世界の年越しと新年の習慣|大晦日の過ごし方、12粒のぶどう、春節やノウルーズまで
ヨーロッパの大晦日の夜
ここからは、1月1日の新年を迎える大晦日の夜の過ごし方を、地域ごとに見ていきます。ヨーロッパでは、家族や友人と集まってにぎやかに過ごし、真夜中に乾杯するのが広く見られる形です。
スペインの12粒のぶどう
スペインでよく知られているのが、真夜中に12粒のぶどうを食べる習わしです。大晦日の0時、時計の鐘が12回鳴るのに合わせて、一回ごとに一粒ずつ口に入れていきます。鐘が鳴り終わるまでに12粒を食べきれると、一年の12か月が幸運に恵まれるといわれています。
首都マドリードの広場にある時計の鐘はテレビで中継され、家庭でも画面の鐘に合わせて食べる人が多いそうです。この習わしが広まったのは20世紀の初めごろといわれ、ぶどうが豊作だった年に広まったという話がよく紹介されます。鐘の間隔は思ったより短いので、慌てて笑い出してしまうのも楽しみのうちです。
スコットランドのホグマネイ
スコットランドでは、大晦日とその祝いを「ホグマネイ」と呼びます。昔から、年明け前に家をきれいに掃除し、借りたものを返し、古い年の汚れや心残りを持ち越さないようにする習わしがありました。
よく知られているのが「ファーストフット(最初の足)」です。年が明けて最初に家の敷居をまたいだ人が、その家の一年の運を運んでくると考えられています。訪れる人は、石炭やパン、塩などの小さな贈り物を持っていくのが伝統とされ、背の高い黒髪の男性が縁起がよいといわれてきました。
真夜中に輪になって手をつなぎ、スコットランドの古い歌「オールド・ラング・ザイン」を歌うこともあります。日本で「蛍の光」として知られる曲のもとになった歌です。
ドイツのジルベスター
ドイツ語圏では、大晦日を「ジルベスター」と呼びます。12月31日を記念日とする聖人の名前から来た呼び名です。真夜中には、家族や友人と乾杯し、通りや広場で花火を上げてにぎやかに新年を迎えます。
溶かした金属を水に落とし、固まった形で一年を占う遊びも古くから知られていますが、近年は安全面から、金属の代わりにろうなどを使う形に変わってきているといわれます。また、大晦日にテレビで放送される古い短いコメディ番組を毎年見る、という家庭も多いことで知られています。
デンマークや北欧の楽しい習わし
デンマークでは、年が明ける瞬間に椅子の上から飛び降りて、新しい年へ「跳び込む」という楽しい習わしがあります。また、ためておいた古い皿を友人の家の玄関先で割り、割れた皿の数が多いほど友人に恵まれている、と喜ぶ習わしも紹介されることがあります。
イタリアとギリシャ
イタリアでは、大晦日の食卓にレンズ豆の料理が並びます。小さく丸い豆が硬貨に似ていることから、お金に困らない一年への願いが込められています。赤い下着を身に着けて年を越すと縁起がよい、という言い伝えもあります。
ギリシャでは、新年に「ヴァシロピタ」というケーキを切り分けます。中に硬貨を一枚焼き込んでおき、切り分けたときに硬貨が入っていた人は、その年に幸運が訪れるとされます。切り分ける順番にも決まりがあり、家族の一人ひとりのほか、家や神のための一切れを取り分ける家庭もあるそうです。

南北アメリカの大晦日
南北アメリカでも、ヨーロッパの習わしが土地の文化と混ざり合い、独自の年越しが生まれています。
アメリカのボールドロップ
アメリカのニューヨークでは、タイムズスクエアのビルの上から光る大きな球をゆっくり下ろし、0時ちょうどに下りきる「ボールドロップ」が大晦日の名物です。始まったのは20世紀の初めで、いまでは広場に集まる大勢の人と、テレビの前の人々が一緒に10からのカウントダウンを叫びます。
アメリカ南部では、新年の料理として黒目豆(ブラックアイドピーズ)とコラードグリーンという葉野菜を食べる習わしがあります。豆は硬貨に、緑の葉はお札に見立てられ、豊かな一年への願いが込められているといわれます。
ブラジルの白い服と海
ブラジルでは、大晦日に白い服を着て過ごす人が多く見られます。白には平和や清らかさの意味が込められているといわれます。海辺の町では、年明けに海に入り、七つの波を跳び越えて願いをかける習わしが知られています。海の女神に花を捧げる人もおり、浜辺が白い服の人々で埋まる光景は、ブラジルの年越しを象徴するものになっています。
メキシコや中南米
メキシコをはじめとする中南米の国々にも、スペインから伝わった12粒のぶどうの習わしがあります。ほかにも、空のスーツケースを持って家の周りを歩くと、その年に旅行ができるという言い伝えや、身に着ける下着の色で願いを分ける言い伝えなど、遊び心のある習わしが各地に残っています。
新年に食べる縁起物
国が変わっても、新年の食卓には「願いを込めた食べ物」が並びます。形や名前、色に意味を重ねる考え方は、日本のおせち料理とよく似ています。

| 国・地域 | 食べ物 | 込められた意味 |
|---|---|---|
| 日本 | 年越しそば | 細く長く、また災いを断ち切る |
| スペイン | 12粒のぶどう | 12か月の幸運 |
| イタリア | レンズ豆 | 硬貨に見立てて金運 |
| アメリカ南部 | 黒目豆と葉野菜 | 硬貨とお札に見立てる |
| ギリシャ | ヴァシロピタ | 硬貨を当てた人に幸運 |
| 中国 | 餃子・魚・年糕 | 財宝・余裕・向上 |
| 韓国 | トックク | 年を一つ重ねる |
| ベトナム | バインチュン | 大地と祖先への感謝 |
形を「お金」に見立てる
レンズ豆や黒目豆のように、丸く小さな豆を硬貨に見立てる例は、ヨーロッパや南北アメリカに広く見られます。フィリピンでは、丸い果物を12種類そろえて食卓に飾る習わしがあり、ここでも丸い形が硬貨や豊かさの象徴とされています。
中国の北部では、春節に餃子を食べます。餃子の形が、昔のお金である馬の蹄の形をした銀の塊に似ているため、財運を招くとされています。
言葉の響きに願いを重ねる
中国では、春節の料理に魚を欠かさない家庭が多くあります。中国語で「魚」の発音が「余り」と同じで、「毎年余裕がありますように」という言葉にかけているためです。もち米で作る「年糕」も、「年々高くなる」、つまり年ごとに向上するという意味の言葉と響きが重なります。
日本のおせち料理で、昆布巻きを「よろこぶ」にかけたり、黒豆で「まめに働く」を願ったりするのと、とてもよく似た考え方です。
一つ年を重ねる料理
韓国では、旧暦の新年であるソルラルの朝に、薄く切った餅を入れたスープ「トックク」を食べます。トッククを一杯食べると、一つ年を重ねるといわれ、「トッククを何杯食べた?」と年齢を尋ねる言い回しもあるほどです。白い餅には、清らかな気持ちで新年を始めるという意味が込められているともいわれます。










