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歴史・文化

お雑煮の地域差|丸餅と角餅の境目、すまし・白味噌・小豆の違いと全国の雑煮

お雑煮が土地ごとに違う理由を、餅の形、焼くか煮るか、汁の味、具の順に整理します。丸餅と角餅の境目と例外、白味噌やあん餅、小豆、くるみだれなど各地の雑煮を地方別に紹介し、関東風と白味噌仕立ての作り方、夫婦で家の味が違うときの考え方もまとめます。

黒い漆の椀に入った雑煮と祝い箸、松の小枝

正月に友人や結婚相手の家で雑煮を出されて、「うちのとまったく違う」と驚いた経験のある人は少なくありません。餅が丸いのか四角いのか、汁が透き通っているのか白いのか。香川では餡の入った餅が白味噌の汁に入り、鳥取では小豆の甘い汁になります。同じ名前の料理なのに、これほど形が違う料理は日本でもそう多くありません。

この記事では、雑煮の違いを「餅の形」「餅の火の通し方」「汁の味」「具」の四つに分けて整理します。起こりと広がり方を確かめたうえで、全国の例を地方ごとに見ていき、後半では関東風のすまし雑煮と白味噌雑煮の作り方、家の味が二つあるときの考え方まで順に説明します。

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雑煮はどのように生まれた料理か

雑煮という名前は、いろいろなものを混ぜて煮ることに由来するといわれます。今は正月の料理として知られていますが、はじめから正月だけのものだったわけではありません。

宴席の料理から正月の料理へ

記録に残る古い雑煮は、室町時代の料理書に見られるとされます。1497年の『山内料理書』が古い例として紹介されることが多く、当時は武家や公家が客をもてなすときの料理でした。あわびやなまこのような縁起のよい食材が使われ、酒の席で最初に出して胃を落ち着かせる役割もあったと説明されます。

もう一つよく語られるのが、年神様との関わりです。年末に神様に供えた餅や米、野菜、魚を、年が明けてから下げて一つの鍋で煮て食べた、という説明です。神様に供えたものを人が分けていただくことを直会(なおらい)といい、柳田國男も雑煮をこうした供え物と結びつけて考えていたと紹介されています。

宴席の料理という説と、供え物を煮たものという説は、どちらかが正しいと決まった話ではありません。宴席で食べられていた料理と、正月に供え物をいただく習慣が重なって、今の形に近づいたと考えると無理がありません。

江戸時代に庶民へ広がる

雑煮が庶民の正月料理として広まったのは江戸時代とされます。各地に広がるときに、その土地で手に入る魚や野菜、味噌や醤油の習慣が入り込みました。

ここが地域差の出発点です。おせち料理が重箱に詰める保存食として形が比較的そろっていったのに対し、雑煮は家の台所で元日の朝に温めて作る汁ものです。買ってくるものではなく、毎年同じ家で、同じ手順で作られてきました。そのため土地の味が残り、さらに家ごとの違いまで加わりました。おせちの成り立ちや重箱の役割はおせち料理の意味と詰め方で詳しく説明しています。

雑煮が各地に広がるまで(1. 室町時代ごろ、2. 正月の習慣、3. 江戸時代、4. 土地の味)
説には幅があり、大まかな流れです。

丸餅と角餅の境目はどこにあるか

雑煮の違いでまず話題になるのが餅の形です。

大まかな境目は関ヶ原付近

一般には、岐阜県の関ヶ原付近を境に、東が角餅、西が丸餅といわれます。日本の東西の文化の境目としてよく挙がる地域で、農林水産省の広報誌の特集「地域で違う餅の形」でも餅の形の違いが取り上げられています。

角餅が東に広まった理由としては、人口の多い江戸で、大きくのした餅を切り分けるほうが手早く大量に用意できたからだ、という説明がよくされます。丸餅のほうは、もともと餅を手で丸めて作ること、丸い形に円満の意味を重ねること、鏡餅の形につながることなどが挙げられます。関ヶ原の合戦と結びつけた逸話も語られますが、はっきりした裏付けがあるとは言えません。

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東西に割り切れない例外

実際の分布はもう少し入り組んでいます。全国規模で行われたアンケート調査では、東日本は角餅、西日本は丸餅という定説を踏まえながら、北陸や秋田・山形の内陸部に丸餅が多いこと、三重県の南部や鹿児島県などに角餅が見られることが指摘されています。

この分布を見ると、東西だけでなく、日本海側と太平洋側の違いも関わっていそうだと分かります。日本海の海運で京都・大阪方面の文化が北へ運ばれた、という見方もありますが、一つの理由で全部を説明するのは難しいところです。

境目付近の県では、同じ県の中で両方の形が使われる土地もあります。また、人の引っ越しが増えた今は、親の出身地の形を受け継いでいる家庭も多く、住所だけで餅の形は決まりません。「関ヶ原より東だから角餅のはず」と考えるより、「その家の親が育った土地はどこか」と聞くほうが、理由に近づけることがよくあります。

焼くか煮るかで汁の味が変わる

餅の火の通し方も、地域差のある部分です。大まかには東が焼き餅、西が煮餅といわれますが、これも絶対ではなく、丸餅を焼く土地も、角餅を煮る土地もあります。

網で焼く角餅と鍋で煮る丸餅
焼くか煮るかで食感と汁の味が変わる
餅の火の通し方の違い(焼いて入れると煮て入れるの比較)
好みと汁の種類で選べます。

焼くと表面に薄い殻のような層ができ、煮ても溶け出しにくくなります。すまし汁を澄んだまま保ちたい関東風では、この点が都合のよい理由の一つです。香ばしさが加わるので、昆布とかつお節のだしにも合います。

煮る場合は、全体がやわらかくなって汁となじみます。白味噌の汁と合わせると、餅から出たわずかなとろみで、汁と餅の境目がなくなるような食感になります。餅を入れた鍋の汁が濁るのを避けたいときは、別の鍋の湯でやわらかくしてからお椀に移します。切り餅は角から溶けやすいので、湯は静かに沸く程度に保ちます。

焼いた餅も煮た餅も、そのままお椀に入れると底にくっつくことがあります。これを嫌って、青菜を少し敷いてから餅をのせる家もあります。見た目が整うだけでなく、食べるときに箸で持ち上げやすくなります。

家庭の道具での焼き方

餅を焼く道具によって、仕上がりは少し変わります。魚焼きグリルは火が強く、短時間で香ばしくなりますが、焦げやすいので途中で様子を見ます。オーブントースターは手軽で、アルミホイルを敷くと網にくっつきません。フライパンで焼く場合は、油をひかずに弱めの中火でふたをして、両面に焼き色がつくまで焼きます。煙が出にくいので、早朝の台所に向いています。

焼いた餅は時間が経つとかたくなるので、汁が仕上がってから焼き始めます。人数が多いときは、先に半分ほど焼いておき、最後に温め直すと全員に同時に出せます。

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