残りは室温に長く置かず、粗熱がとれたら骨から外して小分けにし、早めに冷蔵庫に入れましょう。翌日はサンドイッチやスープにすると、アメリカの感謝祭の翌日の雰囲気も味わえます。
まとめ
アメリカの感謝祭は、1621年のプリマスでの収穫の祝いを始まりの物語として、19世紀の祝日化の運動、1863年の大統領の宣言、1941年の法律を経て、11月の第4木曜日に落ち着いた祝日です。七面鳥やパンプキンパイの食卓は、北アメリカの秋の恵みと、大人数で分け合う工夫から生まれ、19世紀以降に定番として広まりました。その一方で、先住民の人びとにとっては、つらい歴史を思い起こす日でもあります。
最初の一歩として、今年の11月の第4木曜日か、その近くの週末に、丸鶏やかぼちゃを使った小さな感謝祭の食卓を用意してみてください。食事の前に、一人ずつ今年感謝していることを話し、勤労感謝の日や新嘗祭の話にも触れてみると、遠い国の祝日と日本の秋の行事が、同じ「収穫と感謝」の流れでつながって見えてくるはずです。
よくある質問
アメリカの感謝祭はいつですか?
アメリカでは11月の第4木曜日が感謝祭の祝日です。毎年日付が変わり、11月22日から28日のいずれかになります。翌日の金曜日も休みにする職場や学校が多く、4連休として過ごす家庭が少なくありません。
感謝祭は何に感謝する日なのですか?
もともとは秋の収穫を神に感謝する意味合いが強い行事でした。現在は宗教色が薄まり、家族や友人と集まって食事をし、一年の恵みや身近な人への感謝を確かめ合う日として受け止められています。
なぜ感謝祭に七面鳥を食べるのですか?
七面鳥は北アメリカに昔から暮らしていた鳥で、秋に手に入りやすく、大家族で分けられる大きさがあったことが理由として挙げられます。19世紀に感謝祭を祝日にしようと呼びかけた人たちが、七面鳥を中心にした食卓を紹介したことも、定番になる後押しになったといわれます。
カナダにも感謝祭はありますか?
カナダにも感謝祭があり、10月の第2月曜日が祝日です。北にあって収穫の時期が早いことなどが理由として説明されます。七面鳥やかぼちゃのパイを囲む点はアメリカと似ていますが、成り立ちの歴史は別のものです。
日本の勤労感謝の日と関係はありますか?
直接のつながりはありません。勤労感謝の日は、宮中で古くから行われてきた新嘗祭の日をもとに、戦後に定められた祝日です。ただ、秋の収穫に感謝するという点では、アメリカの感謝祭と通じるところがあります。









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