ホールパート法の使い方|全体を先に示す話し方の例文、PREP法との使い分け
話すときの言葉のつなぎ方
組み立てができたら、実際の話し方でも全体の構造を見せます。いちばん大切なのは、「今どこを話しているのか」を聞き手に知らせ続けることです。

「一つ目は」「二つ目は」と言うと、順番がはっきりします。話が長くなる場合は、項目の間で少し間を置くと、聞き手が頭の中で区切りをつけられます。
また、部分の説明は、それぞれ同じくらいの長さにすることを意識します。一項目めに10分かけて、残りの二項目を1分ずつで終わらせると、聞き手は「三つの話」という見取り図を信頼しなくなります。時間が足りないと分かったら、「時間の都合で三点目は要点だけお伝えします」と一言添えます。
会議で質問が入ったときは、見取り図が役に立ちます。「それは三点目の予算のところで説明します」と答えれば、話の流れを崩さずに済みます。答えたあとは「では二点目に戻ります」と言って、もとの項目に戻ります。
結論から話すこととの関係については、結論から話すコツでも扱っています。結論が一つで済むならそちらのほうが短く、項目が複数あるならホールパート法が役に立つ、という関係です。
時間に合わせて配分する
話す時間が決まっている場面では、全体と部分の長さを先に割り振っておくと、時間内に収まります。話す速さは人によって違いますが、落ち着いて話すと1分におよそ300字前後が一つの目安です。
| 話す時間 | 最初の全体 | 部分(1項目あたり) | 最後の全体 | 原稿の量の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 1分 | 10秒 | 15秒ほど(三項目) | 5秒 | 300字前後 |
| 3分 | 20秒 | 45秒ほど(三項目) | 25秒 | 900字前後 |
| 5分 | 30秒 | 1分20秒ほど(三項目) | 30秒 | 1500字前後 |
大切なのは、最初と最後を短く保つことです。5分の話でも、全体の説明は30秒で足ります。時間が足りなくなったときに削るのは部分の細部であり、最後の全体は残します。最後の一言がないと、聞き手はこのあと何をすればよいのかが分からないまま話が終わるからです。
急に話を振られたとき
会議で突然「どう思いますか」と振られたときは、準備の時間がありません。それでも使える方法があります。
- 「少しよろしいですか」「そうですね」と一呼吸置いて、話すことを二つだけ頭の中で決めます。
- 「気になる点が二つあります」と言います。三つ以上は即興では数えきれなくなるので、二つにとどめます。
- 二つ目が思いつかないなら、「まず一点」と言って話し始め、終わったら「以上です」と短く締めます。
数を断言する自信がないときは、「いくつかあります」と言っても構いません。「まず」と「次に」だけを使い、話しながら順に述べていきます。数の宣言よりも、項目を分けて話す姿勢のほうが聞き手の助けになります。
オンライン会議では見取り図を画面に出す
オンライン会議では、相手の表情が見えにくく、途中で音声が途切れることもあります。そのため、対面のとき以上に見取り図が役に立ちます。項目名を箇条書きにして画面に共有したままにするか、チャットに最初に貼っておきます。途中から参加した人も、今どこを話しているかが分かります。
文章と資料への応用
ホールパート法は話し方として紹介されることが多いのですが、文章にも同じように使えます。
メールの場合
メールでは、冒頭に「ご確認いただきたい点が二つあります」と書き、項目を番号で分けます。相手は全部読まなくても、何件の対応が必要かを把握できます。
件名:来月の研修について(確認2点)
山田様
来月の研修について、確認が2点あります。
1. 会場:第三会議室でよろしいでしょうか。
2. 開始時刻:10時開始に変更できますでしょうか。
水曜日までにご返信いただけますと助かります。
件名にも項目の数を入れておくと、相手が返信の手間を見積もりやすくなります。ビジネスメール全般の書き方については、ビジネスメールの書き方にまとめています。
報告書やブログの場合
報告書では、最初に要約を置き、見出しごとに詳しく書き、最後にまとめと今後の予定を書くと、ホールパート法の形になります。各見出しの長さをそろえると、読む人の予想が狂いません。
プレゼン資料の場合
プレゼンでは、2枚目に目次のスライドを置くのが基本です。各章の最初に、同じ目次をもう一度表示して、今の章だけ色を変えると、「今どこを話しているか」が一目で分かります。最後のスライドでは、項目のまとめと、聞き手に求める行動を示します。
- 表紙
- 目次(全体を示す)
- 第一章の扉と本文(部分)
- 第二章の扉と本文(部分)
- 第三章の扉と本文(部分)
- まとめと次の行動(全体に戻る)
こうすると、資料そのものがホールパート法の構造になります。
よくある失敗と直し方
ホールパート法はやさしい方法ですが、使い慣れていないと決まった失敗に陥りがちです。

数を言ったのに、話すうちに増える
「三つあります」と言ったのに、話しているうちに四つになったり、三つ目が何だったか忘れたりする失敗です。人前では緊張で起きやすくなります。対策は、話す前に手元のメモに項目名を書いておくことです。完全な原稿ではなく、単語三つで十分です。
もし話の途中で項目を増やしたくなったら、「もう一点だけ補足します」と正直に言えば問題ありません。無理に隠すより、そのほうが聞き手も混乱しません。
全体の説明が長くなる
最初の全体で、各項目の中身まで説明してしまう失敗です。最初に話してよいのは、項目の名前までです。「まず会場ですが、第二会議室で、午後いっぱいで」と話し始めたら、それはもう部分の説明です。
項目が抽象的で頭に残らない
「現状、課題、今後」という項目名は便利ですが、それだけでは内容が伝わりません。「遅れが出ている、原因は確認待ち、明日電話します」のように、中身が想像できる言葉にすると、聞き手はより覚えやすくなります。
全部を型にはめてしまう
用件が一つしかないときに「お伝えしたいことは一つです」と毎回言うと、大げさに聞こえることがあります。「すみません、明日の会議、15時に変わりました」で済む話に、型は要りません。ホールパート法は、複数の項目を伝えるときの道具です。雑談や軽い連絡にまで使う必要はありません。
相手の知りたい順を無視している
項目の順番が話し手の都合になっている場合です。作業をした順に説明すると、聞き手が最も知りたい「今どうなっているか」が最後になることがあります。役員や他部署の人には、最初に影響と判断してほしいことを置き、経緯はあとに回します。同じ内容でも、相手が変われば項目の名前も順番も変えて構いません。現場の担当者には手順の順で、管理職には影響の大きい順で説明する、といった具合です。
一歩進んだ工夫
慣れてきたら、次の工夫を試してみてください。
- 最初の全体で、話す時間も伝える(「5分ほどで三点お話しします」)
- 最後の全体で、聞き手がすることを一つだけ示す
- 録音して聞き直し、項目の長さのばらつきを確かめる
- 質問が多そうな項目は最後に回し、時間の調整役にする
毎日できる練習
話の組み立ては、特別な機会がなくても練習できます。
- 帰り道に、今日あったことを三項目に分けて心の中で話してみる
- ニュースを聞いて、話の項目がいくつあったかを数える
- 人の説明を聞きながら、項目名をメモに取ってみる
- 送信前のメールの冒頭に、用件の数を一行足す
特に二つ目は、良い説明の型を身につけるのに役立ちます。うまく説明する人の話は、聞き終えたあとに項目を思い出しやすいものです。項目を思い出せなかった話は、どこで分かりにくくなったのかを考えると、自分の話し方の参考になります。
まとめ
ホールパート法は、全体を示してから部分を説明し、最後にもう一度全体に戻る組み立て方です。聞き手に見取り図を渡すことで、話の長さと道筋が分かり、内容を理解しやすくなります。項目は二つから四つ、重なりなく、大きさをそろえて並べるのが基本です。一つの主張を伝えるならPREP法、複数の項目を整理するならホールパート法と考えると、使い分けに迷いにくくなります。
最初の一歩としては、次の報告や連絡の前に、メモに項目名を二つか三つ書き出してみてください。そして、話の最初の一文だけ「〇〇について、二点あります」と言ってみます。この一文を入れるだけで、話す側も聞く側も、話の道筋がずいぶん楽に追えるようになります。
よくある質問
ホールパート法とは何ですか?
最初に話の全体像を示し、次に部分を順に説明し、最後にもう一度全体をまとめる話の組み立て方です。「お伝えすることは三つあります」と項目の数と内容を先に示す形が代表的です。聞き手は話の長さと道筋が分かるので、途中で迷いにくくなります。
PREP法とはどう使い分ければよいですか?
一つの結論を理由とともに伝えたいときはPREP法、複数の項目を整理して伝えたいときはホールパート法が向いています。ホールパート法の部分の説明にPREP法を組み合わせることもできます。話の中心が結論か項目の数かで判断すると分かりやすいです。
ポイントは必ず三つにしないといけませんか?
三つである必要はありません。二つでも四つでも、内容に合った数で構いません。ただ、五つ以上になると聞き手が覚えにくくなるので、まとめ直せないか検討します。数を合わせるために内容を削ったり、水増ししたりしないことが大切です。
短い報告でもホールパート法は使えますか?
使えます。30秒の報告でも、最初に「確認事項が二つあります」と言うだけで相手は聞く準備ができます。ただし用件が一つしかないときは、無理に使わず結論から話すほうが自然です。
最後のまとめは必要ですか?
時間が短い場合は省いてもかまいませんが、数分以上の話なら、項目を短く言い直して、相手にしてほしいことを添えるとよいでしょう。全文を繰り返すのではなく、項目名と次の行動だけを述べると、くどくなりません。










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