餅つきの由来と手順|28日につく理由、臼と杵の準備、もち米の蒸し方と返しのコツ
年末の餅つきの由来と、28日が好まれ29日や31日が避けられる理由を整理し、臼と杵の準備、もち米の浸水と蒸し方、こねとつきの手順、返し手の安全な動きを順に説明します。地域行事で気をつけたい衛生、餅つき機や炊飯器で作る方法もまとめました。

年の暮れになると、地域の集会所や保育園の庭から、杵の音と掛け声が聞こえてくることがあります。かつては多くの家で年末に餅をつき、鏡餅と正月の雑煮の餅を用意していました。今は買った餅で正月を迎える家が大半ですが、餅つきの行事は各地に残っていて、はじめて手伝う機会が突然やってくることもあります。
この記事では、餅つきがなぜ年末の行事になったのか、いつつくのがよいとされるのかを確かめたうえで、臼と杵の準備、もち米の浸水と蒸し方、こねとつきの手順、返し手の動きを順に説明します。地域の行事で欠かせない衛生の考え方と、臼と杵を使わずに家で作る方法もまとめました。
餅つきはなぜ年末の行事になったのか
餅は、古くから祝いの日や祭りの日に食べる「ハレの日」の食べ物でした。ふだん食べるご飯とは違い、手間をかけて作る特別な食べ物だったからです。
米の力を一つに固めた食べ物
稲には霊力が宿ると考えられ、米を集めて固めた餅には、その力が込められていると見なされてきました。正月に年神様へ鏡餅を供え、下げた餅を食べるのは、その力を分けてもらうためだと説明されます。鏡餅の意味や飾り方は鏡餅の飾り方と鏡開きでくわしく紹介しています。
年の暮れに餅をつくのは、年神様を迎える準備の一つです。12月13日ごろからすす払いをして家を清め、松を迎え、最後に供える餅を用意するという流れの中に、餅つきは位置づけられてきました。すす払いから続く段取りはすす払いと大掃除の由来にまとめています。
家ごとの行事から、頼んでつく餅へ
農家では自分の家で作ったもち米を使い、親戚や近所が集まって一日がかりでついていました。つく人と返す人が息を合わせる必要があり、蒸すための火の番も欠かせません。一軒では手が足りないので、餅つきは人手を貸し借りする機会にもなっていました。
町では事情が少し違いました。長屋に住む江戸の町人などは、大きな道具を置く場所がありません。そのため菓子屋に注文する「賃餅」や、道具を担いで町を回り、家の前でついてくれる職人に頼む形があったと伝えられています。つきたての餅を年末に手に入れることが、町の暮らしの中でも大切にされていたことが分かります。

いつつくのがよいか|28日が好まれ、29日と31日が避けられる理由
餅をつく日には、言い伝えがいくつもあります。自宅で餅をついていたころは、12月25日から28日の間につくことが多かったとされます。
| 日付 | 言われていること | 実際の幅 |
|---|---|---|
| 12月28日 | 8が末広がりに通じ、縁起がよい | 多くの土地で好まれる |
| 12月29日 | 9が「苦」に通じ、「苦餅」として避ける | 「福」と読んでつく土地もある |
| 12月30日 | 特に悪いとはいわれないことが多い | 30日ごろにつく土地もある |
| 12月31日 | 「一夜餅」になり、準備が足りないとされる | 避ける土地が多い |
29日を避けるのは語呂によるものです。「二重苦」と読むこともあります。ただ、同じ数字を「ふく」と読み替えて縁起がよい日とする土地もあり、一律の決まりではありません。
31日の餅は「一夜餅」と呼ばれます。神様を迎える前日の慌ただしい準備は失礼になる、葬儀の準備が一夜で行われることを連想させる、といった説明がされています。門松としめ飾りを31日に飾る「一夜飾り」を避けるのと同じ考え方です。
こうした言い伝えは、地域の資料を見ても一様ではありません。大阪府のある市の資料では30日ごろにつくことが多かったと記され、神奈川県の資料では12月25日から30日ごろの例が挙げられています。これからつく日を決めるなら、まず家や地域に伝わる習慣を尊重し、特になければ28日、都合が合わなければ30日と考えるのが無理のない順番です。行事の日程は人が集まれる日で決まるのが現実で、年末の週末に開かれる餅つき会も珍しくありません。
蒸してつくと餅になるしくみ
手順の説明に入る前に、もち米の中で何が起きているかを見ておきます。ここを知っておくと、それぞれの工程の理由が分かります。
もち米とふだんの米の違い
米のでんぷんには、鎖のように長くまっすぐなアミロースと、枝分かれした形のアミロペクチンの二種類があります。うるち米のでんぷんには、アミロースが2割前後含まれています。もち米のでんぷんは、ほとんどがアミロペクチンです。枝がからみ合うため、加熱すると強い粘りが出ます。
蒸す、つく、固くなる
生の米のでんぷんは、水を含ませて加熱すると粒がふくらみ、やわらかくなります。これが糊化です。先に長く浸水させるのは、米の中心まで水を行き渡らせ、芯まで糊化させるためです。
蒸し上がった米は、まだ一粒ずつ形を保っています。杵で強い力を加えると、粒が壊れ、中のでんぷんが外に出てからみ合います。同時に細かな空気が入るので、なめらかで、のびのある餅になります。よくつくほど粒が残らず、口当たりがよくなります。
つきたての餅がやわらかく、時間がたつと固くなるのは、でんぷんの分子が元の整った状態に戻ろうとするためです。これを老化といいます。ご飯が冷めるとぼそぼそするのも同じ現象です。焼いたり煮たりしてもう一度加熱すると、やわらかさが戻ります。
臼と杵の種類と、道具の準備
餅つきの道具は、借りて使うことも多いものです。種類ごとの扱いの違いを知っておくと、当日に慌てません。
臼と杵の種類
臼は大きく、木をくり抜いた木臼と、石を削った石臼に分かれます。木臼は杵の当たりがやわらかく、音もやさしい反面、乾くと割れやすい道具です。石臼は重くて割れにくいものの、一度冷えると温まりにくく、餅の温度を奪いやすい性質があります。
杵にも二つの形があります。現在の餅つきでよく見る、柄が横に付いた金づちのような形は横杵です。一方、月でうさぎが持っているような一本の棒の形は竪杵といいます。竪杵は上から突くように使い、昔は複数人で交互に突く形もありました。
使う前の手入れ
木臼は、使う前日から水を張っておくのが基本です。木に水を吸わせて割れを防ぎ、木の繊維のすき間に残った汚れもゆるみます。当日は水を捨ててたわしでよく洗い、熱湯をかけて清めます。
つく直前には、臼と杵に湯を張ったり、かけたりして温めます。冷たい臼に熱い米を入れると、接したところからすぐ冷めて、餅が固まってしまいます。湯は使う直前に捨てて、清潔なふきんで水気を取ります。

蒸し器には、蒸籠のほか、大きな鍋に合う蒸し器も使えます。熱源はガスコンロやカセットコンロの場合が多いと思います。屋外や集会所で火を扱うときは、燃えやすいものから離し、風を避けて、火のそばに人を一人置きます。カセットコンロに大きすぎる鍋をのせると、熱がこもってボンベが過熱し、危険です。のせられる鍋の大きさは機器の説明書で確認します。大きな鍋を使うなら、それに合った熱源を選び、扱いに慣れた人に任せます。









